名古屋のインディロックが今すごい
前回、久しぶりの出前寿司Recordsへの記事投稿ということで、名古屋のシューゲイザーイベント、DREAMWAVESの感想を記事を作った。
delivery-sushi-records.hatenablog.com
そして、書き終えて思った。
「今、名古屋はかっこいいバンドがいっぱいだから、誰かに伝えたい」
ということで、個人的に、名古屋の好きなインディーズバンドたちを紹介していこうと思う。
(※EASTOKLABについてはDREAMWAVESの時に書いたので、今回は除外する)
・Sitaq
トップバッターは、Sitaq。ド直球なインディオルタナ。おそらくだけど、名古屋の若手のバンドでは、知名度でちょっと抜けだしてると思う。着々と音源の取り扱いを日本各地に増やしているし、関東にも関西にもライブをしに行って、ファンを増やしている。
昨年、ついに1stミニアルバム「persons」をリリース。エモっぽい単音の紡ぎかたもあれば、スカートみたいなポップネスも兼ね備えている。あと、台湾のインディロックバンド、DSPSからドラムが影響を受けたりしてるし、そういう音楽が好きな人にも十分響くはず。
・スーベニア
これもストレートなインディオルタナバンド。名古屋でじわじわ注目されてたけど、昨年、東京のバンドTOWNとのスプリットCD「とうとう」をリリースし、一気に全国的に知名度があがった。個人的に、名古屋の若手インディロックのツートップはSitaqとスーベニアなんじゃないかと思う。
スーベニアも日本各地でライブをして、たくさんのバンドたちと共演をして、確実に力と人気を得てきている。今のうちに聞いてほしい。
TOWNとのスプリットを含め、現在のスーベニアの音源はバンドキャンプで聴くことができる。当然、diskunionなどでも入手できる。名古屋だと、StiffslackとFile-Under。
・Ophill
サイケ感のある、ゆるりとした音楽を聞かせてくれるバンド。オウガ・ユー・アスホールみたいな音楽が好きな人にはいいと思う。
1stミニアルバムがすごくよかった中、待望の新譜がリリース。大阪のFlake Recordsなどにも音源が進出していて、じわじわ来るバンドだと思う。少なくとも、名古屋では新譜がかなり売れている。
さらに最新のシングル曲(カセットでリリース)はサブスクで聴けるから、試し聞きもしやすい。ぜひ。
最新シングル「急行待ち」
新譜「UFO4U」
・The Rainy
ぶっちぎりで名古屋産のバンドで好きだ。名古屋のシガーロスだ。
先に述べた3組と比べると、まだまだこれからだろ、というのが正直なところ。
ただし、今年に入ってからライブ活動の拠点を東京のほうに移していくようになっているので、人気が出てくるのも時間の問題だと信じている。
現在、最新作のレコーディングが終わった状態だから、まもなく新作がでる。楽しみだ。
昨年リリースの1stEP 「film」
・Alibicounts
これも、The Rainyと同じで、大好きだから書きたかったバンド。ノイジーでクールなポストパンクを鳴らす良バンド。
一度、浜松のキルヒヘアでライブを観たことがあるが、音源そのままにめちゃくちゃかっこよかった。
最近、ポストパンクバンドの私的雑感をまとめた非常に良いブログ記事をよんだが、多くの海外の王道/現行のバンドたちに加えて、このAlibicountsはのっていた。愛知に住む者として、とても嬉しかった。
1st EP 「The Act of Killing Time #1」
・ulm
読み方は「ウルム」。多分名古屋で一番音がデカいバンド。インストゥルメンタル。ジャンルはポストブラック/シューゲイザー/ポストロック などなど。ライブも何度も見てるけど、ハードコアバンドばりの激しい演奏が楽しめる。こちらのバンドも、たくさんライブをやるバンド。
東京とか、名古屋をでてライブすることもどんどん多くなっている印象がある中、ついに彼らの音源がサブスクリプションを解禁した。ここから火がついてほしい。
3曲入りで24分という破壊力抜群のシングル「After Dark」
・Yawarakai Hitotachi
2017年の結成で、2018年のりんご音楽祭に出ていたバンド。ライブ動画をみてひとめぼれした。
最近、ついに音源をリリースした。名古屋で取り扱っているのは大須のANDYだが、残念ながら閉店が決まってしまった。(他に取り扱ってるのは福井のHOSIDOと京都のSECOND ROYAL。)
