出前寿司Records

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第1回、名古屋のシューゲイザーイベント、DREAMWAVES(初日)

 

(はじめに)

 

(ひさしぶりに出前寿司Recordsで記事を書くことができることに、感謝します。)

 

 

 

 今年、2020年の早々に、あるイベントが名古屋で開催されると発表された。

 

 MUSO JAPAN presents

 第1回 DREAMWAVES @鶴舞DAYTRIP

 

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 今をときめくシューゲイザー・ドリームポップバンドを、名古屋の同ジャンルのバンドたちで迎え撃つ、名古屋はもちろん、東海のシューゲイザー好きにはたまらないイベント。

 

 3/7、この第1回DREAMWAVESの初日が開催された。ここに、ライブの感想として記事を書こうと思う。

 

(****前置き****)

 

 知っての通り、コロナウイルスの影響で、多くのライブが中止となっている。残念ながら、このイベントもその影響を受けてしまった。名古屋を代表するシューゲイザーバンド、Softsurfが出演キャンセルとなってしまったのだ。

 自分としては、久しぶりに見れると思って一番の目当てのバンドだったので非常に残念であった。安全第一であるので、softsurfの勇気ある決断には敬意を表する。もちろん、このイベントを開催すると踏み切ったMUSO JAPANにも同じである。

 ぜひ、第2回DREAMWAVESへのSoftsurfのリベンジ出演を熱望する。

 Softsurf のアルバムのApple Music のリンクを以下に貼っておく。DREAMWAVESのために遠くから来た人もいた。名古屋を代表するシューゲイザーを聞いてほしい。このイベントがもっと続いていくために。

 

softsurfの「Into the Dream - EP」をApple Musicで

 

(****以上、前置き****)

 

 当日の出演順は以下の通り。

 ① Pale Beach

 ② EASTOKLAB

 ③ Cattle

 ④ For Tracy Hyde

 

 開場から、各バンドの転換、待ち時間の間はDJの小野氏、嘉藤氏によってシューゲイザー・ドリームポップを中心に素晴らしい曲が流れ続けた。

 スロウダイヴやチャプターハウスはもちろん、サンファやパッションピットなども流れていて、最高のイベントに最高の空気を作っていた。

 終始、For Tracy Hyde の夏bot氏がうれしそうにDJの音楽で体を揺らしていたのが印象的だった。素晴らしいDJで空気を支えてくれたことにまず感謝したい。

 

 ここからは各バンドについての感想。

 

 

 ① Pale Beach

 名古屋のバンド。自分が観るのはDREAMWAVESが初めてだった。3/14に開催のDREAMWAVES 2日目に出演するMorningwhimのフロントマン、Hide氏によるプロジェクト。昨年1stシングルカセットをリリース。これからどんどん人気になっていきそうで楽しみだ。カセットは大須のRecord Shop Andy や File-Under の店頭や通販で入手できる。Soundcloudでも聞くことができる。

 

 

Pale Beach | Free Listening on SoundCloud

 

 そんな彼らのライブであるが、DREAMWAVESというイベントの名をよく体現したライブだと思った。轟音というよりは、まさに夢のように揺れる雰囲気で、流れるようにポップな音を紡ぐ。この日の出演バンドの中では一番、音に癒しの作用があったと思う。

 Hovvdyだったりとか、所謂ベッドルーム・ポップと呼ばれたりする音楽が広く受け入れられる昨今で、名古屋から素晴らしいバンドが出てきていることが生で感じられてうれしかった。

 フロントマンのHide氏のバンド、Morningwhimは3/14のDREAMWAVES 2日目に出演するし、さらにデビュー7インチシングルをFastcut Recordsよりリリースすることも決まっている。両バンドとも、今後が楽しみである。

 

 

 ②EASTOKLAB 

 自分にとっては、もう既におなじみのバンドだ。名古屋を中心に日本全国で超精力的にライブをするドリームポップ・バンド。今回のライブで、観るのは多分4、5回目。

 

EASTOKLABの「EASTOKLAB - EP」をApple Musicで

 

 非常に安定して高いクオリティのライブをしてくれるバンドとして信用している。そして、今回もそれに応えてくれた。序盤はポップな感じがして、今日は音量控えめなのか、と思った。だけど、「Always」からは圧巻と言わんばかりにギターが目立って、轟音感がでた。新曲も混ぜながらのライブで楽しかった。最後の「Dive」が、今まで聞いた彼らのライブでは一番良かった気がした。音量もでかかった。

 とにかく、上手だったというのが感想。毎回言ってる気がするけど。音量で圧倒するライブというよりは、空間を生かして、そこでよく響くように音楽をしてるような。

 

 

 ③Cattle

 自分にとって、今回の目当てのバンド。昨年1stフルアルバム『Sweet Dream, Tender Light and Your Memory』をリリースして以降では今回が初の名古屋。およそ1年前にSPOOLのレコ発で名古屋のParty'sに来た時以来、久しぶりに見ることができた。

 

cattleの「Sweet Dream,Tender Light and Your Memory」をApple Musicで

 

