出前寿司Records

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COVID-19とレコ屋店員の嘆き

 

今日も僕は自宅待機、です。

 

僕は普段、都内のレコードショップの店員として働いています。2019年の1月、思い切って音楽業界に飛び込みました。日々膨大な量のCDに触れながら店頭に立ち、時には新譜のポップなども作り、最近では買取査定をこなすことも多くなりました。性に合っているし、自分の知識を活かせるフィールドです。

 

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しかし、そんなレコ屋が今、思わぬ形で脅威に晒されています。

 

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が流行りだした頃は、「まあちょっとタチの悪いインフルエンザみたいなもんだろ」とさほど気にしていなかったのですが、ここ数ヶ月で状況が大きく変わったのは皆さんもご存じの通り。僕が勤めている店も土日の臨時休業を余儀なくされました。

 

まさか、こんなことになってしまうとは。もはや「人生は何が起こるか分からないから楽しい!」とか悠長なことを言っている場合ではない。

 

今回はこの危機的状況を言葉にしておこうと思い、こうして筆をとっています。ここ数日色々見聞きしたことを元に、レコ屋の店員の端くれとして、僕が感じている不安要素をいくつか挙げてみました。

 

 

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・接客業としての辛さ

 

これは同業の方々であれば同じ境遇だと思いますが、業態的にリモートワークが不可能なのが接客業です。自宅にパソコンとビデオチャットツールさえあれば仕事が出来る人たちが、正直羨ましいです。

自分で選んだ道なのだから仕方ないと割り切っていますが、少しでも感染リスクを避けるためには外出しないのが一番。でも働かないと生活が成り立たない。

 

 

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・売り上げの減少とジレンマ

 

外出の自粛要請に伴い、当然ながら店の売り上げも落ちています。

じゃあ、通販で稼げば良いのでは?というところなのですが、実際ネットでの注文は伸びており、それは非常にありがたいことです。店が存続出来ている大きな理由でもあると思います。

しかし通販の受注が増えるということは、それだけ配達員の方々の負担が大きくなるということであり、当然彼らの感染リスクも高くなる。頭が上がりません。

なので、僕個人としては手放しに「通販で買ってね!」と声を大にして言うことは非常に憚られるわけです。だからと言って「店頭に来てね!」とも言えない。でも、買ってくれないと店の存続に関わるし、従業員への賃金も支払われなくなる。「不要不急の買い物によって自分たちの生活が保たれている」という事実。こういったジレンマは、おそらく音楽(もっと言えば音楽のみならず文化的活動全般)に関わる多くの人々が感じていることだと思います。

 

 

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・非正規雇用としての収入

 

僕は社員を目指してはいますが現状アルバイト店員であり、いわゆる「非正規雇用」の立場です。比較的自由に休みを取れる職場であり、フットワークの軽さが僕には合っているのですが、やはりネックになるのが賃金です。

正直、時給は決して高いとは言えません。本当に音楽が好きで、その熱意がなければおそらく続かないし、僕は趣味を仕事にすることでしか生きられない人間なので、こうして今も働いています。

 

そんな僕の日常がウイルスによって崩壊の危機に直面することになるなんて、全く想像出来ませんでした。

 

全店的な売り上げ減少に伴い、従業員の残業は基本的に「禁止」。当面の間は時短営業となり、土日は臨時休業。本来出勤だった日は賃金の6割が支給されるのがまだ救いですが、今月の給料日が怖いです。

ありがたいことにライターの仕事はあるのですが、今の自分の力量では家計が潤うレベルまではいかないです。むしろ、少しでも対価がもらえること自体がまずありがたい。

そこで、副業を探すべく週1〜2日程度で出来る在宅のアルバイトを色々探してみたのですが、まあ…そう簡単に自分に合ったものが見つかるなんてこともなく。もっと資格とかスキルとか、身に付けておくべきだった。在宅以外でも探しましたが、そもそもこんなご時世。みんな考えることは一緒で、条件が良いものはとっくに埋まっていました。幸い、契約に至った案件もあるのですが、どれだけの仕事が舞い込むかは不透明で、漠然とした不安は残ったままです。

すぐに30万円くれ。

 

 

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・文化的損失

 

レコ屋は音楽の「発信地」としてまだまだ機能できると信じています。人の手によって形作られていく音楽シーンの、その大きな担い手の一つだと信じています。僕はそういう場所に身を置くことが出来ている現状に、ある種の「誇り」を持っています。

 

レコ屋が無くなれば、程度の差はあれど、それは文化的損失になる。「そんなことは起こらない」とは、もう言えません。レコ屋の閉店はすでに事実としてあります。僕自身に降りかかる可能性だってあります。でも、前述の通り手放しに「買ってくれ」とは言えない。

ただ、こんな状況でも新譜は出るし、中古商品も入荷します。そのことを忘れないでほしい、と願うことしか出来ません。

 

 

※追記:2020年4月7日

明日から店が当面の間休業となりました。ただ、通販や査定は継続されるため、物流は止まりません。僕もその対応のため内勤となりました。

「通販の受注が増えれば配達員の感染リスクも高くなる」といった旨のことを書きましたが、生活のために仕事を休めないのは配達員の方々も同じかもしれません。それに、もっと広い視野で考えると、何の対策もされずに全ての物流がストップしてしまえば僕らの引きこもり生活さえも送れなくなるのでは…?

なので、金銭的余裕がある方はオンラインショップを覗いてみてください。眺めるだけでもきっと楽しいと思います。

なお、本記事ではあえて店名や企業名は伏せてあります。ここに書かれていることは僕の個人的な所感であり、会社の考えを代弁するものではないからです。また、これは決して僕だけの問題ではなく、広く皆様に考えていただきたい事象である、といった狙いもあります。

 

 

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賃金の話をしましたが、その日暮らしも危うい方々に比べると、自分は恵まれている方だとは思います。なんとか食い繋ぐしかない。

 

今自分に出来ることは何か。

まずは、つべこべ言わずに自宅待機。仕事や必要な買い物以外は、基本的に家で過ごす。

予防の徹底。マスク着用は当たり前。手洗いうがいをしっかりと。最近は、帰宅したらすぐにiPhoneを除菌ウェットティッシュで拭くようにしてます。

そして、こういう時だからこそ映画を観たり本を読んだり、今まで聴いてこなかった音楽に触れたり、インプットを大事にする。頭を整理する。文章を書く。

 

僕はまだまだ「ライター」を名乗れるほどの人間ではないと思います。その辺のブロガーに毛が少し生えたくらいです。今は粛々と、しかし確実にスキルアップを図る時期なのだと割り切って、少しでも楽しいことを見つけて日々を過ごしていこうと思います。

 

 

(文:おすしたべいこ)