これで名古屋の人が簡単にCDを買えなくなるには、あまりにも惜しい。
ぜひ知ってほしいのである。
・Oavette
もっとたくさんバンドを挙げたいが、今回はこのバンド、Oavetteを最後とする。
名古屋の人力テクノバンドだ。バトルスが好きな人には突き刺さって仕方ないと思う。
関ジャムで以前、川谷絵音が好きな日本のインストバンドの一つとしてLITEを取り上げたが、そのLITEからも認められている。(LITEのポストロックのススメというプレイリストに加えられている。)川谷絵音経由で、コアなものを知りたいという邦ロックファンが手を伸ばしてほしいと思う。
昨年リリースの1stミニアルバム
というわけで、名残惜しいが、記事を終わろうと思う。好きなバンドはまだまだいっぱいいるが、長くなりすぎるのは良くないので。
新しく注目の名古屋のバンドがでたら、さらに書いていきたい。
(文:ジュン)
異形の音楽集団sukekiyo
はじめに
まずは出前寿司Records再始動おめでとうございます。アキオです。改めて誘って頂いたDammit氏にも感謝の意を。
いろいろ記事が上がっているのを見て、まずはsukekiyoを題材に少し筆をとることにした。
sukekiyoについて
まずsukekiyoというバンドだが、これはDIR EN GREYのフロントマン「京」が率いるもうひとつのバンドである。
もともと京の呼びかけで集まり、音楽的な理由よりも違う人間とやる事による"屈折"(化学変化とは言わないのが京らしい)を求め、2013年から活動を始めたバンドである。
基本的な音楽性を…説明したいのだがまずそれが難しい。
彼らの楽曲はヘヴィメタル、ニューウェイヴ、アンビエント、歌謡曲、ダンスミュージック、ポストロックなど実に様々な要素を内包していて、ベーシックになる音楽性を見つけ出しにくい。
あえて言うならダークでオルタナティブな方向性を指してヴィジュアル系と呼称する(黎明期のお化粧バンド的なマインドとの親和性から)のだろうが、こんなカテゴライズに意味があるのかどうかも怪しい。
また、彼らの楽曲は複雑怪奇な展開、実験的、ダークの3点がそろっているものが少なくなく、そのあたり聴く敷居も高いと思う。
しかし、誤解しないでほしいのは散漫ではなければ、ただマニアックなだけでもないということである。
どの楽曲にも京の声によってはっきりとした指向性を与えられているし、ボーカリゼーションの巧みさによって楽曲ごとにまるで違う印象をリスナーに与えてくれる。
そして、他のメンバーもそれに従うどころか食ってしまおうと果敢にトライするあたりがやっぱりバンドらしい。
更にすべての楽曲において、楽曲そのものの構成力や卓越したアレンジセンス、音響構築能力を発揮することにより、
音響的にマニアックな作り込みをする中にも日本人の琴線にふれるキャッチーなメロディラインをプラスしている。
DIR EN GREYがよく「カテゴライズ不能かつ不要なロック・バンド」と評されるが、その称号はこのバンドにも相応しい。
むしろ確固たる影響源が見えないこちらの方が当てはまるか。
sukekiyoという名前は犬神家の一族のスケキヨから取っている。
名前からジャンルや音楽性が想像できないことや、
あの白マスクを思い浮かべることですぐ覚えて貰えるかららしい。
様々な方とコラボしたりするのも大きな特徴で、X JAPANのToshlやD’ERLANGERのkyoといった先輩方や俳優の三上博史や鬼束ちひろ(PV上のみ)といった異ジャンルとのコラボもある。
また、色々ライブにも制約を設けており歓声を上げられない、フリ出来ない、場合によっては黒服オンリー(これはヴィジュアル系伝統のドレスコードでもあるけど)、総合芸術としての空間演出を志向したり、
演劇実験室◎万有引力とライブ中でコラボしたりと、ある種インスタレーション的な試みも感じられる。
京の好きな映画監督「アレハンドロ・ホドロフスキー」や漂う見世物小屋っぽさ、京以外のメンバーの持つ音楽的嗜好など語りたいことは山ほどあるのだが、
まずは聞いてもらった方が早いので自分が語るのはここまでにしよう。
最後になりますが、改めて再始動おめでとうございます。微力ながら貢献できるよう頑張ります。
試聴リスト
open.spotify.com
(1stアルバムでも随一の叙情的なナンバー)
open.spotify.com
