Joan of Arc 最初の2枚について(後編)
Joan of Arc の初期について語る記事の後編。
予告通り、この記事は彼らの2ndアルバム「How Memory Works」について語っていこう。
簡潔に感想を言うと
いっぱいちゅき。(いっぱい好き)
どこかのク〇アニメのフレーズが飛び出てしまったが、これは素晴らしい。1stアルバムはポストロックをしすぎて超実験的で聴きにくさMAXだった。そこからどうなるか不安を抱えながら聞いてみたら・・・完全に魅了されてしまった。
エモとポストロックというのは切っても切れない関係があるけど、大体エモと結びつくのはマスロックが多い。もしくはハードコアよりのエモと轟音系ポストロックは近いものがある。だが、このアルバムはそのどちらでもない。エモと音響系音楽を見事に配合させた全く別の音楽だ。
単純に1stアルバム「A Portable Model Of...」とこの2ndアルバムを比べると、音のごった煮ではなくなって、バンドサウンドをかなり重視して、すこしピコピコ電子音があるという程度にまで整理されているといった印象がある。ここが前作から進化している大きな点である。
では収録曲の一部にコメントしていこう。
#2 Gin & Platonic
実質#1。(#1は電子音だけの小曲で、この曲のイントロのようになっている)
バリエモい。まさにCap'n Jazzから進化してる感じ。前作から急成長を遂げてバンドサウンドと電子的な音が一体になってる。
#3 To've Had Two of
フロントマン、ティム・キンセラによる弾き語りを中心とした曲。前作にはなかったストリングスの音をささやかながら入れ、優しく贅沢に仕上がっている。
Joan Of Arc - To've Had Two Of
#4 This Life Cumulative
これもバリエモい。電子音からバーストして、おとなしくなって、またバースト。
Joan Of Arc - This Life Cumulative
#5 A Pale Orange
このアルバム中で最長で7分近くある曲であり、もっとも音響音楽をしてる。弾き語りから始まり、一瞬だけ歪んだギターが響くが、あとは電子音に飲まれていく。こんな構成の曲が作れるなんて変態としか言いようがない。この曲をこの順番の位置に置いたということも良い。「このアルバムはもう少し難解な曲があってもいい」と思ったタイミングで響く。
#10 God Bless America
このアルバム中で一番エモい。クリーントーンと歪んだギターの混ざりあいが見事。
Joan of Arc - God Bless America
#11 A Party Able Model Of
このアルバムのラストナンバー。まさかのピアノ弾き語り。そしてあり得ないぐらい美しい。ストリングスも気持ちいい。
Joan Of Arc - A Party Able Model Of
どうだろう。前作に比べて随分と聞きやすく、それでいて程よい捻くれ具合だと思わないだろうか。11曲で40分弱というコンパクトさも手伝って、一気に聞くことができるし、かなり名盤だと思う。
もう少し大人しくして、さらに整ったアルバムが3rdアルバム「Live in Chicago 1999」、4thアルバム「The Gap」であり、一般的にはこの2枚がJoan of Arcの名盤とされている。
だが、エモバンド出身らしい静と動のコントラストと単純なバンドサウンドの良さならこのアルバムに軍配が上がるだろう。
採点。
4.5/5.0
1stアルバムとのギャップもあって高めになっているが、本当に素晴らしい作品である。
Joan of Arc について前編、後編と分けて記事を作ってみたが、楽しんでもらえただろうか。
前編で紹介した1stアルバム「A Portable Memory Of...」は相当な音楽好きでないと初聴きでは理解できないと思う。自信があったら挑戦してほしい。
後編(この記事)で取り上げた2ndアルバム「How Memory Works」はエモが好きなら誰が手に取っても楽しめるだろうし、Joan of Arc 入門、ひいてはポストロック入門にも適していると思う。
(文:ジュン)