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ポストロックは終らない。(And So I Watch You From Afar ライブ感想)

 

 アイルランドの轟音&マスロック系のポストロックバンド、And So I Watch You From Afar(そして、だから俺は遠くから君を見るんだ)の日本ツアーがあった。その名古屋公演に自分は行ってきた。

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 ツアーは日本のポストロックバンド、Mouse On The Keysと回っていて、名古屋ではStiffslackの店長がやっているバンドの一つであるKmkmsがもう一つのライブアクトとして、彼らとともにライブをしてくれた。もちろん彼らも良かったのであるが、なんといっても主役であり、圧倒的なライブをしてくれた彼らについてのレポートをしたいと思う。(ちなみに、Mouse On The Keys はサポートギタリストに元Envyの富田を加えての4人体制で素晴らしい演奏をしてくれた

 

 そして何より、このバンドをこれを機に聞いてみようと思う人が少しでも増えることを願う。

 

 

 そもそも、今回のツアーは彼らが去年にリリースしたアルバム「The Endless Shimmering」のリリースツアーである。

 

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 このかわいいほのぼのとしたジャケットに対して、サウンドは凶悪で優美だ。

 

 まるで、轟音ポストロックバンドのモグワイのもつダイナミクス、マスロックバンドのドンキャバレロのもつ変則さと単音の美しさ、二つが融合したような音楽になっている。

 

 では彼らが名古屋でのライブでやってくれた曲を振り返っていこうと思う。

 

 

#1 「Dying Giants」


And So I Watch You From Afar "Dying Giants" (Official Audio)

 今回のツアーアルバムから。今作で自分が特に好きな曲からスタートしてくれて、テンションが最初から最高になった。静かなギターリフの掛け合いから始まってバーストした瞬間から全身を揺らした。高音でギターをかき鳴らすところではとてつもない爆音で耳が壊れるかと思った。でも不思議だ。脳が拒否してはいけないと告げるのを感じた。最前列だった。音のすべてが暴風として耳に、体にかかってくるのを感じた。そうやって彼らのライブが始まった。

 

 

#2「Gang」

#3「Like A Mouse」

 続けて2曲は彼らの過去のアルバムから。とにかく速い。激しい。一言も話さずにただ爆音で変則ロックをぶつけてくる。だが、曲の合間にある泣きの聞いた轟音がこれまた堪らなかった。この時点でどう考えても自分だけが他の人より2段階くらい高いテンションだった。ずっと体をゆらして、「Like A Mouse」では終始飛び跳ねていた。


ASIWYFA - Gang (starting never stopping)


Like A Mouse - And So I Watch You From Afar

 

 

#4「Terrors Of Pleasure」


And So I Watch You From Afar "Terrors of Pleasure" (Official Audio)

 ここでまたツアーアルバムの曲。これもすごく作品中で好きな曲。イントロが始まった瞬間に叫んでしまった。自分だけ。ブレイクが何度もある曲で、ライブで観ると彼らの音と演奏する姿の一体感の迫力が半端じゃなかった。音も激しいけど、演奏中の彼らもかなりテンションが高く、ハードコア出身のポストロックバンド、って感じがしてよかった。

 

 

#5「Mullaly」


And So I Watch You From Afar - Mullally - The Live Room

 簡単なMCを挟んでから。これもツアーアルバムからの曲。これもお気に入りで、やってほしかった曲(やたらと「好きな曲」って表現ばかりだけど、実際にそうなので申し訳ない)。切なくて高速のツインギターがしっかり聞けた後のバースト連発からのまた切ないツインリードに戻っていく展開がたまらない。

 

 

#6「The Endless Shimmering」

 ツアーアルバムのタイトルになった曲。ここまでハイテンションでぶっ飛ばしてきたところでのこれは染みた(これの時点で既に頭を振りすぎて首が痛くなってた)。ものすごく狂暴なアルバムを作っておいて、これをタイトル曲にするっていうところが面白い。きれいで聞きやすいメロが最後はやっぱり激しい演奏になるんだけど。疲れすぎててついていけなかった・・・。

 

 

#7「WASPS」


And So I Watch You From Afar - "Wasps" (Official)

 過去のアルバムから。いきなりの轟音と美しいコーラス。「もう勘弁して・・・」って体が悲鳴をあげていたにも関わらず、自分も一緒に思い切りハモったし、なにより音に自分の全部がもっていかれる感じがこの曲で一番感じられた。自分は全然シューゲイザーが好きじゃない(そのくせ轟音ポストロックは好き)が、「ああ。シューゲイザーが好きな人ってこういう感じがたまらなくて好きで、ライブに行くんだな」と、ジャンルは全然違うんだけど思った。とにかく素晴らしかった。

 

 

#8「A Slow Unfolding Of Wings」


And So I Watch You From Afar "A Slow Unfolding Of Wings" (Official Video)

 ここでツアーアルバムから僕がベストだと思う曲がきた。もうイントロの電子音の時点で叫んでしまった(またしても僕一人だけテンションが高すぎる)。激しさと超絶テクと、中盤の轟音。なにもかもが完璧すぎる。なんどもブレイクして爆音が爆音を呼ぶ。たぶん聞いてるときの自分の顔は「ザ・ベンズ」のジャケットみたいになってたと思う。エロ同人みたいに「んぎもぢいいいい」って、耳が。

 

 

#9「Search Party  Animal」

#10「Set Guitars To Kill」


ASIWYFA - Search:Party:Animal


And So I Watch You From Afar - Set Guitars To Kill

 過去のアルバムから2曲やっておしまい。最後はギターの轟音がずっとループするように放置して去っていった。爆音のリフレインがこんなにも気持ちいいとは思わなかった。

 

 

 

 で、アンコールはもちろんありました。2曲。いずれも過去のアルバムから。

en#1「Run Home」

en#2「Big Thanks Do Remarkable」


And So I Watch You From Afar - "Run Home" (Official)


Big Thinks do Remarkable - And So I Watch You From Afar

 

 en#1の美しいコーラスワークからの2本のギターの激しい絡みで、また一気にテンションが最高まで上げられた。途中のゆったりとしたディレイの効いた美メロパートがとにかくよかった。轟音がかき鳴らされるなかで最初のメロディとコーラスに戻っていく展開に鳥肌が止まらなかった。演奏も一層にかっこよかった。

 en#2はどうやら定番曲らしく(自分はファン歴が浅いのでよく知らない)、イントロで多くの人が歓声をあげた。演奏の途中で何度もメンバーが胸に手をあてて感謝の言葉を言ってくれた。ほんとにきて良かったと心から思える、大団円って感じのラストナンバーだった。

 

 

 

 

 以上がライブの感想である。ポストロックは終らない。このライブがあった日というのは、これまた轟音ポストロックバンド、This Will Destroy You の新譜が発表された日でもあった。愛知のポストロック好きにはとてつもない日だったのではないだろうか。(そちらの新譜の感想も後日記事にしたいと思う)

 

 

 ポストロックは終らない。むしろ今のバンドこそ過去のサウンドをうまく踏んだうえで次のレベルに引き上げているところじゃないかと思わせる。それは彼らやTangled HairやThis Town Needs GunsやThe World Is A Beautiful Placeでも思うことだ。

 

 ポストロックは終らない。

 

 ポストロックは終らない。

 

 ポスt

 

 

(文:ジュン)