(別音源では俳優の三上博史とツインボーカルになっている)
open.spotify.com
(中森明菜が歌っても違和感のない歌謡曲テイスト)
youtu.be
(クリープショー、悪魔の毒々モンスターというふたつの映画を連想させる言葉が歌詩に入っている)
(文:アキオシロートマグル)
アンダーグラウンド・メロディック・デス・メタル・コンピレーションの激烈傑作!第4弾!「Melancholizer vol.4」
V.A / Melancholizer vol.4
もはや一部の"界隈"では有名な明日くんが作ったネットレーベル「Melancholizer」の名を冠する名物メロディック・デス・メタルのコンピレーションCDの第4弾が2月の終わり頃に発表された。
元々は音系のメディアミックスの同人即売会イベント「M3」にて先行販売される予定だった作品だったが、明日くんはこのイベントを昨今騒がれている新型コロナウイルスの影響に憂慮して参加を辞退した。それは普段からTwitterにてコロナウイルスに関しては危機感を持った姿勢があった彼らしい一貫した対応だった。
そんな事態を乗り越えて発表されたコンピレーションも第4弾である。第1弾の頃から唯一参加している明日くんですらそのユニット名を変えたりと紆余曲折あれども継続は力なりである、確実に力強い面子を揃えて作品発表を重ねて辿り着いたこの「Melancholizer vol.4」は参加したバンドやユニットが合計6組の6曲を収録、史上最もコンパクトでありながら作品としての密度は実に強靭で逞しい内容となっている。たしかに今回参加しなかったことが悔やまれるバンドやユニットもいたが、それでも今回の「Melancholizer vol.4」の仕上がりはカッコいいの一言に尽きるものが揃っている。
メロディック・デス・メタルのコンピレーションである「Melancholizer」シリーズその第4弾はメロデスに対するそれぞれの解釈や視点の違いがある。これが実に多様で面白く、カッコいい形で揃っているのが本コンピレーションの最大の旨味ではなかろうか。以下はアルバムの解説だ。
「Melancholizer」シリーズを通して毎回先陣を切るのはレーベルのリーダーである明日くんことAsukunだ。新曲「Bojoh」は彼が一時期標榜していた歌謡メロデスのその湿感あるメロディーをより発展させたようなどこか不気味な不協和音が響くホラーテイストの演出がダークでそしてきらびやかな一曲に仕上がっている。
続いて登場するのが前回の「Melancholizer vol.3」にも参加した東京のバンドのBloodeyed Sunsetの一曲「Chaos master」。硬質なリフとそこに絡むメロディックなギターらが重厚に積み重ねられた転調の切れ味もある曲だ。ヴォーカルの鋭いシャウトも鮮烈でカッコいい。
次にこちらも東京のメロデスバンドのCLAYMANの曲で「Gate of Wrath」(CDにある曲名の「Entombed Envy」は誤表記)。そのサウンドは正統派なヘヴィ・メタルを彷彿とさせるようなメロディーとリフを持ちつつ、そのヴォーカルがまたデス・メタルたらん正統性を持つ実に太い破壊力のあるバンドの一曲だ。
そして本コンピレーションの「Vol.2」「Vol.3」にも参加しAsukunとのスプリットEP「Evil Twin」(このEPもカッコいいぞ!)でも共演を果たした茨城産家系メロディック・デス・メタル・バンド(!?)yabaokayaの登場、曲は「旋律物語」。メロディック・デス・メタルと言ってもそのアプローチは実に多様多彩極まる中でもこれぞメロデスといわんばかりの正統派のサウンドがこれでもかと格好良く炸裂している、なのにyabaokayaを聴いているというこの実感は本当に強いものがある。
兵庫県のMixing within the Brainはサウンドのミックスが凝っているメタル・コアを聴かせてくれるバンドだ。コンピレーションへの参加曲の「燦然と煌めく赤い未来」(なんてカッコいいタイトルだ!)は怒涛の音塊の絨毯爆撃とも言うような実に凄まじい戦慄の一曲となっているが、隅々にサウンドメイクが施された配慮の行き届いた繊細な仕事も光る曲でもある。
そして本コンピレーションの最後を飾るのは同人ゲームのBGMを作曲しつつ、同人音楽サークル等でも活躍する「Melancholizer」の中では異色の経歴の持ち主である意味ミステリアスなカードなユニットめたらび、そんな彼が提供した一曲「Seth of Lust」はどこかオールド・スクール特有の不気味で鋭く攻撃的なサウンドが癖になる曲だ。彼の場合このサウンドはほんの一面にしか過ぎないのかもしれない。
