出前寿司Records

よりどりみどりの音楽カルチャーサイト

怠惰なギターに溺れる - Ulrika Spacek

 

最近、なんとも気怠げなバンドを見つけた。ロンドンを拠点に活動する、その名もUlrika Spacek(ウルリカ・スペイセク

 

f:id:delivery-sushi-records:20200304185607j:plain

 

Spotifyのオススメにてきて、その初見では読めないバンド名とジャケットのアートワークに「ときめき」を覚えた。それで思わず再生した瞬間、これは来たぞ、と。 

「再生」という言葉はとても良い。それまでは、少なくとも自分にとっては眠っていた音楽を、自分の手で「再び生かす」という行為、それが「再生」である。そんな感動を久々に与えてくれたのがUlrika Spacekだったわけだ。

 

バンドは2014年に結成。トリプル・ギター編成の5人組だ。一部のメンバーは前身バンドを含めると2002年頃から活動していたらしい。これまで2枚のアルバムと1枚のEPをリリースしている(2020年3月現在)。デビュー・アルバムとなったのは、2016年の『The Album Paranoia』。

 

 

このアルバムについて、「乾燥剤を頬張ったSpacemen 3みたいなサウンド」と評されているのを見つけて思わず笑ってしまった。言い得て妙、である。

 

 

そう。このバンド、とにかくアルバム全体から漂う倦怠感とサイケデリックサウンドがクセになる。調べると、よく「クラウト・ロック」のバンドだと紹介されていることが多いようだが、どちらかと言えば、それこそSpacemen 3やDeerhunter、Sonic Youthなど、US/UKのサイケデリック・ロックシューゲイザー〜インディー・ロックの影響が強いような気がしてならない。

ギターの音色は砂漠のように乾いており、形の定まらないヴォーカルは煙のようにゆらゆらと立ち昇っていく。このサウンドが引き起こす酩酊感が、もうたまらないのだ。

 

そのサイケデリックな音像を踏襲しつつ、より洗練されたようなサウンドを聴かせたセカンド・アルバム『Modern English Decoration』も素晴らしい。「ときめき」を覚えたのはこのジャケットだった。

 

 

昼下がり、食事を終えた後ソファーに深く沈み込み、気付いたら微睡んでいる…。彼らの音楽を聴いているとそんな感覚に陥る。そこから抜け出すには強い意志が必要だ。つまり一度その心地良さを知ってしまったら、深い。

 

あるいはその感覚は、ドラッグ・カルチャーに結びついたような、もっと危険な香りがするかもしれない。そう言った点では、ヒッピー・ムーヴメントやドラッグと強い結びつきがある「クラウト・ロック」を引き合いに出すことにも合点がいく。何を隠そう、彼らはカリフォルニアの音楽フェス、Desert Daze(デザート・デイズ)にも出演経験があるのだ。

デザート・デイズと言えば「サイケデリック・ロックの祭典」であり、そこかしこからマリファナの匂いが立ち込めているというある種の「桃源郷」のようなフェスだ(カリフォルニアでは大麻は合法)。彼らが出演した2018年はTame ImpalaやSlowdive、Warpaint、さらにはMy Bloody Valentineも名を連ねている。

砂漠で行われるフェスで、砂漠のように乾いたギター。これがマッチしないはずがない。

 

 

気になった方は、是非彼らの怠惰なギターに溺れてみてほしい。

 

よろしければこちらも是非。僕が運営しているシューゲイザー専門サイト『Sleep like a pillow』にて、彼らのディスクガイドを書きました。

 

 

(文:おすしたべいこ)

 

ピーキー・オヤナギが語るジャニーズ名曲選①SMAP/がんばりましょう

 

初めまして。ピーキー・オヤナギが語るジャニーズ名曲選ということで始めさせて頂きたいと思います。

 

さて、今回紹介するのは1994年発表のSMAPの名曲「がんばりましょう」。

f:id:delivery-sushi-records:20200301222234j:image

この楽曲はジャニーズで初めてサンプリングを導入した楽曲である。


音楽におけるサンプリングとは、過去の曲の一部のメロディーラインや音源を引用し、その音を再構築して新たな楽曲に取り入れる技法のこと。主にアメリカのヒップホップ・R&Bで積極的に取り入れられ、90年代初頭から日本のメジャーシーンでも使われるようになった。

 