 アルバムからの曲を中心にやるのかと思ってたけど、EP『Slow Sailor』の曲とか、以前からの曲もかなり混ぜてきて、盛沢山だった。とはいえ、もっとアルバムの曲も聞きたかった。「Shooting Star」を聞くことができたのは本当にうれしかった。

 今回のライブ出演者の中では、一番真っ向からシューゲイザーをしてた。轟音は正義だ。もっともっと曲をやってほしかった。Pale BeachとEASTOKLABのミドルテンポで揺らぐようなライブを観たあとだったから、あっという間に走り抜けた印象がある。

 

 

 ④For Tracy Hyde

 今回のトリ、フォトハイ。自分が観るのは2回目。初めて見たのは、今年の1月に下北沢のモナレコードに見に行った時。モナレコードは名古屋で例えると、ステージの感じがTight Ropeで、キャパがRADで、内装がParty'sとかハポンに近い、そんなハコ。

 そこでみたフォトハイは「意外と繊細なバンドなのかな」という感想だった。爆音でやる演奏ではなかったし。(ただ、あのライブはキラキラした音がかなり目立っていたし、Vo.エウレカのささやくような声が楽しめたので、彼らの一つの側面がしっかり出てたように感じた。)

 個人的な話だが、EASTOKLABを観た最初の2回は、Party's(SPOOLレコ発)とハポン(ワンマン)だった。その後にPollyレコ発でアポロベースで観た時に印象がガラリと変わった。しっかりと大きい音が反響するライブハウスで観ると、しっかりシューゲイザーだと感じた。

 そんな風な体験があったから、鶴舞DAYTRIPではどんな音が聞けるだろうという、ある種の不安と楽しみを抱えていた。

 

 結果として、やはり印象が180度変わった。Vo.エウレカの歌が「こんなに声量あったのか」と思うほどしっかり聞こえたし、掻きむしられる3本のギターの音がDAYTRIPを支配していた。

 セットリストも素晴らしかった。代わる代わるバンド内でセトリを考える人を変えているらしく、今回のライブのセトリはVo.エウレカ担当とのこと。

 『冬から春になっていく』

 そんなテーマで作られていたようで、間違いなくそれを完璧に表した、これ以上ないセットリストだった。「繋ぐ日の青」が見ることができたのがこのイベントの個人的ハイライト。

 

New Young City

New Young City

  • For Tracy Hyde
  • ロック
  • ¥1681

For Tracy Hydeの「New Young City」をApple Musicで

 

 メインの最後に「櫻の園」。アンコールに「Halation」があって、完全に花見モードで終わった。DREAMWAVESという祭りに最高のエンディングだった。

 

 文句なしでDREAMWAVES初日のベストアクトだった。これが名古屋で観れたことにひたすらに感謝する。

 

 ライブの終わりに、エウレカ本人からセットリストをもらって、サインをもらえた。素晴らしい宝物になった。

 

(セットリスト)

First Regrets
Frozen Beach
ハル、ヨル、メグル
Ghost Town Polaroids
Underwater Girl
あたたかくて甘い海
麦の海に沈む果実
君にして春を想う
繋ぐ日の青
櫻の園
Halation(アンコール)

 

 

 ライブの感想は、これでおしまい。コロナウイルス、Softsurfキャンセルという痛手を負いながらも、かなり人が集まってたし、これは万全な状態で第二回を迎えたら更にすごいことになりそうだ。(第一回はまだ来週のDAY2を残しているけど)。

 

 名古屋といえば、パンク、ハードコア、エモのシーンが非常に強く、シューゲイザーのバンド、シューゲイザーのイベントが比較的に少ない。

 そんな中でもこのDREAMWAVESはこれからの名古屋でのシューゲイザーシーンを盛り上げてくれるイベントにこれからなっていってほしいと願うばかりである。

 

 本当にいい日だった。

 

 

(追記)

 この記事を完成させた夜に、悲しい知らせがあった。Day2 の Lightfoils、Fauvelyの来日ツアーの全公演を中止するとのことである。

 直前の決断であり、ギリギリのギリギリまで、この招致の主催の17歳とベルリンの壁の吉田氏、フォトハイの夏Bot氏は悩んだはずである。苦しくも決断をしたすべての人に敬意を表する。

 これは今生の別れではない。DREAMWAVESの第2回、ひいてはLightfoilsとFauvelyの初来日が更に豪華になるための布石であると信じている。

 Lightfoilsは、Airiel のリズム隊によって結成されたバンドで、17歳とベルリンの壁の吉田氏がずっと追いかけてきたシューゲイザーバンドである。もし知らない人がいたら、聞いてほしい。熱く再来日の機会を熱望して、暖かく迎えるためにも。

 Fauvelyも、Lightfoilsと共にシカゴシューゲイザーを引っ張るバンドだ。彼らの音楽も、合わせて聞いてほしい。

 

Lightfoils 1stアルバム

Hierarchy

Hierarchy

Lightfoilsの「Hierarchy」をApple Musicで

 