※以下は本コンピレーションに収録された曲がYouTube上で上がっていた二組の動画。
ヘヴィ・メタルそれ自体のサブ・ジャンルが実にややこしく初心者にはなかなかと手の出しづらいジャンルであったりもする。しかし、それは同時に多様性の表裏一体とも言える。本コンピレーション「Melancholizer」シリーズにあるのはヘヴィ・メタルの純然たる多様性と可能性の提示である。アンダーグラウンドの誠実がここにはある。
(文:Dammit)
羊文学「1999/人間だった」レビュー
羊文学 / 1999/人間だった
特別な贈り物は素敵な包装紙に包まれているとより特別な感じがして嬉しい、単純なことかもしれないけれども嬉しい。
羊文学の生産限定シングル「1999/人間だった」は、2019年12月4日にリリースされたバンドからの少し早めのクリスマスプレゼントだった。
作品が手元に届いた時にその絵本のようなジャケットの素敵な仕様に思わずときめきのようなものを覚えた、それは子供の頃に"サンタさんから届いた"クリスマスプレゼントの包装紙のあの匂いを嗅いだ瞬間に訪れたドキドキした気持ちと同じものだった。同時にバンドのシングルCDという形式の媒体にこんな風にドキドキしたのはいつ以来の事だったろうかと過去の記憶と思い出に想いを巡らせた。実にノスタルジックな気持ちと温かさが胸いっぱいになる。
かつて「1999」という年は未来であった。世紀末であり、ノストラダムスの大予言などと言って世界は破滅するんじゃなかろうかとまで思っていた。また、様々なアーチストが「1999」をテーマとした曲を書いた。その大半が実に未来としての新しいものとしての「1999」だった。
ところがどうだろう、俺たちがいま生きている時代は「2020」だ、「1999」よりもずっと未来な筈なのに車は空を飛んでいない、人型ロボットが街を闊歩していない、そして何よりも世界は滅びそうなまま滅んではいない。すっかりと「1999」は過去となってしまった。あの未来であった、世紀末であった、もしかすればこの世の終わりだった「1999」は何処へと行ってしまったのだろうか。
羊文学の提示する「1999」は、過去となってしまったかつての世紀末と呼ばれたあの時代のクリスマスイブを、ノスタルジアと一匙のファンタジーで実に丁寧に優しく柔らかに紡いだような曲だ。かつての未来が過去となる過程で色褪せて行く様に、ノスタルジアを見出だし描く不変の着目点とセンスは、より"深化"したバンドと塩塚モエカの新たな一面ではなかろうか。
そして「そんなことをそんな声でそんな風に歌われてしまっては心がメチャクチャになってしまうよ」と言うほどに、塩塚モエカは時折何よりも純粋で残酷な解放感の果てに垣間見える優しさのアーチストであると俺は思っていて、カップリングの「人間だった」はそんな塩塚モエカの純粋さをより果てなき果てが広がる解放感の為に徹して費やしたような一曲に仕上げられている。そして果てなき果てのその先にある塩塚モエカの視線はやはり優しくどこか温かい。
残酷な世界と純粋に向き合うが為に残酷にならなくてはいけない時期が終わり、羊文学は塩塚モエカはその視線から残酷な世界すら優しく温かく見つめるという広大無辺な新たな視線を"深化"により手にした。それは"強さ"でもある。より優しく温かく柔らかく、羊文学は強くなった。
"1999"(MV)
"人間だった"(MV)
羊文学がその音楽で見せてくれる世界がある。その世界は無限に広く優しく心地良い、そんな羊文学に俺はロックバンドととして純粋に魅力的に感じる。羊文学は大好きなロックバンドだ。
(文:Dammit)
第1回、名古屋のシューゲイザーイベント、DREAMWAVES(初日)
(はじめに)
(ひさしぶりに出前寿司Recordsで記事を書くことができることに、感謝します。)
今年、2020年の早々に、あるイベントが名古屋で開催されると発表された。
MUSO JAPAN presents
第1回 DREAMWAVES @鶴舞DAYTRIP
今をときめくシューゲイザー・ドリームポップバンドを、名古屋の同ジャンルのバンドたちで迎え撃つ、名古屋はもちろん、東海のシューゲイザー好きにはたまらないイベント。