90年代は日本でも小沢健二スチャダラパーによる「今夜はブギー・バック」(1994年)や電気グルーヴの「Shangri-la」(1997年)などがヒットを飛ばしている。渋谷系やその周辺のアーティストと共振するようにこの曲もまたサンプリングが大胆に使われている。アイドルソングの歴史に燦然と刻まれることとなった。


同曲において、まずイントロに使われているのが、アメリカのアーティスト・プリンスが91年に発売したアルバムに収録されている楽曲「Gett Off」の一部である。

 

 

f:id:delivery-sushi-records:20200301222735j:image

 

歌舞伎の声ネタも入った「がんばりましょう」の印象的なイントロは、サンプリングの賜物なのである。そしてそれ以上に大胆にそのまんま使われているのが、70年代終盤から80年代初頭にかけて活動したソウルユニット・niteflyteの1曲「You Are」だ。

 

 

 

f:id:delivery-sushi-records:20200301222903j:image

 

niteflyteは米・マイアミ出身のディスコ/ファンク/ソウル・グループ。サンディ・トレノとハワード・ジョンソンを中心に結成。1979年にセルフ・タイトル作「ナイトフライト」(邦題「夢のマイアミ・ナイト」)でアルバム・デビューし、シングル「イフ・ユー・ウォント・イット」が全米37位とヒットを記録。81年に2ndアルバム「ナイトフライト2」を発表。「You Are」は同作に収録。

同ユニットは、その活動期間は短いものの、発売した2枚のアルバムにはソウルファンにとって馴染みの深い名曲が複数収められており、あの久保田利伸も憧れのアーティストとしてその名を挙げる、知る人ぞ知るユニットだ。「You Are」も、特別ポピュラーな曲というわけではないが、ソウルミュージックファンには思い入れの深い1曲。

「がんばりましょう」のサビの最初のフレーズ「Hey Hey Hey Girl どんな時も」という部分は、この「You Are」の同じくサビの最初のフレーズ「Hey, hey, hey you are all the reasons why」という部分のメロディーラインをサンプリングし、ほぼそのまま使用している。これにより、「がんばりましょう」は、(当時の)若い女性ファンだけでなく、ソウル好きの音楽通の人たちまでハッとし、ニヤリとするエッセンスの入った1曲となった。


1970年代ソウルと1990年代アイドル・ポップスの融合というのは、まさに当時大いなる挑戦であったと思う。

それだけチャレンジ精神にあふれた実験的な曲だ。
実際にこれ以降、J-POPにサンプリング技法は増えていったという。
だからこそ「がんばりましょう」はJ-POPの歴史的にも意義のある1曲として評価したい。

 

そしてもう一つ特筆すべきは歌詞である。それまでのジャニーズソングと言えば憧れの王子様やスターの視点からの恋愛ソングが歌われたものが多かった。しかしながらこの曲、一般人の視点で歌われている。しかも情けない日々にも挫けない日常を生きる人々の歌だ。

 

かっこいいゴールなんてさ
あッとゆーまにおしまい
星はひゅるっと消えていた
また別の朝だった

ジリリ目覚ましが鳴り 血圧はどん底
寝グセだらけの顔で なんだかなぁ もう

Hey Hey Hey Girl
どんな時も くじけずにがんばりましょう
Hey Hey Hey Boy
かっこわるい 朝だってがんばりましょう

 

辛い毎日にこの歌で救われた人も多いだろう。

そう、SMAPはジャニーズのアイドルという鎧を脱ぎ捨てて一般の視点に立てた新しいアイドルだったのだと思う。現にSMAP木村拓哉を筆頭にドラマでの成功、SMAP×SMAPなどのバラエティの本格的な進出により90年代の若者像を背負うことになる。

 

f:id:delivery-sushi-records:20200301222334j:image

 

 

(文:ピーキー・オヤナギ)

 

そのバンド名に偽り無し!その音に偽り無し!〜 東京初期衝動 / SWEET 17 MONSTERS ~

f:id:delivery-sushi-records:20200218200142j:plain
東京初期衝動 / SWEET 17 MONSTERS


まず、なんて鮮烈なバンド名だろう…そしてその名に偽り無く純粋に熱くがむしゃらで真っ直ぐを目指すがあまりに歪に尖って、それでも前へ前へと転がる様は聴き手の心を熱く強く掴んで離さない…