Lightfoils 2ndアルバム 

Chambers

Chambers

  • Lightfoils
  • ロック
  • ¥1069

Lightfoilsの「Chambers」をApple Musicで

 

Fauvely 1st EP

Watch Me Overcomplicate This - EP

Watch Me Overcomplicate This - EP

  • Fauvely
  • ポップ
  • ¥1224

Fauvelyの「Watch Me Overcomplicate This - EP」をApple Musicで

 

Fauvely 2nd EP

This is What the Living Do - EP

This is What the Living Do - EP

  • Fauvely
  • ポップ
  • ¥611

Fauvelyの「This is What the Living Do - EP」をApple Musicで

 

 

(文:ジュン)

 

 

永久不滅の臓物滴る魂の遺産・THE STALIN / STALINISM NAKED

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THE STALIN / STALINISM NAKED


THE STALINはもういない、バンドの首謀者の遠藤ミチロウももういない、この世にいないのだ。が、しかし作品は残っている。血と肉は滅び、骨が灰となっても作品は残っている。まるで人々が魂の存在は不滅であると信じるようにアーチストの死と作品の死は直結しえない個々の輝きを称え、その時に存在しているのだ。


ボーカルの遠藤ミチロウらが中心となり1980年結成されたのがTHE STALINだ。日本における80'sパンク/ハードコアのムーブメントの中核深層にありながら常に孤高でも在り続けた確信犯集団、それがTHE STALINと言えよう。


ステージから豚の頭や臓物をぶちまけ、全裸で放尿までするおぞましく強烈で過激なパフォーマンスは週刊誌にまで特集されるほど話題となるが、それはあくまでメディアを扇動し利用したまでのパフォーマンスだった。


"暴力的な変態バンド"というのはTHE STALINの本質ではない。ストレートでありながらどこか血生臭いパンク/ハードコア・サウンド、そしてなにより遠藤ミチロウの書くその皮肉とユーモアの効いた"知的なパンク"と称された歌詞に確信犯としての証拠がある。


元々「STALINISM」はTHE STALINの解散後の1987年発表された編集盤だ。1980年に発表したファーストシングルの「電動こけし / 肉」、1981年に発表されたEPの「スターリニズム」からの5曲、1984年のアルバム「Fish Inn」の通販限定で付属されたソノシート「バキューム / 解剖室」、そしてアメリカでリリースされたオムニバス「Welcome to 1984」に収録されていた「Chicken Farm Chicken」、それらがまとめられたものだった。


そして「STALINISM "NAKED"」はそれらの音源のオリジナル・マスター・テープによる初の完全復刻盤であり、ラジオ番組に出演した際の音源で「仰げば尊し」のカヴァーが追加収録されて2019年にリリースされたものだ。またアルバム全編が余計なエフェクトを除去し、一部カットされた歌詞もそのまま収録されている。


実にプリミティブで暴力的でありながら鋭い知性をはらんだ魔性の視線を研ぎ澄ませてこちらを伺っている。「STALINISM NAKED」はスタジオアルバムのようなトータル性を持ったものではない編集盤という形式であるからこそTHE STALINの一貫したそんな"本質"を強烈に嗅ぎ取ることができる作品だ。そして、それはバンドの永久不滅の魂の遺産でもあると言えよう。




 


THE STALINはもういない、バンドの首謀者の遠藤ミチロウももういない、この世にいないのだ。が、しかし作品は残っている。血と肉は滅び、骨が灰となっても作品は残っている。まるで人々が魂の存在は不滅であると信じるようにアーチストの死と作品の死は直結しえない個々の輝きを称え、その時に存在しているのだ……


(文:Dammit)

ピーキー・オヤナギが語るジャニーズ名曲選②SixTONES/Imitation Rain

 

SixTONES/Imitation Rain

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あなたはもうお聴きになっただろうか?

 

 

ご覧の通りメンバー皆ずぶ濡れである。

SixTONESは2015年に結成。メンバーはジェシー京本大我松村北斗高地優吾森本慎太郎、田中樹の6名。故ジャニー喜多川氏による命名。当初は“シックストーンズ”と発音したがその後“ストーンズ”に変更。「原石」「6つの音色」といった意味合いがある。テレビだけでなくYouTubeに積極的に露出するグループ。そんな彼らのデビュー曲がこのImitation Rainだ。

 

PVはブルーバックにCGを重ねた幻想的なシーンと、実際の水、雨、炎を使ったセットと激しいダンスが組み合わさったリアルでエモーショナルなシーンで構成されている。クールな静けさと圧倒的な熱量の激しさが同居しているのだ。静と動。

 

音の方も雨音のようなピアノの旋律が奏でられたかと思えば、静けさを切り裂くギターの音色とずっしりとしたバスドラで幕を開けるイントロからもはやシェイクスピアテンペストの始まりのような劇的なものだ。

この曲誰が作ったのかと言えばあのX JAPANYOSHIKIである。

 

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知らなかった人も納得である。

(そういえばENDLESS RAINって曲あったよね)