3/7、この第1回DREAMWAVESの初日が開催された。ここに、ライブの感想として記事を書こうと思う。
(****前置き****)
知っての通り、コロナウイルスの影響で、多くのライブが中止となっている。残念ながら、このイベントもその影響を受けてしまった。名古屋を代表するシューゲイザーバンド、Softsurfが出演キャンセルとなってしまったのだ。
自分としては、久しぶりに見れると思って一番の目当てのバンドだったので非常に残念であった。安全第一であるので、softsurfの勇気ある決断には敬意を表する。もちろん、このイベントを開催すると踏み切ったMUSO JAPANにも同じである。
ぜひ、第2回DREAMWAVESへのSoftsurfのリベンジ出演を熱望する。
Softsurf のアルバムのApple Music のリンクを以下に貼っておく。DREAMWAVESのために遠くから来た人もいた。名古屋を代表するシューゲイザーを聞いてほしい。このイベントがもっと続いていくために。
softsurfの「Into the Dream - EP」をApple Musicで
(****以上、前置き****)
当日の出演順は以下の通り。
① Pale Beach
② EASTOKLAB
③ Cattle
④ For Tracy Hyde
開場から、各バンドの転換、待ち時間の間はDJの小野氏、嘉藤氏によってシューゲイザー・ドリームポップを中心に素晴らしい曲が流れ続けた。
スロウダイヴやチャプターハウスはもちろん、サンファやパッションピットなども流れていて、最高のイベントに最高の空気を作っていた。
終始、For Tracy Hyde の夏bot氏がうれしそうにDJの音楽で体を揺らしていたのが印象的だった。素晴らしいDJで空気を支えてくれたことにまず感謝したい。
ここからは各バンドについての感想。
① Pale Beach
名古屋のバンド。自分が観るのはDREAMWAVESが初めてだった。3/14に開催のDREAMWAVES 2日目に出演するMorningwhimのフロントマン、Hide氏によるプロジェクト。昨年1stシングルカセットをリリース。これからどんどん人気になっていきそうで楽しみだ。カセットは大須のRecord Shop Andy や File-Under の店頭や通販で入手できる。Soundcloudでも聞くことができる。
Pale Beach | Free Listening on SoundCloud
そんな彼らのライブであるが、DREAMWAVESというイベントの名をよく体現したライブだと思った。轟音というよりは、まさに夢のように揺れる雰囲気で、流れるようにポップな音を紡ぐ。この日の出演バンドの中では一番、音に癒しの作用があったと思う。
Hovvdyだったりとか、所謂ベッドルーム・ポップと呼ばれたりする音楽が広く受け入れられる昨今で、名古屋から素晴らしいバンドが出てきていることが生で感じられてうれしかった。
フロントマンのHide氏のバンド、Morningwhimは3/14のDREAMWAVES 2日目に出演するし、さらにデビュー7インチシングルをFastcut Recordsよりリリースすることも決まっている。両バンドとも、今後が楽しみである。
②EASTOKLAB
自分にとっては、もう既におなじみのバンドだ。名古屋を中心に日本全国で超精力的にライブをするドリームポップ・バンド。今回のライブで、観るのは多分4、5回目。
EASTOKLABの「EASTOKLAB - EP」をApple Musicで
非常に安定して高いクオリティのライブをしてくれるバンドとして信用している。そして、今回もそれに応えてくれた。序盤はポップな感じがして、今日は音量控えめなのか、と思った。だけど、「Always」からは圧巻と言わんばかりにギターが目立って、轟音感がでた。新曲も混ぜながらのライブで楽しかった。最後の「Dive」が、今まで聞いた彼らのライブでは一番良かった気がした。音量もでかかった。
とにかく、上手だったというのが感想。毎回言ってる気がするけど。音量で圧倒するライブというよりは、空間を生かして、そこでよく響くように音楽をしてるような。
③Cattle
自分にとって、今回の目当てのバンド。昨年1stフルアルバム『Sweet Dream, Tender Light and Your Memory』をリリースして以降では今回が初の名古屋。およそ1年前にSPOOLのレコ発で名古屋のParty'sに来た時以来、久しぶりに見ることができた。