シティ・ポップのようなスマートなサウンドが持て囃される昨今の潮流とは対極の位置に東京初期衝動というバンドは存在する。ガレージ・パンク・サウンドを主体としたかつての青春パンク・ブームを彷彿とさせるようなそのサウンドは、流行などを完全に無視したものだ。だからこそ、ブルーハーツ銀杏BOYZのフォロワーとしての真摯なロックンロールを望まれ、それに応じている東京初期衝動は最高に熱いパンク・ロックンロール・バンドなのだ。


バンドは2018年に椎名ちゃん(Vo・Gt)、希(まれ)(Gt)、かほ(Ba)、なお(Dr)の4人で結成される。翌年には自主レーベルであるチェリーヴァージン・レコードから1st EDシングル「ヴァージン・スーサイズ」を発表している。そして早くも同年、ここで紹介する1stアルバム「SWEET 17 MONSTERS」を発表した。


徹頭徹尾純度120%の東京初期衝動というバンドが、ロックンロールがこのアルバムには詰まっている。1st ED「ヴァージン・スーサイズ」にも収録された「再生ボタン」からアルバムは始まり、同時にそのボルテージはいきなり最高潮に達する。この熱さと温かさが混在すること無く、各々が情緒を描く多彩な要素としてあるのもこのバンドの魅力であり、バンドの繊細な面がうかがえるところでもある。そんな事を書いた後に繊細さの欠片も許さないような"某・高収入の求人"の曲を引用したパンクナンバー「高円寺ブス集合」の破壊力は凄まじく完全破壊の爽快感で突き抜けている。かと思えば「流星」のどこか胸を打つ愛らしさの瞬きがあったり。ギャルのポジティブなエネルギーをそのままラモーンズでパーティーさせた「黒ギャルのケツは煮玉子に似ている」。そしてなんとも切なくてやるせないラブソング「チューペット」。HOLiDAYSのカバー「YOUR WORLD」。バンドの情緒描写が実に鮮やかに炸裂している「BABY DON'T CRY」。ロックンロール・アルバムにおける最高に完璧なエンディングを飾るべくして鳴り響き渡る為に生まれたような最高の一曲「ロックン・ロール」…


バンドのフロントの椎名ちゃんの破天荒なアクションに目を奪われがちだが、"ガールズロックバンド"という呼び方は彼女らには不要だ。実にシンプルにパンク・ロックンロール・バンドとして呼ぶに相応しい姿を鳴らしている4人組だ。そして東京初期衝動はいつまでのその名に偽り無く輝き続けて欲しいバンドだ…


"再生ボタン"(MV)


"BABY DON'T CRY"(MV)


"ロックン・ロール"(MV)


(文 : Dammit)

アンダーグラウンドの深海で息づく艶やかなるバンド ~ TAWINGS / TAWINGS ~

f:id:delivery-sushi-records:20200214222833j:plain
TAWINGS / TAWINGS


先ずは『出前寿司Records』復活おめでとうございます。俺、Dammitは旧構成員の一人として時々ではありますが、寄稿による組織の発展に助力したい所存です。

 

さて、今回の紹介するアーチストはこちら……

 

2016年にCony Plankton (vo, g) が、eliy (ba) 、Kanae (perc, vo, g) を誘い結成。その後に、Yurika (dr) が加入しTAWINGS(トーイングス)はスタートする(ちなみに現在はKanaeが脱退し三人体制のバンドとなっている)。

 

過去に7インチやカセットテープ、コンピレーション等のリリースがあるが、アルバムとして纏まった作品で尚且つCD媒体によるものは今回が初めてとなる彼女たち。そんな今回の1stアルバム『TAWINGS』は、これまでのバンドの"最初の集大成"とでも言うような、これまでリリースされた音源を含む全8曲入りの作品となっている。

 

一口にオルタナティブロック・バンドと言ってもその中身は様々にあって、このTAWINGSも例外ではなく、そのサウンドはガレージロックにニューウェーブ、ポストパンクを標榜しつつも、それらのジャンル一つ一つに対するスタンスは一癖はらんだものがある。それがこのバンドの個性でもある。

 