 

 

ヴィジュアル系的でもありジャニーズ的でもある「ガラス」「薔薇」などの歌詞のワードはヴィジュアル系とジャニーズ音楽の融合のようにも思える。

さらにはX JAPANの代表曲「紅」まで歌詞に入っているのだ。

これまでのジャニーズのデビュー曲は基本的に勢いや歌詞のトンチキさ、青さを滲ませたものであったが、SixTONESは年齢的なものも含めてまだあどけない少年ではなく成熟した大人としての売り出し方ではないだろうか。

 

YOSHIKIの作風とSixTONES自体の持つ洗練されたポテンシャルが合わさり、ジャニーズのデビュー曲らしからぬ壮大さを讃えたバラード楽曲になった。

作り手の作家性を出しつつも、彼らが最高に輝けるように作り上げる。流石と言ったところである。

試行錯誤を重ね、本来の完成の予定から半年程遅らせてたとの話もある。(「SixTONESメンバー全員に音域を調べて、元々転調はなかったが、ここまで高音がでるならと転調もいれた」「世界を目指すなら、歌詞もあえて全部英語にしようとも思ったが、それは先方から半分は日本語でお願いしますと言われた」など)

X JAPANのアルバムも出来栄えに納得が行かず最終的にお蔵入りにしてしまうYOSHIKIらしいエピソードだ。

 

 

↑レコーディング風景はこちら

 

YOSHIKIは現副社長、滝沢氏の熱心な思いと海外での活動を視野に入れたSixTONESの目標や思い描く夢に共感し、オファーを受けたそうだ。デビュー曲はエッジの効いた激しさの中に優しさや美しさも持ち合わせる、「意図的に“YOSHIKI メロディ”を取り入れた」大作に仕上げられている。

 

YOSHIKIコメント>
「滝沢さんからお話をいただいたのは、ジャニーさんがご存命の頃でした。
あまりにも自分のスケジュールが過密だったため、安易に引き受けると後々ご迷惑をかけると思い、
お断りするつもりでお会いしましたが、滝沢さんの熱心な思いに心を打たれ、また『SixTONES』が
海外でのJ-POPのイメージを一新させる可能性を秘めたグループだと確信したので、楽曲提供および
プロデュースを引き受けさせて頂きました。楽曲については滝沢さんとも話し合い、意図的に‟YOSHIKIメロディ”を取り入れました。先見の明を持つ滝沢さんのもと、メンバー個々の魅力に加え、高度な歌唱力とパフォーマンス力を持つ『SixTONES』という素晴らしいグループが今後どのように進化していくのか、とても楽しみです。
デビュー、おめでとうございます。」

 

とのことで、コメントからもその高い期待値を伺わせる。SixTONESは今後は世界に向けても今後活躍の機会を伸ばしていくことだろうと思う。

 

思えばX JAPANもそうだが亡くなられたジャニー喜多川氏も初代ジャニーズの頃から米国進出と商業的な成功は悲願であった。そんな思いも馳せてしまう。

 

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彼らの始まりを告げる文字通りの序曲として放たれたImitation Rain、日本のアイドルとして、アジアのアイドルとして彼ら自身も言うよう「デビューは通過点」でしかないのだ。

とりあえずCDもだいぶ売れたし今後はサブスク化なども期待したい。

 

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(文:ピーキー・オヤナギ)

 

コロナショックから生まれた不屈のエンターテインメント「無観客ライヴ」


世界はいま未曾有のパニック状態にある。中国は武漢より発症されたとされる新型コロナウイルスによる一連の騒動を称して「コロナショック」と呼んでいるそれだ。


誰もがこの未知のウイルスから身を守る術を、解決法を知らずに怯えて過ごしている。時にはデマに踊らされスーパーに長蛇の列を作り、最低限の防衛作のためのマスクを買うために躍起になったりしている。通りに人の姿は無く、子供たちの笑顔も曇り模様だ。そう、誰もが怯えている。身体それ以上に疑心暗鬼という人の心にまでコロナウイルスは浸透し、人々を混乱に陥れている。もしかすると「病は気から」なんていう先人の言葉は人の心にこそ病理は巣食うものだという意味があったのかもしれない等と考えてしまうほどに人々の心の衰退は著しい。


だからこそ、こんな時だからこそ音楽は必要だ。何よりもエンターテイメントそれ自体がとても重要かつ必要なものだ。しかし、悲しいかなコロナショックの余波はエンターテインメント業界にまで押し寄せてきているのも事実だ。


コロナショックによるアーチストらのライヴやコンサート等のイベントでのそれぞれの対応に注目が集まっている。ライヴやコンサート等のイベントの規模が巨大であればあるほど動く人間とお金が発生する。それに伴う中止やキャンセルによる破格の金銭や人員的な損害、しかし、コロナウイルス拡散の脅威に背に腹はかえられず苦心の果てに中止やキャンセルとなるケースも多いのが事実だ。確かにコロナウイルス拡散の予防には繋がるやもしれないが、その分の損害は金銭や人員それと同等もしくはそれ以上に精神的にもアーチスト自身とそしてファンに負担として大きく降りかかっている。


