寡作の天才 George Michael
みなさん、George Michaelはご存じでしょうか。
この質問を僕の同じくらいの年代の人にすると
高確率で「誰?」って返されます。
でも
「Wham!ってグループ知らない? そのグループでLast Christmas歌ってた人なんだけど」と聞くと
「あぁ、あの曲歌ってる人ね!」と返ってきます。
Wham! - Last Christmas (Official Video)
George MichaelとAndrew Ridgeleyによるイギリス発のポップグループ Wham!。
彼らは日本でも大人気で、中でもLast ChristmasはレコードとCDの合算でミリオンセラーを突破しています。
クリスマスシーズンになると街中でよくかかってますし、クリスマスのスタンダードソングとして定着した感すらありますね。
またGeorge MichaelがWham!在籍時にソロで出した「Careless Whisper」は
西城秀樹や郷ひろみにカバーされて、それぞれヒットを飛ばしており、日本でのWham!の認知度は高いと思われます。
あ、そういえば映画「デッドプール」のエンディングでも流れてましたこの曲。
Wham! ~ Careless Whisper -- Deadpool
ではGeorge Michaelが今、知られてないのはなぜか?
それは彼がWham!解散後に本格的にスタートさせたソロ活動がその音楽的な成功とは裏腹に活動自体が順調とは言えなかったから。
(あとあんまり日本に来てくれなかったから笑)
2ndアルバム「LISTEN WITHOUT PREJUDICE VOL. 1」を巡るレコード会社との泥沼裁判、その影響で中止になった「VOL.2」のリリース。
裁判の長期化(結果は敗訴)で6年の歳月を経てようやくリリースされた3rdアルバム「Older」。
ようやくしがらみから解放されたと思ったのも束の間、1998年に公然わいせつ罪で逮捕、ゲイであることのカミングアウトして音楽以外の部分で注目を集めてしまう。
その後、恋人と母親との別れによる創作のスランプから復帰して2004年に8年ぶりにリリースされた4thアルバム「Patience」。
そして「Patience」を最後に彼が2016年に亡くなるまでオリジナルアルバムは発表されませんでした。
全世界トータルセールス1億枚越えという華々しい功績とは比べ物にならないほど困難な道のりだった彼のソロ活動。
天才的なソングライティング力とヴォーカルを兼ね備えているのにも関わらず、
身に降りかかった様々な困難、そして本人の完璧主義が重なって30年以上のキャリアの中で残したアルバムはわずか数枚。
まさに寡作の天才と言うべきでしょう。
2000年代はベストアルバム「Twenty Five」を出して、数十年ぶりにツアーを行ったものの、日本での公演は1991年が最後、それ以外でも2005年にドキュメンタリー映画「ジョージ・マイケル 素顔の告白」でプロモーション来日したのが最後。
言ってしまえばソロデビュー後はWham!の頃に比べると日本と接点がかなり少なくなってしまっています。
特に僕と同世代(20歳前後)の人なら音楽に興味が無いとまずGeorge Michaelを知る機会が無いですよね…2000年代はあんまり曲出してないし、ライブをしに来日すらしてないんだもん。
同じMichaelの名前を持ち、寡作の天才でもあったMichael Jacksonも2000年代は真偽の定かでないゴシップネタとマスコミによる誹謗中傷のせいで不遇な時期を過ごしていました。
2009年にThis Is Itツアーでの音楽復帰を高らかに宣言。ツアーの開催は彼の急死で叶いませんでしたが、その死によってようやく音楽的に再評価されました。
George Michaelに関しては音楽の制作はしているという情報はあったものの、ほぼ引退に近い状態で話題になるのもゴシップネタばかり。
リスペクトを表明するアーティストも増えてきた中ではありましたが、音楽的な話題が無い中で亡くなったのでその後、音楽的な再評価はあまり為されなかったような気がします(特に日本では)。
そんな彼が最後に遺したのはライブアルバム「Symphonica」でした。
本人の楽曲とカバー曲を40人編成のオーケストラをバックに披露するライブアルバムで4thアルバム「Patience」から約10年ぶり。作品毎にリリーススパンが開いていく寡作っぷり(笑)
日本では国内盤が出てません。もはやリリース自体知られてなかったんじゃないか疑惑がありますが、知られないのがもったいないほどに素晴らしい内容。
ヴォーカリストとして自身のヒット曲のみならず、スタンダードソングを自身の解釈を交えて巧みに歌いこなす様はまさに圧巻。
ソングライターとしての彼も天才ですが、個人的に彼はヴォーカルが一番素晴らしいんじゃないかと。
40人編成のオーケストラがバックにいるのでサウンド自体がかなりゴージャスなんですけど、そのオーケストラを前にしても彼のヴォーカルが圧倒的な存在感を発揮。
そして寡作ではあったけど、重ねてきた年数は無駄ではないということを感じさせる味のあるヴォーカルを聞かせてくれます。
Wham!しか知らない人は成熟した大人の歌い方を聞かせてくれる今作はビックリするんじゃないかなと思います。
George Michael - Let Her Down Easy
このアルバムに関してはググってみても感想を上げたり、レビューしてるサイトやブログが少ない。やっぱり知られてないのかなぁ・・・と悲しい気持ちになります。
それがこの記事を書いてる一因でもあるんですけども、やっぱり何事もきっかけが必要ですよね。George Michaelは落ちぶれたわけではなくて、凄いのに日本では知られてないだけですし。
この記事が再評価のきっかけに、なんて大それたことは言うつもりは無いですけどGeorge Michaelというアーティストに興味を持つきっかけの1つになれればいいなと思います。
最後にライブの名演を2曲ほど…
Queen & George Michael - Somebody to Love (The Freddie Mercury Tribute Concert)
(文:Showta@)