エモリバイバル入門の手引き
先日、出前寿司RecordsからCap’n Jazzについての記事が公開されて、非常に嬉しかった。
というのは、自分が元々エモが大好きだというのもあるし、自分も昔、Cap'n Jazzからの派生バンド、Joan of Arcについての記事を出前寿司Recordsで書いたことがあったからだ。
delivery-sushi-records.hatenablog.com
delivery-sushi-records.hatenablog.com
他にも、良質なインディオルタナを鳴らしてる女性アーティストについて書いたこともあった。
delivery-sushi-records.hatenablog.com
そんなわけで、どうしても新しく、エモに関する記事を書いてみたくなったので、今回もお願いして寄稿をさせてもらいます。
(注意1)
今回の記事は「基礎中の基礎中の基礎」について書きたいと思うので、かなり内容は薄いです。
(注意2)
この記事は、まず結論から書きます。時間がない人は結論だけ読んでください。
目次
①結論
はっきり言います。
こんな記事は今すぐ閉じて、名古屋のstiffslackに行ってください。
stiffslack、通販もありますので。とはいえ現在は移転+ライブハウス化の作業中で稼働してないですが。(お店の再開は3/27から)
これを書いてる自分は愛知県民ですが、今から書くものは、stiffslackに足を運んで知ったものが大多数です。
「世界で一番、toeの音源が売れる店」として、toe自らが認める、エモ/ポストロックのメッカ、それが名古屋のstiffslack。そこには古今東西、新旧問わず、エモのすべてがあります。
この記事を読むより、実際にお店に行って、何がいいのか聞いて、確かめるのが一番早いです。
東京だったら、新代田のLike A Fool Records、大阪だったら南堀江のFlake Records、とかがお店のタイプ的には近いと思います。(こちらのお店も通販あり)
他には渋谷のNERDS、八王子のToosmell Records、奈良のThroat Records(LOSTAGEの五味さんのお店)、高松のImplse Records、等々があるかと思いますが、それぞれ持ち味が違うと思いますので、実際に足を運んでください。
②二大バンド
二大バンドなんてエモリバイバルにはいません。勝手に僕が決めました。
とはいえ、実力、人気、入りやすさといった点から、二つのバンドがド定番なんじゃないかということで、選びました。
・Into It, Over it
なによりもまずはこのバンドなんじゃないだろうか。歌心もあり、ギターもうまく、日本が大好きで、ソロでも来日するようなバンド。
エモというよりはインディロック/オルタナの系譜にあると思うけど、このバンドがもつ哀愁は近年のエモリバイバルバンドの一つの手本というか指標だと思う。
まずは『Proper』から。
・ttng(This Town Needs Guns)
エモリバイバルの一つの流派というか、マスロックのように美しい単音を紡ぎながら、というタイプの音楽がエモリバイバルのスタンダードだと思う。
で、ttngはその流派を作り出したバンドの一つ。現行で活躍してるイギリスのバンド。もともとはThis Town Needs Guns のバンド名で活動してたけど、いろいろあって今のバンド名ttngに。
アルバム『Animals』はエモリバイバルを語るうえではマスト。名盤というより、「ザ・スタンダード」。
③今が旬なエモリバイバルバンド
2020年現在で旬なエモリバイバルを3つ紹介。新しいもの、トレンドをとにかく取り入れたい人はここから入門でも全然問題ないかと。
・Pinegrove
今年の一月に新作『Marigold』をリリース。紛れもなく彼らの最高傑作と言える。というか、今年のエモの最高傑作という観点でいうと、早くも最有力かと。
フォーキーな感じがして、歌モノとして楽しみたい人にはうってつけ。特にデスキャブなんかが好きな人に。
・Ratboys
こちらもつい先日に新作『Printer's Devil』をリリース。これも彼らの最高傑作でしょう。心地よく歪んだギターが響く、メロメロになるようなギターポップ。ティーンエイジファンクラブなんかが好きな人向け。ちなみに、来日ツアーで名古屋に来てくれた時に見たことあるけど、結構演奏してる姿は激しい。特にギターのほうは、ザックワイルドみたいに長髪を振り乱す。かっこいい。再来日を熱望してる。