人には心がある、窮地のこんな時代だからこそ"拠り所"を求めている。そんな"拠り所"となりうるエンターテイメントがそれら自体が窮地にあるようにも思える、この状態をより感覚的に察知している人はたくさんいるはずだ。


しかし、一部のアーチストらにはアーチストという職業柄からセンシティブな面を保持にしながらそこからより強靭にアーチストとして突き抜けた"返答"をする連中もいる。それは「無観客ライヴ」の実施と配信を行うアーチストらのことである。


ムーブメントとまではいかないが、一つのトレンドにもなりそうなこの「無観客ライヴ」の実施と配信は奇しくもより今の時代性にコミットした形式として発展する可能性を秘めていると俺は考えている。「無観客ライヴ」だからこそのパフォーマンスも開拓の余地があり、まだまだ面白味があるのではなかろうか。


何よりもこの「無観客ライヴ」という形式からは人類の不屈のエンターテインメントの気骨と意思を感じる。ウイルスごときに人の娯楽は、喜びは止められはしないのだという気骨と意思を感じるのだ。実施される背景は基本的に好ましいものばかりではないが、窮地にありながら逆ギレに近いような勢いで生まれたこの新しいエンターテインメントスタイルを好意的に楽しむことこそコロナウイルスがもたらした直接的な病理以上に膨れ上がった醜悪な疑心暗鬼に勝利する人類の叡知の剣とは言えまいか。



確かにコロナウイルスとそれに伴ったコロナショックは恐ろしい存在だ。けれどもこの世界にはエンターテインメントがある。


「いつも心に音楽を…」


(文:Dammit)

歌姫不在の時代にアジアの元祖歌姫を思う。

 

このサイトで何か一つ記事を書くのも久々だ。久々の皆様との再会に謝辞を。初めての方には初めましての挨拶を述べさせて頂きたい。音楽や漫画、アニメが好きなオタクの戯言をまた、書き連ねていくが何卒、寛大なお心で読んで頂けるとありがたい。当方、メンタルは豆腐なもので…。

 

まず最初に怠惰で偏屈な自分をまた、音楽レビューの世界に誘ってくださった友人のDammit氏に感謝を述べたい。氏の誘いがなければ再びこのように真剣に音楽の真髄に関して自分が思考を巡らせることもなかった。感謝してもしきれない恩人である。ありがとうございます。

 

さて、前置きはここまでにして、タイトルの歌姫不在とは…まさに昨年に年号も変わり、令和の世となった今。歌姫という存在が日本にいるかというぼんやりとした疑問である。平成の歌姫・安室奈美恵が令和を迎える前に引退し、同じく平成にカリスマ歌姫として鳴らした浜崎あゆみはプライベートでの芸能ゴシップや自伝的著作の発売での話題など、いまいち本業での取り上げられ方が微妙である。それでも未だ根強いファンがいるのがカリスマたる由縁か。余談ではあるが非常にお若い人気タレントのゆきぽよさんがあゆの歌をカラオケで良く歌うとの趣旨の発言をテレビでされていて、未だにマイルドヤンキー感の強いギャルの間では響く存在なのは間違いない。

 

昭和に国民的歌手、歌姫として君臨したのは美空ひばりである。まだ子供の頃から天才歌手として知名度を上げ、戦後の焼け跡のラジオから美空ひばり笠置シヅ子の歌声が流れてくるシーンというのはまさに戦後復興の忘れ難い一コマだったに違いない。

 

その後、山口百恵(彼女はアイドルから歌姫への成長という新しいスタイルを提示した)やアジアからはテレサ・テンが登場し、女性が歌う歌謡曲の大きな波がまさに日本全体を元気にしていった。しかし、我々は美空ひばりテレサ・テンといった巨人たちに大きな影響を与えたとある歌手がいたのを知っている。いや、歌姫を語る上で知らねばならない。彼女の名は李香蘭。本命は山口淑子。日本人でありながら中華風の芸名を名乗り、日本、満洲国、中華民国、香港とアジアを股にかけて活躍した元祖アジアの歌姫である。

 

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彼女の音楽的バックボーンはまさに生まれ育った満洲の風土がそのまま彼女に受け継がれている。これすなわち、日本、中華、ロシア、西洋の和洋露中折衷とでもいうべき幅広い音楽的素養が彼女を日本人初のアジアスターへと押し上げた。日本語と中国語のバイリンガルでどちらもネイティブの歌い方が出来、アジア的な美人である彼女はまさに五族共和の象徴とでもいうべき存在だった。

 

結局、戦争の終結により満洲国は無くなり、日本は大陸から利権を一切手放し、李香蘭も日本へと帰ってくるのだが、彼女の歌は今でも日本以上に中国、台湾はもとより東南アジアでも歌い継がれている。戦後日本が音楽の大衆性のソースを西洋に求め始めたのに対して、アジアの人々は、大東亜共栄圏という途方もない理想を夢見た大日本帝国の一つの理想であり、誰よりもアジア的な知見があり、優しい女性である李香蘭を愛し続けたのだ。なんとも、美しく儚い話ではないだろうか…