アルバム冒頭の「Statice」のドリーミングなサウンドの立ち上がりの美しさからこのバンドのイメージを決めつけてしまいそうになるが、「invisible」の実に獰猛で艶かしいダークなインディーの色気のあるガレージ、ポストパンク・サウンドはどうだろう。それは全く異なった質感を持つ楽曲「水仙」のシューゲイザーの音の波目の隙間に"輝く暗さ"にも同等の魅力を垣間見ることもできるこのバンドの魅力の一つだ。チープ&トラッシュなガレージのケレン味がシビれ着く「Listerine」と、そこに軽妙なドライブ感が効いた「Dad Cry」等もクールな格好よさを撒き散らしている。

 

8曲入りながらに実に多様で、8曲入りだからこそこのバンドのサウンドと個性をより知りたくなる、そんな音楽好きの貧欲さを駆り立ててくれるようなゾクゾクした妖しさにパッケージされたアルバムだ。

 

"Invisible" (Official Video)

 

"水仙" (Studio Live at Red Bull Music Studios Tokyo)

  

(文:Dammit)

寄稿ガイドライン【公募休止中】

f:id:delivery-sushi-records:20200301002649p:image

 

『出前寿司Records』では、みなさんからの寄稿をお待ちしております。下記にガイドラインをまとめさせていただきますのでご一読ください。

※2020年6月現在、一時的に新規寄稿者の受付を停止しています。

 

 

1. まずはご連絡ください。

 

書きたい記事がある場合、まずは主宰である僕に何かしらのコンタクトをください。TwitterのDMなどが一番手っ取り早いかと思います。その後、ブログへのログインに必要なIDとパスワードをお教えします。『出前寿司Records』は「はてなブログ」を使用しているので、そこへログインして直接下書きに記事を入れていただく形になります。

 

2. テーマは「自由」です。

 

記事のテーマは音楽に関連したものであれば基本的に「なんでもOK」です。ディスクレビューでも、コラムでも、ライブレポートでも、機材の話でも、書きたいものを書いてください。もちろん、ジャンルや国籍も一切問いません。誰かとの共同執筆も大歓迎です。文字数等のレギュレーションもありません。

 

3. 愛のある記事を!

 

『出前寿司Records』では音楽愛に溢れた記事を募集しています。扱うテーマは自由ですが、安易な批判やヘイトでアクセスを伸ばそうとするブログではありません。ただし、根拠のある論考であれば問題ありませんし、世間的な評価やシーンにおける重要性等も度外視していただいて構いません。とにかくあなたにしか書けない「偏愛」に満ちた記事こそが求められる、そんな空間を『出前寿司Records』は目指しています。

※また、当ブログでは寄稿者の皆様に対する報酬等は一切ありません。あくまで気軽に音楽愛を語るブログとして運営していますので、その点はご理解ください。

 

4. 推敲はこちらで請け負います。

 

記事が完成したら再度ご連絡ください。こちらで内容を確認し、誤字・脱字のチェックをします。場合によってはページ全体の修正等も行います。

 

5. 記事は順次公開します。

 

基本的に、記事は書き上がればすぐに公開していきますが、ストックが複数ある場合は出来上がった順番に公開する流れとなります。もし公開時期の希望等があれば優先します。

 

 

以上の5点をご理解いただければ問題ありません。

 

『出前寿司Records』は不特定多数のライター陣による様々なジャンルの記事が溢れかえるブログです。発足当初からこれからも、それは変わりません。僕だけでは何も出来ません。皆さんの力が必要です。

 

少しでも「書きたい」と思ってくださる方がいらっしゃいましたらご連絡ください。質問や要望等もいつでもどうぞ。皆様からの寄稿を心よりお待ちしております! 書こうぜ。

 

更新再開のご挨拶

f:id:delivery-sushi-records:20200228163818j:image


ブログ上では特にお知らせしていませんでしたが、約1年間更新をストップしていました。無期限活動休止期間を終え、この度『出前寿司Records』を再開します。改めて、この場でご挨拶させてください。

 

元を辿れば、僕の出発点はこのブログにあります。

 

2016年頃からいわゆる「音楽アカウント」としてTwitterを始め、音楽の趣味が近い人と繋がりながら細々と個人ブログも更新するようになったのですが、そのコミュニティが大きくなるきっかけが2017年の7月から始まったこのブログ(当時は旧サイト)でした。当時、自分のフォロワーが立ち上げる予定だった共同ブログに僕が参加するはずだったのですが、諸事情によりその計画は白紙となってしまいました。このままではもったいないという思いから「だったら自分で立ち上げてしまおう」と、半ば引き継ぐような形で始めたのが『出前寿司Records』だったのです。僕はTwitter上で有志を募り、複数人で一つのブログを更新していくスタイルで運営を開始しました。会ったこともない、ただ「音楽が好き」だという理由だけでインターネット上に集まった人たちでチームを作り、記事を書く。とても刺激的でした。