・Dogleg
これは、かなりエモリバイバルをよく聞く人の中で今話題のバンド。新譜『Melee』をつい先日リリース。硬派な感じがする。エモリバイバルの中で、最近はなかなか硬派なエモをならすバンドがいないんだけれど、これはそういうバンド。ポップさなんかいらない、マスロックみたいなわちゃわちゃしたいのはイヤ、そんな人に。
④次に聞くといいエモリバイバルバンド
とりあえず入門向けなものはわかったけど、どう広げていけばいいかというところで、先にあげた5つのバンドについて、次の行き先を書いていきます。
・Into it, Over it から広げていきたい人
ウィーザーみたいな泣き感があるバンドということで、まずAnnabelを勧めます。アルバムは3枚しかないので、どれから入っても大丈夫。
ちょっとだけ毛色は違うだろうけど、Pet Symmetryなんかもいいかも。今年の来日が決まってて、もうすぐなんだけど、コロナウイルスが猛威を振るう現在がどうなるか本当に不安。「これこれ!」って言いたくなるような、エモらしいエモ。90年代とかのバンドが好きな往年のエモファンでも楽しめるサウンド。
・ttngから広げていきたい人
イギリスにttngがいるなら、アメリカで対をなす存在として、Tiny Moving Partsがいます。2月に全エモファン待望の初来日ツアーがあり、各地で大盛況。自分も名古屋編に行って、優勝してきました。100点満点で言うと、8兆点つけれるくらいの出来。とりあえず、アルバムは昨年リリースの『Breathe』もいいけど、『Swell』からがおすすめ。
あと、ttngと同じ系譜にあるバンドとして日本人として外せないのは、中国のバンド、Chinese Football。アジアで最高のエモリバイバルバンドでいいんじゃないだろうか。音楽はもちろん素晴らしいが、とにかくすさまじい数のライブをこなすし、去年は日本ツアーをして、新譜『Continue?』も出した。もちろん名古屋に来た時に見に行った。あのアメリカンフットボールともライブをしてる。日本人というか、アジア人として彼らを応援せざるを得ない。
昨年奇跡の再結成と来日ツアーをした、Snowingも必聴。先日Cap'n Jazzについての記事が出前寿司Recordsで書かれたけれど、まさにCap'n Jazzを感じるような、ショートチューンを立て続けに放ちながら蒼く駆け抜ける、マスでエモいロック。アルバムはわずか一枚しか出さなかったけど、エモリバイバルのシーンにとてつもない影響を与えたレジェンド。そのアルバム、『I Could Do Whatever I Wanted If I Wanted』自体は入手が難しいかもしれないけど、アルバムを含めた全音源集『Everything』なら、がんばったら見つけられるし、最初に挙げたそれぞれのお店のどこかで買えると思う。
・今が旬なエモバンドから広げていきたい人
Pinegroveから広げるなら、Foxingの『Nearer My God』を絶対聞いてほしい。外国のとあるサイトが選んだ、2010年代のエモアルバムランキングにて堂々の第二位。にもかかわらず、知名度が低すぎる。Death Cab For Cutieの元メンバー、クリスがこのアルバムに携わってて、デスキャブの繊細さにミューズの静と動のコントラストとクイーンの煌びやかなメロが乗っかったような大・大・大傑作。この十年で最も過小評価されてるオルタナのアルバム。エモとか関係なく、もっとたくさんの人に見つかってもいいはず。
Ratboysから広げるなら、Tigers Jawとか、Slingshot Dakotaがいいと思う。特にSlingshot Dakota は夏に来日が決まったので、まさに今聞くにはちょうどいいと思う。Tigers Jawもカッコいいバンドで、来日で大阪のコンパスに来てくれた時は見に行った。みんな飛び跳ねてた。
Doglegから広げるなら、イチオシはHolding Patterns。圧倒的に硬派。誰にも媚びない、キレキレのナイフみたいな切れ味。昨年、stiffslackから1stアルバム『Endless』をリリースしたばかりだから、これも簡単に追える。エモ好きに伝わるように言うと、JAWBOXが一番近い感じ。
⑤エモリバイバルをより深く知るためのバンド
エモリバイバルの深すぎる世界を知るための入り口となる音楽を挙げていきます。
