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複製品たち(17歳とベルリンの壁 One Man Live)

 2020年 8月29日 渋谷 TSUTAYA O-NEST

 

 17歳とベルリンの壁、初のワンマンライブ開催。その模様をレポートします。

 

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 コロナ禍の影響もあり、距離を保って椅子が配置され、各々が席について見るライブだった。逆にドキュメント映画を見るような気持ちになれて、大きな期待を持った。

 開始時間の18:30を少し過ぎた頃、17歳とベルリンの壁は現れた。

 

1. 楽園はない

 やはりというか、最新作『Abstract』の1曲目からライブがスタート。『Abstract』はそれまでの彼らの作品と比べて、特に音が優しい印象があり、その雰囲気を守ったままの美しい開幕であった。

 

2. 千日

3. 話す卵

 ワンマンライブということで、過去の曲もたくさん聞けるのではと楽しみにしていたが、さっそく1st EP『Aspect』から2曲続けて演奏。特に「話す卵」は1stの個人的なフェイバリットなので非常に嬉しかった。

 

4. 街の扉

 最新作のキラーチューンを早くも演奏。4分もない曲なのに「話す卵」との落差からかとても長い曲に感じた。もちろん良い意味だ。前半の4曲で、轟音は抑えめでしっかりと空間に響かせるようなライブ構成が見えた気がした。

 

5. 反響室

6. 表明式

7. 窓際

8. 繁華街へ

 「街の扉」から続けて4曲を演奏。まるでメドレーのように、耳に甘い音が降り注いだ。4曲目から8曲目までがこのライブのハイライトの1つだった気がする。最新作『Abstract』については、"それまでとはまた違う方向性のアルバムを一つ作った"と彼らは話していたが、芯にある"音の美"みたいなものはいつの時もブレがないことを見せつけられた。

 

9. 終日

10. 地上の花

 ここにきて「終日」と「地上の花」。美しかった。それまでの曲の流れを汲んで、一つ一つの音がクリアに聞こえるように演奏していると思った。『Abstract』を出してすぐの今だからこその演奏。アップデートされたような感じ。

 

11. 十年

12. 誰かがいた海

 『Abstract』から2曲。このワンマンライブ最高の瞬間は個人的にはこの2曲。上京してきた想い、故郷の海、そういったものを語る唄として演奏された。最新作の中でも特に美しい曲の2つだが、それまでの演奏曲から2段も3段も音量が上がったように感じる、力強い演奏だった。

 初期の曲は今のように繊細に、最新の曲は昔のように轟音で、そういったメッセージがあったのではないかと自分は思った(ずっと素晴らしいシューゲイザーを鳴らしてるバンドではあるのだけど)。

 

 ここで、15分の休憩。初のワンマンライブは2部構成だった。

 

 そして休憩後。

 

 ステージには全員白いTシャツに着替えた彼らの姿があった。思い出せば、第一部の服装は全員黒だった。登場の瞬間に、ブラックサイドとホワイトサイドだ・・・と悟った。

 

13. 展望

14. パラグライド

 第二部の開幕にこれ以上ないほどふさわしい2曲でスタート。個人的に『Abstract』は前作『Object』があったからこそできたのではないかと思っていて、自分の中では繋がっている。実際に並べて演奏されると、流れの美しさが倍増した気がした。

 

15. 27時

 最高の第二部開幕から、最高の気持ちで聞くことができた。それまでのクールな演奏を吹き飛ばす力強い音。体を揺らし続けた。

 

16. 平面体

17. スパイラル

18. ライラック

19. 凍結地

20. 光景

 第一部では「街の扉」(4曲目)から「繁華街へ」(8曲目)がメドレーのように感じたが、第二部のこの「平面体」(16曲目)から「光景」(20曲目)も、対を成すメドレーだったと思う。

 

 MCで以下のような説明があった。

今回のセットリストは時間を意識したもので、

第一部が0時から12時

第二部が12時から24時

 

 そう考えると、4~8の曲と、16~20の曲は構成として美しい。

 ・夜がすこしずつ明けて朝方になり、そして始まっていく一日(4~8)

 ・昼がすこしずつ暮れて夕方になり、そして終わっていく一日(16~20)

 そういう、『光』の変化を第一部と第二部にメドレーのように盛り込んだセットリストだったのではないかと思う。第一部の4曲目から、第二部の4曲目から、という構成もすごく考えられている。贅沢なワンマンライブだと改めて感じられた。

 

21. プリズム

22. ハッピーエンド

 第一部の「終日」と「地上の花」と同様、メドレーの後に大名曲を演奏。プリズムはすさまじかった。フラッシュの点滅をこれでもかというほど使っていた。夜の一番楽しい時間を鮮明に表していた。

 

23. 6月

 ここへきて更に音量が上がったように感じた。これも1stの中でも大好きな曲で、最後の方のすごく盛り上がったタイミングで演奏してくれて感謝しかない。

 

 そして最後の曲。

いままでの曲をすべてやりました。アンコールはありません。

というMCがあったが、構成から演出から何もかもが美しかった。アンコールがないのは確かに残念かもしれないけれど、美しい終わりを迎えるにふさわしかった。

 

 最後の曲は分かっていた。あとはあの曲だけだ、と思っていた。

 

24. 複製品たち

 『Object』の中の個人的フェイバリットで〆。一日というものは繰り返されていく複製品かもしれないけど、こうやって毎日が続いていけばいいのに。そう思った。

 

 そうして、17歳とベルリンの壁の初ワンマンは終った。まさに映画だった。

 

 貴重な現場にいることができたと、見る側として誇らしい。

 

 非常に考えつくされたセットリストを、最後にカードとして来場者に配られた。宝物が増えた。

 

 感謝しかない。

 

 

<セットリスト> 

第一部(0時から12時)
1.楽園はない
2. 千日
3. 話す卵
4. 街の扉
5. 反響室
6. 表明式
7. 窓際
8. 繁華街へ
9. 終日
10. 地上の花
11. 十年
12. 誰かがいた海 

第二部(12時から24時)
13. 展望
14. パラグライド
15. 27時
16. 平面体
17. スパイラル
18. ライラック
19. 凍結地
20. 光景
21. プリズム
22. ハッピーエンド
23. 六月
24. 複製品たち

 

 

 (文:ジュン)