 

元祖歌姫李香蘭はその後、日本で芸能活動をしたり国会議員として精力的に活動する。しかし、晩年の彼女の写真や動画を見て思う個人的な感想は、複雑な時代を生き抜き、数奇な人生を過ごした天才歌手というよりは、なんだかアジアに縁のある普通の女性というものだ。激動の時代に国や世界に時には振り回されながらも生き抜いた奇跡の女性の最期は静かなものだった。2014年に94歳という大往生を遂げた。生きた歴史がまた、一つ失われた瞬間だったに違いない。

 

遠藤誉先生のこの記事にも詳しいが戦後の大陸の人々はテレサ・テンを通じて李香蘭の歌を知っている。

 

アジアの歌姫のバトンタッチのようで筆者はなんとも感動を覚えてしまう。しかし、文中にもあるように、残念ではあるが共産主義の国においては李香蘭テレサ・テンといった優れたアジアを股にかけ活躍したアイコン的歌手は、利用されたり簡単に弾圧されてしまうのも事実。ただ、歌が上手く素晴らしい歌姫で終われない時代があったことも忘れてはいけないのではないだろうか。いかに、カルチャーの力が全体主義の世界に於いて脅威か。そして、また、時にはそれを利用しようとする社会主義の恐ろしさに背筋が寒くなる限りだ。

 

話は最初の疑問に戻るが、今の時代に歌姫となる太公望と言うべき人はおそらくネットから現れる。米津玄師がまさにネット発のバンドマン的アティテュードのミュージシャンかつ自分が生まれた場所や時代に楔を打ち込んで次のステップへと駆け上がっていった。有象無象の上手い歌い手に終止符を一旦打てるまだ見ぬカリスマこそが次なる令和の歌姫となる。そしてその人は李香蘭のように多彩なバックボーンが必要となるであろう。シンプルに歌がうまいだけでは利用される時代からシンプルに歌が上手いだけでは埋没してしまう時代への移り変わりは平和で豊かさの証左ではあるがなんとも難しく、ワンアンドオンリーの難しい時代だとも感じる。令和の世は李香蘭を超える日本発のアジアの歌姫の登場を期待したいものだ。

 

結びに変えて個人的李香蘭のおススメの曲を三曲選んだので、興味があれば聴いて欲しい。ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

 

 

 


(文:ジョルノ・ジャズ・卓也)

 

【ライブレポ】2020.2.29.超笹祭(太平洋不知火楽団,うみのて,呂布カルマ,笹オケ,NEW OLYMPIX,spo-kyz)

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笹口騒音率いる太平洋不知火楽団のレコ発ライブであり、笹口さんの他の3バンド(うみのて、笹口騒音オーケストラ、NEW OLYMPIX)も出演するスペシャルなイベント。しかも、オープニングゲストのspo-kyzに加えて、スペシャルゲストに呂布カルマ! 開演前のSEは森高千里が流れていた。

以下、各アクトの感想を書く。添える動画は過去のライブのものやMVです。



・spo-kyz

 

 

オープニングを飾るのは、ナニワのピンク・フロイドことspo-kyz。

僕と笹口さんの問題意識は近いところもあって、今の日本の音楽には悪魔的な音楽を演奏するバンドが少ないってこと。脳味噌をダークに染め上げ、ハラワタからグッとくるような音楽ね。

spo-kyzは緩やかなbpmの上で妖しく歌っていた。男性ボーカルも女性ボーカルも妖しいし、ベースの奏でるリフもハーメルンの笛吹き男のように妖しい。音が爆発するところは、悪魔の決起集会といった趣き。その中でもフサフサのウサギの被り物をしたバイオリニストの奏でるバイオリンが天まで響くように美しかった。最後にギターボーカルが自身のギターを抱えながら転げ回る姿は何かに祈っているような真摯さがあった。

踊ってばかりの国が好きな方なら、ハマりそう!



・笹口騒音オーケストラ

 

 

「おんがくのじかん」でスタート。「A.I.」など名曲を挟みつつ、「バードマン」「世捨て人になっちまっただ」など新曲を披露。最後に演奏した「名曲の描き方」はやっぱり良かったなぁ。鉄壁のリズム隊の演奏も、ホーンセクションもアコーディオンも、もちろん笹口さんのウクレレやギターも気持ち良かった!

「世捨て人になっちまっただ」では自分もいともたやすく世捨て人になった気楽さで聴くことができる。あー、働かないで毎日宴会なんて、最高だー!

そこには、天使的な音楽の多幸感があった。清らかさと愉しさで僕の心は弾む。悪魔的と天使的の音楽性の振り幅こそ、笹口さんの凄まじさだ。

重大発表とは、5月に上野の野外水上音楽堂で投げ銭ライブをし、そこでニューアルバムも出るということ! これは楽しみ!



