Joan of Arc 最初の2枚について(前編)
ポストロック/エモが好きだ。そうなると避けて通れないのはキンセラ・ファミリーだろう。というわけで、今回はキンセラファミリーの代表的なバンド、
Joan of Arc
彼らの初期について簡単な記事を書くことにしよう。
前編と後編に分けて記事で取り扱うのは彼らの1stアルバム、「A Portable Model Of...」と2ndアルバムの「How Memory Works」である。
前編では1stアルバム「A Portable Model Of...」について語ろう。
はっきり言って、このアルバムは滅茶苦茶だ。
散らかりすぎていて全くつかみどころがない。それでいて聞きやすい曲、音も少ない。小曲を挟みすぎている。どんなにひいき目に点数をつけても100点満点中60点。とりあえず収録曲の一部を聞いてもらおう。
#2.The Hands
変な電子音が混ざりつつ優しいバンドサウンドなのに、ボーカルのテンションが高すぎる(笑)。
#4.Let's Wrestle
オーソドックスなインディーロックって感じの曲。
#6.Post Coitus Rock
やっぱりボーカルのテンションがおかしい。
Joan of Arc - Post Coitus Rock
#7.Count To A Thousand
このアルバム中最長の曲で、8分あるインスト曲。ドローンなのか何なのかわからない音とか電子音とかの後ろからギターの音がやってくる。同じフレーズばかり弾きながら別のギターの音とか電子音とか色々鳴ってる。一番ポストロックをしてる曲。
Joan Of Arc - Count To A Thousand
#8.How Wheeling Feels
静謐なヘンテコ音楽を聴かされた後のロックナンバー(電話の呼び出し音みたいな音がずっと後ろで鳴ってるけど)。かと思ったら激しいのは2分くらいで、あとは静かなアウトロがずっと続くヘンテコな曲。
How Wheeling Feels - Joan of Arc
#13.(I Love A Woman) Who Loves Me
このアルバムのラストナンバー。重なり合うギターの音が優しい。最後にテレビが壊れたみたいに「ぶいーん」って切れておしまい。
Joan of Arc - (I Love a Woman) Who Loves Me
これらの音源は聞きやすい部類の曲なので「そんなに難しいか?」と思うかもしれない。けれど流れるように優しい曲から全然違う曲が始まったり、間にOKコンピューターの「fitter happier」みたいな曲があったり、謎の女の絶叫があったり。カオスそのもの。
ただ、伝説のエモバンドCap'n Jazzから、これだけカオスで実験的な音楽ができたことは、のちの彼らの傑作(3rdアルバム「Live in Chicago 1999」、4thアルバム「The Gap」)ができる過程として見ると深い意味がある。
このアルバムのリリースは1997年で、前年の1996年にはトータスの2ndアルバム、ガスターデルソル「アップグレード&アフターライフ」といった後にポストロックを代表する超名盤になる作品がリリースされているが、まだまだポストロックは過渡期という頃だ。だから彼らもいろいろ探りながら作っていたんだと思う。先に述べた彼らの傑作3rd、4thに比べると格段にこのアルバムは遊んでいてヘンテコだ。
毎年のように頻繁に、いろんなアルバムを出す彼らのアクティブで自由な感じが最初からあったことを十分に証明してくれる一枚だと思う。ただ、全く聞きやすくないので、聞くのであれば覚悟はいる。
そして、この聞くに堪えないほどのヘンテコさを大きく進化させたアルバムが2ndアルバムの「How Memory Works」である。それは後編で語ることにする。
最後にこの1stアルバムの採点。
2.0/5.0
非常に辛くつけた。これを理解するのはまだ遠く先になりそうだ。
(文:ジュン)