 

しかし、活動の継続には限界がありました。度重なるメンバーの流入や幽霊部員化、オンラインでの繋がりのみ故の意識の共有の難しさなど、そういったストレスが少しずつ重なっていきました。そして悩み抜いた末、僕はメンバーの「解散」とブログ更新のストップを宣言し、『出前寿司Records』は2019年1月をもって無期限活動休止となりました。読者も少しずつ増えていた矢先だったので、僕としては本当に苦渋の決断でした。

 

そんなブログを、この度再開します。

 

気づけば休止から1年以上経っていました。「あっという間だった」というのが正直な感想です。その間、僕は会社員から某レコードショップの店員になったり、個人ブログを立ち上げたりなど、色々と環境が変化しました。特にレコードショップに飛び込んだことは僕の生活をガラッと変えました。それまでは音楽的なコミュニティをTwitter上に求めていた(というよりTwitter上にしかなかった)のですが、そんなことをせずとも職場には音楽マニアがたくさんいる。毎日音楽の話をしながら音楽に触れられる。それも現実の世界で。シンプルに「すごいな」と思いました。そして、僕は少しずつTwitterから距離を置くようになっていきました。心が充足した状態で見るタイムラインは、あまりにも殺伐としていたのです。

 

ただ、僕は同時に「孤独」でもありました。以前から、僕は「Twitterのようなインスタントに消費されるものより、ブログなどの長く読まれるコンテンツが残る時代が来る」という自論を掲げ、それを信じて一人で記事を書き続けてきました。確かに、そういう気運が少しずつ生まれてきていることは感じなくはないですが、やはり気軽に投稿できるツイートは根強いですし、僕自身も完全にそこから抜け出せていないのも事実です。このまま誰にも頼らず一人で活動を続けていてもいつか袋小路にぶち当たる…直感的にそう思っていました。

 

じゃあ、またみんなの力を借りようじゃないかと。そんな思いで今日を迎えています。

 

無期限活動休止の間、どれほどの人がこのブログのことを気にかけていたでしょうか。正直、忘れ去った人がほとんどだと思います。爆発的なPV数でもなかったし、たかだか1年半くらいの運営だったので、残した爪痕もそれほど大きくなかったと思います。休止中も検索によるアクセスがコンスタントにありましたが、決して良い数字とは言い難いものでした。

 

しかし、消化不良のまま休止を迎えたこともあり、僕の心の中ではずっと引っかかっていました。そして、再開したい気持ちが少しずつ高まっていきました。なので、こうしてまた新たなスタートを切ることが出来て本当に嬉しく思います。

 

何やら大袈裟だな…と思う方もいらっしゃるとは思いますが、それくらい僕は張り切っているということです。例のコロナウイルスの件で音楽業界が悲鳴を上げつつある今、少しでも音楽の話題で盛り上げる一助になればいいな、と思っています。

 

更新再開にあたり、これまでの固定メンバー制は廃止し、随時ライターを募りコンテンツを充実させていくフレキシブルな活動形態にシフトします。誰でも気軽に音楽の話が出来る空間を目指していければ、という思いです。何か書きたい方は、お気軽にご連絡ください。

 

 

どうそ、今後ともよろしくお願いいたします。

 

2020年3月1日
出前寿司Records主宰 おすしたべいこ

 

ネガとポジの狭間で - クマリデパート「シャダーイクン」

f:id:delivery-sushi-records:20190127040321j:image

 

クマリデパートの新曲「シャダーイクン」がやばい。そう、クマリデパートの新曲「シャダーイクン」がマジでやばいんです。(とても大事なことなので2回言いました)

 

クマリデパートは2016年に結成されたアイドルユニット。ekomsに所属しており、Maison book girlにとっては後輩にあたる。メンバーチェンジを経て現在の早桜ニコ(さおにこ)、優雨ナコ(ゆうなこ)、小田アヤネ(おだあやね)、楓フウカ(かえでふうか)の4人に落ち着き、2018年には作詞・大森靖子 / 作曲・サクライケンタのシングル「あれ?ロマンチック」をリリースした。

