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アンダーグラウンド・メロディック・デス・メタル・コンピレーションの激烈傑作!第4弾!「Melancholizer vol.4」

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V.A  / Melancholizer vol.4


もはや一部の"界隈"では有名な明日くんが作ったネットレーベル「Melancholizer」の名を冠する名物メロディック・デス・メタルのコンピレーションCDの第4弾が2月の終わり頃に発表された。


元々は音系のメディアミックスの同人即売会イベント「M3」にて先行販売される予定だった作品だったが、明日くんはこのイベントを昨今騒がれている新型コロナウイルスの影響に憂慮して参加を辞退した。それは普段からTwitterにてコロナウイルスに関しては危機感を持った姿勢があった彼らしい一貫した対応だった。


そんな事態を乗り越えて発表されたコンピレーションも第4弾である。第1弾の頃から唯一参加している明日くんですらそのユニット名を変えたりと紆余曲折あれども継続は力なりである、確実に力強い面子を揃えて作品発表を重ねて辿り着いたこの「Melancholizer vol.4」は参加したバンドやユニットが合計6組の6曲を収録、史上最もコンパクトでありながら作品としての密度は実に強靭で逞しい内容となっている。たしかに今回参加しなかったことが悔やまれるバンドやユニットもいたが、それでも今回の「Melancholizer vol.4」の仕上がりはカッコいいの一言に尽きるものが揃っている。


メロディック・デス・メタルのコンピレーションである「Melancholizer」シリーズその第4弾はメロデスに対するそれぞれの解釈や視点の違いがある。これが実に多様で面白く、カッコいい形で揃っているのが本コンピレーションの最大の旨味ではなかろうか。以下はアルバムの解説だ。


「Melancholizer」シリーズを通して毎回先陣を切るのはレーベルのリーダーである明日くんことAsukunだ。新曲「Bojoh」は彼が一時期標榜していた歌謡メロデスのその湿感あるメロディーをより発展させたようなどこか不気味な不協和音が響くホラーテイストの演出がダークでそしてきらびやかな一曲に仕上がっている。


続いて登場するのが前回の「Melancholizer vol.3」にも参加した東京のバンドのBloodeyed Sunsetの一曲「Chaos master」。硬質なリフとそこに絡むメロディックなギターらが重厚に積み重ねられた転調の切れ味もある曲だ。ヴォーカルの鋭いシャウトも鮮烈でカッコいい。


次にこちらも東京のメロデスバンドのCLAYMANの曲で「Gate of Wrath」(CDにある曲名の「Entombed Envy」は誤表記)。そのサウンドは正統派なヘヴィ・メタルを彷彿とさせるようなメロディーとリフを持ちつつ、そのヴォーカルがまたデス・メタルたらん正統性を持つ実に太い破壊力のあるバンドの一曲だ。


そして本コンピレーションの「Vol.2」「Vol.3」にも参加しAsukunとのスプリットEP「Evil Twin」(このEPもカッコいいぞ!)でも共演を果たした茨城産家系メロディック・デス・メタル・バンド(!?)yabaokayaの登場、曲は「旋律物語」。メロディック・デス・メタルと言ってもそのアプローチは実に多様多彩極まる中でもこれぞメロデスといわんばかりの正統派のサウンドがこれでもかと格好良く炸裂している、なのにyabaokayaを聴いているというこの実感は本当に強いものがある。


兵庫県のMixing within the Brainはサウンドのミックスが凝っているメタル・コアを聴かせてくれるバンドだ。コンピレーションへの参加曲の「燦然と煌めく赤い未来」(なんてカッコいいタイトルだ!)は怒涛の音塊の絨毯爆撃とも言うような実に凄まじい戦慄の一曲となっているが、隅々にサウンドメイクが施された配慮の行き届いた繊細な仕事も光る曲でもある。


そして本コンピレーションの最後を飾るのは同人ゲームのBGMを作曲しつつ、同人音楽サークル等でも活躍する「Melancholizer」の中では異色の経歴の持ち主である意味ミステリアスなカードなユニットめたらび、そんな彼が提供した一曲「Seth of Lust」はどこかオールド・スクール特有の不気味で鋭く攻撃的なサウンドが癖になる曲だ。彼の場合このサウンドはほんの一面にしか過ぎないのかもしれない。


※以下は本コンピレーションに収録された曲がYouTube上で上がっていた二組の動画。




ヘヴィ・メタルそれ自体のサブ・ジャンルが実にややこしく初心者にはなかなかと手の出しづらいジャンルであったりもする。しかし、それは同時に多様性の表裏一体とも言える。本コンピレーション「Melancholizer」シリーズにあるのはヘヴィ・メタルの純然たる多様性と可能性の提示である。アンダーグラウンドの誠実がここにはある。


(文:Dammit)