・NEW OLYMPIX

 

 

相変わらず鬼気迫っている「もはや平成ではない」からスタート。今回の新曲は「歌を残したい」かな。どの曲もめちゃくちゃカッコ良かった!

特に森岡さんのギターが安定感あって、エフェクターを使った幽玄を感じさせるような音色も最高! 大内ライダーさんのベースもニューオリンピックスに馴染んできた感じ。ラストは「?」。この曲はNEW OLYMPIXのマニフェストのような曲なので、呂布カルマ目当てに来た方にも刺さってくれていたら嬉しい。



呂布カルマ

 

 

MCでは笑いを取りながら、ラップであらゆるものをディスりながら、表現者として、ラッパーとして真摯な姿をそこに見た。ファンになってしまいそう。

「ヤングたかじん」、カッコ良かったなぁ。新曲も良い。身体に響く重低音が心地よく、それに乗る呂布さんのラップも素晴らしく、とても気持ちの良い時間だった。

ただ、「フェミニズム、ブス」とディスっていたことが引っ掛かったんだけど、お行儀良くフェミニズムを肯定するよりも、ディスる方が呂布さんらしいと納得がいった。(行き過ぎたフェミニズムは問題だけど、フェミニズムには女性の権利や自由を推し進めてきた意義や歴史があると僕自身は思っている。)どんなこともディスったり、嫌ったりする自由があるよね。その自由を呂布さんのラップには感じたな。そのディスが気に入らなくても、心の根っこでは通じる部分があるから呂布さんのファンになれるよ。あー、クールコアなラップがヤバカッコ良かった!

笹口さんの一人称が「私」というのがチャームポイントだというMCもあった。確かにそうですね!



・うみのて

 

 

本日のベストアクト。

サポートに電子パッドのころさんを入れて7人体制のうみのて。これは最初から「MUTEKIの歌」を演奏するつもりか…!と思っていたら、そうだった。呂布さんが客演でステージに乗ってラップを披露する。

その後も様々な曲を演奏したが、旧・うみのての代表曲は演奏しないストロングスタイルだった。「砂漠です」はやはり名曲だなぁ。エロくて可愛い女の子に出演してもらって良いMVにしていただきたい。

終わる頃には、僕はもうほとんど感動してしまった。6人のうみのてのメンバーそれぞれの凛とした姿がまぶしかった。シン・うみのての「21st Century Soundtrack」も素晴らしいね! 光り輝いていた。

 

 

太平洋不知火楽団

 

 

今日レコ発の太平洋不知火楽団。「八百屋」からスタートし、新たな代表曲の「売春歌」を披露する。楽譜で表記するのは不可能と言ってもよい笹口さんのギターのニュアンス。イカレてるけどイカしてる。大内ライダーのステージアクションもド派手だったし、ツガネさんのドラミングもパワフルだった。最後の「ADHD」に笹口さんの音楽を好きなリスナーのアイデンティティが記銘されていた。病気か、病名はついていないがどこかしらビョーキなのだ。つまりは、多数派に馴染めない少数派。

最初から最後まで直線的に流れるように続くライブで、元気をもらった。瞬発力といったら、太平洋不知火楽団! 今日買ったCDも近いうちにレビューします。

 


・YAOAY(笹口騒音)

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↑バンドver.ですが…。

「うるう年に生まれて」を弾き語りで披露。「音楽を鳴らして あなたの声を聞かせて」という最後の歌詞には、音楽を鳴らし、ツイッター上やネット上の反応を求める笹口さん自身が映り込んでいた。覇気があり、真に迫る演奏に、ライブハウスの観客が丸ごと吸い込まれていった。



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2/29土@西永福JAM

笹生誕9才記念
超笹祭

出演
YAOAY(a.k.a.笹口騒音)
太平洋不知火楽団
うみのて
笹口騒音オーケストラ
NEW OLYMPIX

SG:呂布カルマ
OG:spo-kyz

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↑ステージ上に置かれていた目玉おやじ

 

 

(文:遊道よーよー)

 

寡作の天才 George Michael

 

みなさん、George Michaelはご存じでしょうか。

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この質問を僕の同じくらいの年代の人にすると

高確率で「誰?」って返されます。

でも

Wham!ってグループ知らない? そのグループでLast Christmas歌ってた人なんだけど」と聞くと

「あぁ、あの曲歌ってる人ね!」と返ってきます。

 


Wham! - Last Christmas (Official Video)

 

George MichaelとAndrew Ridgeleyによるイギリス発のポップグループ Wham!

彼らは日本でも大人気で、中でもLast ChristmasはレコードとCDの合算でミリオンセラーを突破しています。

クリスマスシーズンになると街中でよくかかってますし、クリスマスのスタンダードソングとして定着した感すらありますね。

 

またGeorge MichaelWham!在籍時にソロで出した「Careless Whisper」は

西城秀樹郷ひろみにカバーされて、それぞれヒットを飛ばしており、日本でのWham!の認知度は高いと思われます。

あ、そういえば映画「デッドプール」のエンディングでも流れてましたこの曲。


Wham! ~ Careless Whisper -- Deadpool

 

 

 

ではGeorge Michaelが今、知られてないのはなぜか?