・The world is a beautiful place & I am no longer afraid to die
これより長い文字数のバンドがいたら教えてください。最初にエモリバイバルの二大バンドとしてInto it, Over itとttngを紹介したけど、その二つのバンドと同じくらい、エモリバイバルという音楽を代表するバンド。現行で活動中。
音響系ポストロック的なアプローチもできる、大所帯バンド。現在までに3枚のアルバムを出してる。今年になって、過去の曲をコンパイルしたアルバムもリリースしてるので、割と旬な感じもある。深く知るためには絶対押さえてほしいバンド。
・Empire! Empire! (I was a lonley estate)
惜しくも既に活動をやめてしまっているが、エモリバイバルにおいて確かな爪痕を残したバンド。エモのレジェンド、ミネラルを彷彿とさせるような、美メロの応酬を楽しませてくれる素晴らしいバンド。ボーカルのキースはまた音楽活動を開始みたいで、もしかしたらキースの来日はあるかもしれない。
このバンドも2枚のアルバムと、stiffslackからリリースした未発表音源集があるだけなので、押さえやすい。けれども、このバンドは確実のエモリバイバルの中心にいたと思う。
入門ということで今でも活動してるバンドを優先的に挙げてるけど、多分一番エモリバイバル入門には向いてるバンド。
・You Blew it!
これも、活動を休止してしまっているバンド。ただ、アメリカンフットボールが3rdアルバムを出した時に、活動休止中にも拘わらず一緒にツアーをしたから、まだ観れる可能性があると信じたい。アルバムは3枚だから、これも押さえやすい。
ウィーザーみたいな泣きの効いたグッドメロディが楽しめるバンドだと個人的には思ってる。実際、ウィーザーの曲をカバーしたEPを出すぐらいだし。
真っ向から切ないロックを聞きたい人に手に取ってほしい。
・Algernon Cadwallader
活動してないバンドがまた出てきてしまって申し訳ないが、エモリバイバルを話す上でこのバンドも絶対に絶対に欠かせない。ttng、snowingと共に、今のエモリバイバルの流行りを作り出したバンド。むしろ、このバンドこそがエモリバイバルの始まりと言ってもいいかもしれない。
アルバムは2枚だけで、長らく廃盤になっていたが、去年、未発表音源集も含めてようやく再発されたので、手に入れやすくなったと思う。エモリバイバルを原点から押さえたいのであれば、ここからがいいと思う。
⑥個人的な推し
ここからは完全に自分の趣味。今まで挙げてるバンドも自分の趣味丸出しだけど。
・Magnet School
Shiner、the life and times を彷彿とさせるようなバンド。適度な轟音を混ぜつつ、ドラマチックなコントラストが楽しめる。名付けるなら「スペース・エモ」。シューゲイザー的なエモといえば、NothingやCloakroomとかを考える人がいると思うけど、そういう人にも十分受け入れられるであろう音楽。
・Haal
これもMagnet Schoolと同じタイプ。Magnet Schoolは2018年に来日があったけど、彼らも来てほしい。Magnet Scoolよりはダークで、ハードコアやグランジの影が濃い印象がある。
・Beach Slang
エモリバイバルではないと思うけど。イチオシ。最近ドハマりしてしまった。名門Polyvinylからアルバムを2枚だして、今年はBridge Nine Recordsから新作『The Deadbeat Bang of Heartbreak City』を発表。今が旬。
エモ・ガレージ・シューゲイザー・グラムロック、いろんなものが混ざった、煌びやかで最高に爽やかなロックだ。
・Pool Kids
女性ボーカルでマスロック感のあるエモ。ただ、他のその手のバンドよりも、静と動のコントラストがはっきりしてると思う。こちらもイチオシ。今回挙げた自分の推しバンドの中では一番、エモリバイバルらしいエモバンド。
⑦まとめ
いかがだったでしょうか。2010年代が終わって早くも3か月が経とうとしてる。エモリバイバルはとどまることなく10年を駆け抜けた。これからの10年を楽しむためにも、この記事が参考になることを願います。
最後に、フガジのイアンマッケイのいつか言ったというこの言葉を。
『エモーシャルじゃない音楽なんてないんだ』
エモいと感じたもの、それが貴方のエモだ。
(文:ジュン)