cattleの「Sweet Dream,Tender Light and Your Memory」をApple Musicで
アルバムからの曲を中心にやるのかと思ってたけど、EP『Slow Sailor』の曲とか、以前からの曲もかなり混ぜてきて、盛沢山だった。とはいえ、もっとアルバムの曲も聞きたかった。「Shooting Star」を聞くことができたのは本当にうれしかった。
今回のライブ出演者の中では、一番真っ向からシューゲイザーをしてた。轟音は正義だ。もっともっと曲をやってほしかった。Pale BeachとEASTOKLABのミドルテンポで揺らぐようなライブを観たあとだったから、あっという間に走り抜けた印象がある。
④For Tracy Hyde
今回のトリ、フォトハイ。自分が観るのは2回目。初めて見たのは、今年の1月に下北沢のモナレコードに見に行った時。モナレコードは名古屋で例えると、ステージの感じがTight Ropeで、キャパがRADで、内装がParty'sとかハポンに近い、そんなハコ。
そこでみたフォトハイは「意外と繊細なバンドなのかな」という感想だった。爆音でやる演奏ではなかったし。(ただ、あのライブはキラキラした音がかなり目立っていたし、Vo.エウレカのささやくような声が楽しめたので、彼らの一つの側面がしっかり出てたように感じた。)
個人的な話だが、EASTOKLABを観た最初の2回は、Party's(SPOOLレコ発)とハポン(ワンマン)だった。その後にPollyレコ発でアポロベースで観た時に印象がガラリと変わった。しっかりと大きい音が反響するライブハウスで観ると、しっかりシューゲイザーだと感じた。
そんな風な体験があったから、鶴舞DAYTRIPではどんな音が聞けるだろうという、ある種の不安と楽しみを抱えていた。
結果として、やはり印象が180度変わった。Vo.エウレカの歌が「こんなに声量あったのか」と思うほどしっかり聞こえたし、掻きむしられる3本のギターの音がDAYTRIPを支配していた。
セットリストも素晴らしかった。代わる代わるバンド内でセトリを考える人を変えているらしく、今回のライブのセトリはVo.エウレカ担当とのこと。
『冬から春になっていく』
そんなテーマで作られていたようで、間違いなくそれを完璧に表した、これ以上ないセットリストだった。「繋ぐ日の青」が見ることができたのがこのイベントの個人的ハイライト。
For Tracy Hydeの「New Young City」をApple Musicで
メインの最後に「櫻の園」。アンコールに「Halation」があって、完全に花見モードで終わった。DREAMWAVESという祭りに最高のエンディングだった。
文句なしでDREAMWAVES初日のベストアクトだった。これが名古屋で観れたことにひたすらに感謝する。
ライブの終わりに、エウレカ本人からセットリストをもらって、サインをもらえた。素晴らしい宝物になった。
(セットリスト)
First Regrets
Frozen Beach
ハル、ヨル、メグル
Ghost Town Polaroids
Underwater Girl
あたたかくて甘い海
麦の海に沈む果実
君にして春を想う
繋ぐ日の青
櫻の園
Halation(アンコール)
ライブの感想は、これでおしまい。コロナウイルス、Softsurfキャンセルという痛手を負いながらも、かなり人が集まってたし、これは万全な状態で第二回を迎えたら更にすごいことになりそうだ。(第一回はまだ来週のDAY2を残しているけど)。
名古屋といえば、パンク、ハードコア、エモのシーンが非常に強く、シューゲイザーのバンド、シューゲイザーのイベントが比較的に少ない。
そんな中でもこのDREAMWAVESはこれからの名古屋でのシューゲイザーシーンを盛り上げてくれるイベントにこれからなっていってほしいと願うばかりである。
本当にいい日だった。
(追記)
この記事を完成させた夜に、悲しい知らせがあった。Day2 の Lightfoils、Fauvelyの来日ツアーの全公演を中止するとのことである。
直前の決断であり、ギリギリのギリギリまで、この招致の主催の17歳とベルリンの壁の吉田氏、フォトハイの夏Bot氏は悩んだはずである。苦しくも決断をしたすべての人に敬意を表する。