 

f:id:delivery-sushi-records:20190127033347j:image

(左から 優雨ナコ、小田アヤネ、楓フウカ、早桜ニコ。マジのクソカワPARTYです。マジの。)

 

そんな勢いに乗る彼女たちは2019年1月22日にシングル「シャダーイクン」をリリース! この曲がマジでやばい。何がやばいかと言うと、作詞・作曲・編曲が、サクライケンタと玉屋2060%の完全な共作なのである。そう、作詞・作曲・編曲が、サクライケンタと玉屋2060%の完全な共作なのである。(とても大事なことなので2回言いました)

 

f:id:delivery-sushi-records:20190127034023j:image

(「シャダーイクン」のジャケット写真。ポップかつサイケデリック。アイドルに対してサイケデリックという言葉を使うなよ。)

 

玉屋2060%と言えば、でんぱ組.incの「でんでんぱっしょん」や「サクラあっぱれーしょん」などを手がけ、彼女たちの人気の火付け役となったことをご存じの方も多いかと。でんぱ組のアイデンティティでもある "早口でまくし立てる多幸感あふれる電波ソング" を決定づけた意味においても彼の功績はめちゃくちゃ大きい訳で…。そんな玉屋氏がクマリデパートの曲に関わる、それもサクライ氏との共作と聞けばもう否応なくテンションがぶち上がる訳で…。タイトルの「シャダーイクン」という不思議な言葉も「シャイン」と「ダーク」を合わせた造語とのことで、リリース前から本当に楽しみにしていた。

 

そしていざ蓋を開けてみると…。

 

もうあまりにもサクライケンタ×玉屋2060%すぎて笑っちゃう。ここまで分かりやすい共作が存在するのか? ある意味怪作です。

 

(「シャダーイクン」MV )

 

まずイントロは完全にでんぱ組でいきなりガッツポーズ。かと思えば2番の後の間奏なんかはMaison book girlで、全体的なサウンドとしては両者の要素が驚くほどに違和感なく同居している。もちろん変拍子もぶち込まれる。あまりにも離れ業すぎやしないか…?

 

そして歌詞。「ここはサクライケンタだろうな」「このフレーズは玉屋2060%だろう」というのが分かりやすすぎる。サクライ氏に関しては「神社」という言葉が好きすぎてブクガの楽曲だけでは飽き足らず、下記の通りついに今回クマリデパートの曲にも登場させてしまった。職権乱用だ!(?)

透明な夜、青い鍵を集めて

神社の影に透けた扉を開いた

"玉屋節" とも呼べる歌詞もたくさんあり、特に

僕らはもうマイメン

なんて言っちゃう。サクライ氏は「マイメン」なんて言葉絶対嫌いだろ。(超ド偏見)

 

終盤は玉屋楽曲としてはお馴染みの大サビで盛り上がる構成となっており、ここで多幸感の臨界点を突破してしまう。そう、ここで多幸感の臨界点を突破してしまうのだ。(とても大事なことなので2回言いました)(そろそろうるさい)

ただ、その部分の歌詞が本当にやばい。

枯れてく季節 羽ばたけばもっと高く

笑っていたの 音が鳴るほうまで さあ

枯れてく季節 未来は明るいよ

笑っていたの まじわり始めてるさ!

…躁鬱じゃん。

しかし最後は

天まで 登れ煌々とシャイン↑

とまあ、アゲ〜↑な感じで締めくくる。カオスすぎる。ほとんど荒業。

 

でも本当に不思議で、曲全体としてはひねくれながらもアイドルポップとしてしっかりまとまっている。全然意味が分からない…。ネガティブとポジティブをジェットコースター並に行き来する躁鬱っぷりを見せながら、最後はハッピーエンド(?)でぶち上げるというとんでもない曲。

 

激戦と多様化を極めるアイドル界にあまりにも巨大な一石を投じるアンセムが誕生してしまった。マジでいいです。

 

※ちなみに。カップリングの「セカイケイ」はサクライ氏が作詞とは思えないほどストレートなロックチューン。というかクマリデパートは基本的に編曲は外注であり(時には作曲も)、あくまで王道アイドルを地で行く存在なのである…。

 

 

(文:おすしたべいこ)