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永久不滅の臓物滴る魂の遺産・THE STALIN / STALINISM NAKED

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THE STALIN / STALINISM NAKED


THE STALINはもういない、バンドの首謀者の遠藤ミチロウももういない、この世にいないのだ。が、しかし作品は残っている。血と肉は滅び、骨が灰となっても作品は残っている。まるで人々が魂の存在は不滅であると信じるようにアーチストの死と作品の死は直結しえない個々の輝きを称え、その時に存在しているのだ。


ボーカルの遠藤ミチロウらが中心となり1980年結成されたのがTHE STALINだ。日本における80'sパンク/ハードコアのムーブメントの中核深層にありながら常に孤高でも在り続けた確信犯集団、それがTHE STALINと言えよう。


ステージから豚の頭や臓物をぶちまけ、全裸で放尿までするおぞましく強烈で過激なパフォーマンスは週刊誌にまで特集されるほど話題となるが、それはあくまでメディアを扇動し利用したまでのパフォーマンスだった。


"暴力的な変態バンド"というのはTHE STALINの本質ではない。ストレートでありながらどこか血生臭いパンク/ハードコア・サウンド、そしてなにより遠藤ミチロウの書くその皮肉とユーモアの効いた"知的なパンク"と称された歌詞に確信犯としての証拠がある。


元々「STALINISM」はTHE STALINの解散後の1987年発表された編集盤だ。1980年に発表したファーストシングルの「電動こけし / 肉」、1981年に発表されたEPの「スターリニズム」からの5曲、1984年のアルバム「Fish Inn」の通販限定で付属されたソノシート「バキューム / 解剖室」、そしてアメリカでリリースされたオムニバス「Welcome to 1984」に収録されていた「Chicken Farm Chicken」、それらがまとめられたものだった。


そして「STALINISM "NAKED"」はそれらの音源のオリジナル・マスター・テープによる初の完全復刻盤であり、ラジオ番組に出演した際の音源で「仰げば尊し」のカヴァーが追加収録されて2019年にリリースされたものだ。またアルバム全編が余計なエフェクトを除去し、一部カットされた歌詞もそのまま収録されている。


実にプリミティブで暴力的でありながら鋭い知性をはらんだ魔性の視線を研ぎ澄ませてこちらを伺っている。「STALINISM NAKED」はスタジオアルバムのようなトータル性を持ったものではない編集盤という形式であるからこそTHE STALINの一貫したそんな"本質"を強烈に嗅ぎ取ることができる作品だ。そして、それはバンドの永久不滅の魂の遺産でもあると言えよう。




 


THE STALINはもういない、バンドの首謀者の遠藤ミチロウももういない、この世にいないのだ。が、しかし作品は残っている。血と肉は滅び、骨が灰となっても作品は残っている。まるで人々が魂の存在は不滅であると信じるようにアーチストの死と作品の死は直結しえない個々の輝きを称え、その時に存在しているのだ……


(文:Dammit)