それは彼がWham!解散後に本格的にスタートさせたソロ活動がその音楽的な成功とは裏腹に活動自体が順調とは言えなかったから。

(あとあんまり日本に来てくれなかったから笑)

 

2ndアルバム「LISTEN WITHOUT PREJUDICE VOL. 1」を巡るレコード会社との泥沼裁判、その影響で中止になった「VOL.2」のリリース。

裁判の長期化(結果は敗訴)で6年の歳月を経てようやくリリースされた3rdアルバム「Older」。

ようやくしがらみから解放されたと思ったのも束の間、1998年に公然わいせつ罪で逮捕、ゲイであることのカミングアウトして音楽以外の部分で注目を集めてしまう。

その後、恋人と母親との別れによる創作のスランプから復帰して2004年に8年ぶりにリリースされた4thアルバム「Patience」。

そして「Patience」を最後に彼が2016年に亡くなるまでオリジナルアルバムは発表されませんでした。 

 

Patience

Patience

 

 

 

全世界トータルセールス1億枚越えという華々しい功績とは比べ物にならないほど困難な道のりだった彼のソロ活動

天才的なソングライティング力とヴォーカルを兼ね備えているのにも関わらず、

身に降りかかった様々な困難、そして本人の完璧主義が重なって30年以上のキャリアの中で残したアルバムはわずか数枚。

まさに寡作の天才と言うべきでしょう。

 

2000年代はベストアルバム「Twenty Five」を出して、数十年ぶりにツアーを行ったものの、日本での公演は1991年が最後、それ以外でも2005年にドキュメンタリー映画ジョージ・マイケル 素顔の告白」でプロモーション来日したのが最後。

言ってしまえばソロデビュー後はWham!の頃に比べると日本と接点がかなり少なくなってしまっています。

特に僕と同世代(20歳前後)の人なら音楽に興味が無いとまずGeorge Michaelを知る機会が無いですよね…2000年代はあんまり曲出してないし、ライブをしに来日すらしてないんだもん。

 

 

 

同じMichaelの名前を持ち、寡作の天才でもあったMichael Jacksonも2000年代は真偽の定かでないゴシップネタとマスコミによる誹謗中傷のせいで不遇な時期を過ごしていました。

2009年にThis Is Itツアーでの音楽復帰を高らかに宣言。ツアーの開催は彼の急死で叶いませんでしたが、その死によってようやく音楽的に再評価されました。

 

George Michaelに関しては音楽の制作はしているという情報はあったものの、ほぼ引退に近い状態で話題になるのもゴシップネタばかり。

リスペクトを表明するアーティストも増えてきた中ではありましたが、音楽的な話題が無い中で亡くなったのでその後、音楽的な再評価はあまり為されなかったような気がします(特に日本では)。

 

 

そんな彼が最後に遺したのはライブアルバム「Symphonica」でした。

 

SYMPHONICA

SYMPHONICA

 

 

 本人の楽曲とカバー曲を40人編成のオーケストラをバックに披露するライブアルバムで4thアルバム「Patience」から約10年ぶり。作品毎にリリーススパンが開いていく寡作っぷり(笑)

日本では国内盤が出てません。もはやリリース自体知られてなかったんじゃないか疑惑がありますが、知られないのがもったいないほどに素晴らしい内容。

ヴォーカリストとして自身のヒット曲のみならず、スタンダードソングを自身の解釈を交えて巧みに歌いこなす様はまさに圧巻

 

ソングライターとしての彼も天才ですが、個人的に彼はヴォーカルが一番素晴らしいんじゃないかと。

40人編成のオーケストラがバックにいるのでサウンド自体がかなりゴージャスなんですけど、そのオーケストラを前にしても彼のヴォーカルが圧倒的な存在感を発揮。

そして寡作ではあったけど、重ねてきた年数は無駄ではないということを感じさせる味のあるヴォーカルを聞かせてくれます。

Wham!しか知らない人は成熟した大人の歌い方を聞かせてくれる今作はビックリするんじゃないかなと思います。

 


George Michael - Let Her Down Easy

 

このアルバムに関してはググってみても感想を上げたり、レビューしてるサイトやブログが少ない。やっぱり知られてないのかなぁ・・・と悲しい気持ちになります。

それがこの記事を書いてる一因でもあるんですけども、やっぱり何事もきっかけが必要ですよね。George Michaelは落ちぶれたわけではなくて、凄いのに日本では知られてないだけですし。

この記事が再評価のきっかけに、なんて大それたことは言うつもりは無いですけどGeorge Michaelというアーティストに興味を持つきっかけの1つになれればいいなと思います。 

 

 

 最後にライブの名演を2曲ほど…


George Michael - Freedom '90

 


Queen & George Michael - Somebody to Love (The Freddie Mercury Tribute Concert)

 

 

(文:Showta@)