これは今生の別れではない。DREAMWAVESの第2回、ひいてはLightfoilsとFauvelyの初来日が更に豪華になるための布石であると信じている。
Lightfoilsは、Airiel のリズム隊によって結成されたバンドで、17歳とベルリンの壁の吉田氏がずっと追いかけてきたシューゲイザーバンドである。もし知らない人がいたら、聞いてほしい。熱く再来日の機会を熱望して、暖かく迎えるためにも。
Fauvelyも、Lightfoilsと共にシカゴシューゲイザーを引っ張るバンドだ。彼らの音楽も、合わせて聞いてほしい。
Lightfoils 1stアルバム
Lightfoilsの「Hierarchy」をApple Musicで
Lightfoils 2ndアルバム
Lightfoilsの「Chambers」をApple Musicで
Fauvely 1st EP
Fauvelyの「Watch Me Overcomplicate This - EP」をApple Musicで
Fauvely 2nd EP
Fauvelyの「This is What the Living Do - EP」をApple Musicで
(文:ジュン)
永久不滅の臓物滴る魂の遺産・THE STALIN / STALINISM NAKED
THE STALIN / STALINISM NAKED
THE STALINはもういない、バンドの首謀者の遠藤ミチロウももういない、この世にいないのだ。が、しかし作品は残っている。血と肉は滅び、骨が灰となっても作品は残っている。まるで人々が魂の存在は不滅であると信じるようにアーチストの死と作品の死は直結しえない個々の輝きを称え、その時に存在しているのだ。
ボーカルの遠藤ミチロウらが中心となり1980年結成されたのがTHE STALINだ。日本における80'sパンク/ハードコアのムーブメントの中核深層にありながら常に孤高でも在り続けた確信犯集団、それがTHE STALINと言えよう。
ステージから豚の頭や臓物をぶちまけ、全裸で放尿までするおぞましく強烈で過激なパフォーマンスは週刊誌にまで特集されるほど話題となるが、それはあくまでメディアを扇動し利用したまでのパフォーマンスだった。
"暴力的な変態バンド"というのはTHE STALINの本質ではない。ストレートでありながらどこか血生臭いパンク/ハードコア・サウンド、そしてなにより遠藤ミチロウの書くその皮肉とユーモアの効いた"知的なパンク"と称された歌詞に確信犯としての証拠がある。
元々「STALINISM」はTHE STALINの解散後の1987年発表された編集盤だ。1980年に発表したファーストシングルの「電動こけし / 肉」、1981年に発表されたEPの「スターリニズム」からの5曲、1984年のアルバム「Fish Inn」の通販限定で付属されたソノシート「バキューム / 解剖室」、そしてアメリカでリリースされたオムニバス「Welcome to 1984」に収録されていた「Chicken Farm Chicken」、それらがまとめられたものだった。
そして「STALINISM "NAKED"」はそれらの音源のオリジナル・マスター・テープによる初の完全復刻盤であり、ラジオ番組に出演した際の音源で「仰げば尊し」のカヴァーが追加収録されて2019年にリリースされたものだ。またアルバム全編が余計なエフェクトを除去し、一部カットされた歌詞もそのまま収録されている。
実にプリミティブで暴力的でありながら鋭い知性をはらんだ魔性の視線を研ぎ澄ませてこちらを伺っている。「STALINISM NAKED」はスタジオアルバムのようなトータル性を持ったものではない編集盤という形式であるからこそTHE STALINの一貫したそんな"本質"を強烈に嗅ぎ取ることができる作品だ。そして、それはバンドの永久不滅の魂の遺産でもあると言えよう。
THE STALINはもういない、バンドの首謀者の遠藤ミチロウももういない、この世にいないのだ。が、しかし作品は残っている。血と肉は滅び、骨が灰となっても作品は残っている。まるで人々が魂の存在は不滅であると信じるようにアーチストの死と作品の死は直結しえない個々の輝きを称え、その時に存在しているのだ……
(文:Dammit)
ピーキー・オヤナギが語るジャニーズ名曲選②SixTONES/Imitation Rain
SixTONES/Imitation Rain
あなたはもうお聴きになっただろうか?
