CAP'N JAZZから辿る90年代EMO
EMOとは何か。
EMOとは生き様だ。と言いたいがそれは答えではないだろう。
EMOとはPUNKという大きなジャンルの派生である。
もっと細かく言えば、80年代後半ワシントンD.Cを中心に広がったUSハードコアが起源となり、90年代にそれらは「EMO」と呼ばれるようになった。
それだけではよくわからないだろう。
今回は90年代EMOを語る上で欠かせないバンドと、そのバンドの解散後メンバーが組んだバンドについて書こうと思う。
彼らの辿った道を辿れば、EMOがわかるかもしれない。
そのバンドとは
CAP'N JAZZ
メンバー:
Tim Kinsella(ティム・キンセラ)※兄
Mike Kinsella(マイク・キンセラ)※弟
Sam Zurick(サム・ズーリック)
Victor Villarreal(ビクター・ビラリール)
Davey von Bohlen(デイヴィー・フォン・ボーレン)
※キンセラ2人は兄弟。
1989年結成。
1995年に解散しているが2010年と2017年にリユニオンしている。
そしておそらくそろそろまた復活するのでは。。?
2007年リユニオン時のライブ映像。かっこいい。
結成当時はまだEMOという言葉もなかったため感覚的にはハードコアに近いかも。
ティム・キンセラの悲壮感強めな絶叫に近い歌い方は後のEMOを生み出したのではないだろうか。
この頃キンセラ兄弟はまだ10代前半・・・末恐ろしい・・・
1stアルバムとEPが一緒になったディスコグラフィー『ANALPHABETAPOLOTHOLOGY』は1枚は持っておきたいアルバム。
caP'n Jazz Analphabetapolothology (full album)
CAP'N JAZZ解散後メンバーは様々なバンドを結成する。
それが後にEMO/Post Rock界に多大な影響を与えることになる。
Joan of Arc(ジョーン・オブ・アーク)
CAP'N JAZZ解散後キンセラ兄弟を中心に結成。なんと今でもメンバーを変えながら精力的に活動している。(弟のマイクキンセラはいつの間にか脱退)
CAP'N JAZZの荒々しさはなくなり、演奏はポップ。
ティム・キンセラのヘロヘロボイスがくせになる。
アコースティック楽器、民族楽器、シンセサイザー、なんでも取り入れながら常に新しい音楽を生み出している。
奇才ティム・キンセラを代表するバンド。近年はさらに実験音楽さが増してきた。
1stの「A Portable Model Of」
Joan of Arc - A Portable Model Of... (Full)
11枚目の「Boo! Human 」がおすすめ
Joan of Arc - If There Was a Time #1 [OFFICAL AUDIO]
Make Believe
ティム・キンセラとCAP'N JAZZのギター、サム・ズーリックを中心に結成。
当初はJoan of ArcのツアーバンドVer.として作られたがツアー終了後にアルバムを制作しMake Believe名義でリリース。
印象としてはJoan of Arcにポストロック、シューゲイズを加えた感じだろうか。
難解さの中にポップ、ユーモアもちゃんと混じっており、そこがキンセラらしさだと思う。
American Football
CAP'N JAZZのドラム、マイク・キンセラがギターボーカルを務める。
EMOを語る上では、なくてはならないバンドだろう。
98年にEP、99年にアルバムを1枚ずつリリースするも解散。
しかしその大きすぎる爪痕は現在まで多くのアーティストに影響を与えた。
1st Albumに収録されたNever Meantはすべての音楽ファンの心をつかむEMOアンセムとなっている。
14年にまさかのリユニオンを果たし現在まで2枚のアルバムと2枚のEPをリリースしている。
ちなみに現在ベースを弾いているネイト・キンセラはキンセラ兄弟の従弟。どうなってるんだこの家系。。
American Football - Never Meant "Live At Webster Hall, NYC, NY"
owen
マイク・キンセラのソロプロジェクト。
American Footballをさらに歌に昇華させ、フォーク/インディーロックファンすらも射程に捕らえている。
儚く静かに語るように歌うowenは演奏もシンプルなアコギ1本などが多いのだが、チューニングはやはり変則的なものが多くさすがキンセラといったところか。
好きなアルバムはたくさんあるのだが1番は『I Do Perceive』。
Owen - Who Found Whose Hair In Whose Bed
正直キンセラ兄弟についてはここでは書き足りないのでまたいつか別の記事でかけたらと思う。
Ghosts And Vodka
サム・ズーリックとビクター・ビラリールが所属するEMO/Math Rockバンド。
1999年~2001年という短い期間にアルバムとしては1枚しかリリースしていないがその人気は絶大で、日本のバンドtoeなども彼らに強く影響を受けている。
唯一のアルバムとEPをまとめたディスコグラフィー『Addicts And Drunks 』は一家に1枚の名盤。
Ghosts And Vodka- Addicts and Drunks (2003- Full Album)
2曲目のイントロは世界で5本の指に入るかっこよさだと思う。
Owls
デイヴィー・フォン・ボーレン以外のCAP'N JAZZのメンバー4人で結成。
2001年に1stアルバムを発売したかと思えば解散。
思えばEMOバンドの短命説はCAP'N JAZZ界隈のせいでは?
そして2012年に奇跡の活動再開。
2014年に2ndアルバム『two』をリリース。10年でティムの歌がかなり上手くなっている。
Joan of Arcにマスロックを織り交ぜたテイスト。
それぞれ違うバンドを経験し集まるべき時が来て結成したような、ある意味CAP'N JAZZの正統続編だろう。
Promise Ring
Owlsに参加しなかったデイヴィーだが彼もまたEMOの歴史に名を刻むバンドを結成している。
それがPromise Ringだ。
こちらはキンセラ兄弟とは違いシンプルでポップ。正統派EMO PUNKとなっている。
歌詞も率直で若者の間でカルト的な人気を博す。
2002年に解散しているが2度ほど復活している(EMOバンドあるある)。
4枚のアルバムを出しておりどれも名作だが、必聴は2作目の『Nothing Feels Good』だろう。
Promise RingのボーカルのデイヴィーとドラムのダンがPromise Ring解散後に結成。
キーボードやアコースティックギターを用いてさらにポップに進化。
個人的に好きなアルバムは2nd『WE, THE VEHICLES』
EMOと言っても一言では表せないほどその幅は広がっている。
今回は一つのバンドとその派生から書いたが、90年代を代表するEMOバンドはまだまだたくさんある。
CAP'N JAZZという未完成のバンドから始まった一つの壮大なファミリー・ツリーですらこれで終わりではない。
(まだ紹介できてないバンドもたくさんある。。。)
そしてさらに2020年になった今でも彼らの意志を受け継ぎ活動するバンドが多い。
EMOは静かに、だが確かに次の世代にリバイバルされている。
EMOとはなにか。
生き様だろうと、声に出してみる。
(文:ゴセキユウタ)