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【ディスクレビュー】6thアルバム きのこ帝国-タイム・ラプス

 

きのこ帝国タイムラプスジャケット写真

2018.09.12 6thアルバム タイムラプス

 

01.WHY

 グランジ/ギターロック感のある曲でのスタート。曲としても短く、シンプルないいメロディー。既にこれまでのきのこ帝国とは違う匂いが漂う。

 歌詞を見ればわかるが、表現方法を変えただけで、根底にあるバンドの魅力は何一つ変わっていないのだろう。あーちゃんかっけえ。

 

 

02.&

 かわいい曲。普通のポップスだ。正直これ単体だと「ほう」という気持ちだが、『畦道で』のサビで繰り返さていた"I hate you" を思い出さずにはいられない。

 そこから "I Love You" が足された。足されたというよりは、過去から思っていたことなのかもしれない。言いたいことが言えるようになること・表現できるようになったこの強さがきのこ帝国の進化の1つなのかもしれない。

 ”嘘つきだって罵ったって~抱きしめたいのにそれができない” のところ真理すぎて呼吸ができん。

 

 

03.ラプス

 ド名曲。音楽は実態がないので飲んだり食べたり触れたりすることができない。ということを心から悔やみたくなる曲。いろいろ言いたいことは多々あるが1つだけ言うとしたらコンちゃん腕4本生えてる?

結婚して。

大好きな曲だ。葬式で流す。

"愛せないなら消してしまえと 強がってみたけど 眩しくて"

は人間にも思うし、今作の先行でピンと来なかった自分に刺さりまくりの曲でしたね。

 

 

04.Thanatos

 タナトスギリシア神話に登場する死そのものを神格化した神)を表現したいらしくできた曲。(対になるエロスは性本能・自己保存本能を含む生の本能をさすらしいです)

 この曲も1曲目のようなギターロック系の曲。サビの疾走感と ”ドアを蹴飛ばしてみたいけど" がうまく重なっている。

 

    主観ですが自分はタナトス側だという佐藤千亜妃だが、タナトスを表現というよりは、エロス側になれなかったことを表現するような曲に感じた。

 

 

05.傘

    あーちゃんの装飾がとても光る曲。この人はデザイナーなのかよ。

    音的には前作の『愛のゆくへ』なんかに入っていても違和感のない曲。これまでの曲とライブでの絡み方によって更に化けるような曲ではないのでしょうか。

 

 

06.ヒーローにはなれないけど

 ダントツで過去にない曲。あーちゃんのカッティングもそうだし、佐藤千亜妃の少し子供っぽい歌い方、陽気な感じを出すリズム隊。底抜けに明るい。明るいけど、なんでか寂しさが纏うな。

なるべくなんにも考えなくてすむものを観て、「ははは」って笑って寝たい。音楽もそういうのがいいよな、って思うようになってきて。昔はもう一撃必殺みたいな曲を作ることしか考えてなかったんですけど、一瞬、間にはさまるみたいな、ポケットみたいな曲があってもいいなと思って。

 いい意味で肩の力を抜いてできた曲という感じ。

 

 

07.金木犀の夜 


きのこ帝国-金木犀の夜

 

  先行で聴いた時には「うーん」となりましたが、今ではわりと好きになってきた。

 イントロが美しいしメロもなんやかんや脳内で再生される。そういう曲「作るか~」って作れるマルチさよ。佐藤千亜妃のソロで現れたアダルト感がバンドの音として形を変えたような曲である。

 

 

08.中央線

 超かっこいいじゃん。イントロ一瞬クリーンになるとこのアレンジとか昔っぽい。

    ちっこいライブハウスで聴きたい曲ナンバーワンだ。そしてしげさんのベースがとても好きな曲。楽しさが伝わってくる。『国道スロープ』に生活感を加えたような曲でこのアルバムにはすごく合っている。謎に圧倒的な自信が伝わってくる曲だ。

 

 

09.humming

 なんかしげさんのちょっと間抜けな可愛いボイスが入っている曲。笑

『フェイクワールドワンダーランド』の匂いがする。

 

 

10.LIKE OUR LIFE

 アンビエント感のある曲。超好きだ。僕はあーちゃんファンなのであーちゃん分析をしがちなのですが、過去の作品のなかで美しさランキングは1、2を争うギターだ。あの人はおそらくギターをギターと思っていないところがある。大好きだ。多分ライブだともっと聴こえ方が違う気がするので、是非ライブで聴きたい。あとしげさんのベースがうねうねでいい。

 傘→LIKE OUR LIFE→MOON WALK→畦道で→ミュージシャン→足首 でお願いします。

 

 

11.タイトロープ

 ダウナーな感じの歌い方がかっこいい。本当に歪んだ音に映える声だなと思った。

    言葉の選び方なんかも若干投げやりな感じが垣間見えていて空気の作り方も作品の中で変えられるのは過去の経験がなければ無理なことなんだろうと感じた。

 

 

12.カノン

 無罪モラトリアムか?と思った。

   10年音楽活動をやってきた中での現在の解答が詰まっているような歌詞。でも別にこれが全ての答えではなくて、ここからまた音楽の良さや魅力をどんどんこのバンドは見つけていくような気がする。歌詞は大人びたけど、姿勢はどんどん若返っていくのかなーと。佐藤千亜妃の猫っぽい無邪気な歌い方からなんとなく思った。

 

 

13.夢見る頃をすぎても


きのこ帝国 – 夢みる頃を過ぎても

 最初の「ガガッ」がRadioheadのCreepかと思った。

    ストリングスも入って、王道J-POPといえばそうなんだけど、何故かきのこ帝国にしか鳴らせない音がなっている。生霊というか、ワンフレーズの背景に多くの人間が存在しているような感覚になる。供養というか。このアレンジとメロディーじゃなければ多分重すぎる曲になるんだろうな・・・。評判とかではなく、きのこ帝国というバンドにとって必ず必要な曲なんだろう。東京2.0という感じだな。

 

 

-まとめ-

賛否両論ある作品でしょう。

個人的にはピンと来ない曲もいくつかあり、なんとなく寂しく感じたりもした。でも、変わったのか変わっていないのかよく分からない。

 

表面的に聴けば、よりポップで悪く言えば「ありそう」な曲が多い。

でも、細部に目を凝らすと全員がこれまでの作品に宿してきた音を変わらずに鳴らしているだけだった。

 

新しい取り組みが感じられるかと言えば微妙だ。

しかし、これまで取り組んで来たチャレンジはすべて自分たちのものにしている。

 

私たちがみてきたそれぞれのきのこ帝国の遺伝子はすべて生きている。

決して時の中に閉じ込めずに、その遺伝子を組み換え、新しい生命体を生み出している。遺伝子を受け継いだ生命体(曲)たちは更に数を増やし、それぞれの生命体との関わりの中で表情を変え、1つの国を内側から変化させていくだろう。

 

良いも悪いも振り回し、我々を楽しませてくれる。

そんな表情豊かで、人間臭くて、眩しすぎるバンド。

 

10周年おめでとうございます。一緒に生きていけたらいいな~。

 

 

(文:さこれた)

 

 

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