ご覧の通りメンバー皆ずぶ濡れである。
SixTONESは2015年に結成。メンバーはジェシー、京本大我、松村北斗、高地優吾、森本慎太郎、田中樹の6名。故ジャニー喜多川氏による命名。当初は“シックストーンズ”と発音したがその後“ストーンズ”に変更。「原石」「6つの音色」といった意味合いがある。テレビだけでなくYouTubeに積極的に露出するグループ。そんな彼らのデビュー曲がこのImitation Rainだ。
PVはブルーバックにCGを重ねた幻想的なシーンと、実際の水、雨、炎を使ったセットと激しいダンスが組み合わさったリアルでエモーショナルなシーンで構成されている。クールな静けさと圧倒的な熱量の激しさが同居しているのだ。静と動。
音の方も雨音のようなピアノの旋律が奏でられたかと思えば、静けさを切り裂くギターの音色とずっしりとしたバスドラで幕を開けるイントロからもはやシェイクスピアのテンペストの始まりのような劇的なものだ。
この曲誰が作ったのかと言えばあのX JAPANのYOSHIKIである。
知らなかった人も納得である。
(そういえばENDLESS RAINって曲あったよね)
ヴィジュアル系的でもありジャニーズ的でもある「ガラス」「薔薇」などの歌詞のワードはヴィジュアル系とジャニーズ音楽の融合のようにも思える。
さらにはX JAPANの代表曲「紅」まで歌詞に入っているのだ。
これまでのジャニーズのデビュー曲は基本的に勢いや歌詞のトンチキさ、青さを滲ませたものであったが、SixTONESは年齢的なものも含めてまだあどけない少年ではなく成熟した大人としての売り出し方ではないだろうか。
YOSHIKIの作風とSixTONES自体の持つ洗練されたポテンシャルが合わさり、ジャニーズのデビュー曲らしからぬ壮大さを讃えたバラード楽曲になった。
作り手の作家性を出しつつも、彼らが最高に輝けるように作り上げる。流石と言ったところである。
試行錯誤を重ね、本来の完成の予定から半年程遅らせてたとの話もある。(「SixTONESメンバー全員に音域を調べて、元々転調はなかったが、ここまで高音がでるならと転調もいれた」「世界を目指すなら、歌詞もあえて全部英語にしようとも思ったが、それは先方から半分は日本語でお願いしますと言われた」など)
X JAPANのアルバムも出来栄えに納得が行かず最終的にお蔵入りにしてしまうYOSHIKIらしいエピソードだ。
↑レコーディング風景はこちら
YOSHIKIは現副社長、滝沢氏の熱心な思いと海外での活動を視野に入れたSixTONESの目標や思い描く夢に共感し、オファーを受けたそうだ。デビュー曲はエッジの効いた激しさの中に優しさや美しさも持ち合わせる、「意図的に“YOSHIKI メロディ”を取り入れた」大作に仕上げられている。
<YOSHIKIコメント>
「滝沢さんからお話をいただいたのは、ジャニーさんがご存命の頃でした。
あまりにも自分のスケジュールが過密だったため、安易に引き受けると後々ご迷惑をかけると思い、
お断りするつもりでお会いしましたが、滝沢さんの熱心な思いに心を打たれ、また『SixTONES』が
海外でのJ-POPのイメージを一新させる可能性を秘めたグループだと確信したので、楽曲提供および
プロデュースを引き受けさせて頂きました。楽曲については滝沢さんとも話し合い、意図的に‟YOSHIKIメロディ”を取り入れました。先見の明を持つ滝沢さんのもと、メンバー個々の魅力に加え、高度な歌唱力とパフォーマンス力を持つ『SixTONES』という素晴らしいグループが今後どのように進化していくのか、とても楽しみです。
デビュー、おめでとうございます。」
とのことで、コメントからもその高い期待値を伺わせる。SixTONESは今後は世界に向けても今後活躍の機会を伸ばしていくことだろうと思う。
思えばX JAPANもそうだが亡くなられたジャニー喜多川氏も初代ジャニーズの頃から米国進出と商業的な成功は悲願であった。そんな思いも馳せてしまう。
彼らの始まりを告げる文字通りの序曲として放たれたImitation Rain、日本のアイドルとして、アジアのアイドルとして彼ら自身も言うよう「デビューは通過点」でしかないのだ。
とりあえずCDもだいぶ売れたし今後はサブスク化なども期待したい。
(文:ピーキー・オヤナギ)