出前寿司Records

よりどりみどりの音楽カルチャーサイト

ブルースのすゝめ【前】

トゥットゥルー♪ toraです。

 

皆様、以前公開されたタクヤさんDammitさんの記事、お読みになりましたか?

 

delivery-sushi-records.hatenablog.com

delivery-sushi-records.hatenablog.com

 

ロカビリーといえば、中学のころだったか、Chack Berryのベストアルバム的なのを借りたけど、PCが読み取ってくれなくて、結局聴けずじまいだったことを思い出しましたw

 

……確かに、このサイト始まってから、ロックンロールの基礎となるような音楽ってあまり紹介されてない気がする。めっちゃサブカルオタクですやんな記事多いよねw

 

自分の記事も振り返ってみる………

Radioheadにはじまり、Muse、Aimer、悠木碧、果てには天使の3P!…………

 

オタク丸出し。

 

しょうがないよ!オタクだもん!許してくだせぇ…

 

このお二人の記事を読んで、私tora、ハッとしたわけであります。

でも、自分の音楽趣味を思えば、ロックンロールとかロカビリーって通ってない…

 

ならば、ブルースで行こう!!!

http://www.tapthepop.net/wp/wp-content/uploads/2016/11/msblues1-640x360.jpg

ブルースは好き好んで聴いているので、今回は僕の好きなブルースアーティストたちをご紹介して皆様にブルースを好きになっていただこうと思います。

 

 

そもそもブルースって何ぞや。

 

音楽を口で説明するのって、難しいというか、めんどい…

 

wikiによれば…

ブルース[注釈 1]Blues)とは米国深南部アフリカ系アメリカ人の間から発生した音楽の一種およびその楽式19世紀後半頃に米国深南部で黒人霊歌、フィールドハラー(農作業の際の叫び声)や、ワーク・ソング(労働歌)などから発展したものといわれている。兄弟とも言えるジャズが楽器による演奏が主役なのに対して、ギターを用いた歌が主役である [1]アコースティック・ギターの弾き語りを基本としたデルタ・ブルース[2]カントリー・ブルース[3]、エレクトリック・ギターを使用したバンド形式に発展したシカゴ・ブルース[4]など多様に展開している。

 

「ブルース」とは、孤独感や悲しみを表現する独唱歌であり、悲しみや孤独の感情は、英語ではしばしば「ブルーblue)」の色でたとえられることに由来している[5]20世紀以降のポピュラー音楽に幅広く影響を与え、ジャズロックンロールのルーツのひとつとしても知られている。

 

…………

 

聴くのが一番よねw

 


Robert Johnson- Crossroad

 

Cross Road Blues

Cross Road Blues

  • provided courtesy of iTunes

 

十字路で悪魔に魂を売って超絶テクを手に入れた引き換えに、早死にしてしまったなんて言う最近の魔法少女みたいな逸話がある伝説のブルースマンRobert Johnson

???「僕と契約して、ブルースマンになってよ!」

 

 まあこういいうのがブルースっちゅうやつです。

 

「ブルースなんてオヤジの音楽やろ?」

 

というイメージは無きにしも非ずって感じですよね、わかります。

 

Nirvana好きですか?

 


Nirvana - Where did you sleep last night (HD)

 

Where Did You Sleep Last Night

Where Did You Sleep Last Night

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Kurt Cobainが亡くなった後に出たライブ、MTV Unplugged In New York(個人的に大好きな一枚)からの一曲。この曲の元ネタ、実はLeadbellyという戦前ブルースマンのブルースソングなのです。

 


Lead Belly - Where Did You Sleep Last Night? (1944) (TRUE STEREO)

 

Where Did You Sleep Last Night?

Where Did You Sleep Last Night?

  • Leadbelly
  • ブルース
  • ¥150
  • provided courtesy of iTunes

 

ちょっとは身近に感じていただけたでしょうか?まあ、Nirvanaすらすでにオッサンの音楽とか、まあそんなことはないと思うんですがw

 

では、ここからは完全に僕の趣味です。

 

 

Son House

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/d9/Son_House.jpg

戦前ブルースマンの一人、Jack Whiteが敬愛してやまないブルースマンです。

 


Son House - Death Letter

 

Death Letter Blues

Death Letter Blues

  • Son House
  • ブルース
  • ¥200
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一番有名なのはこれかな。僕もこの曲が好き。

叩きつけるように弾くスライドギター!これ見てスライドギターやりてえぇとなり、オヤジからスライドバーもらったんですが全然上達してませんw

 


Son House - John The Revelator

これもかっこいい。歌声だけという男気と、その渋い歌声に惚れます。

 

John the Revelator

John the Revelator

  • Son House
  • ブルース
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Blind Willie Johnson - John the Revelator

 

John the Relevator

John the Relevator

  • Blind Willie Johnson
  • ブルース
  • ¥150
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(元ネタはこちら↑)

 

 

 

Muddy Waters

https://img.wennermedia.com/article-leads-horizontal/rs-206173-GettyImages-535799291.jpg

昔のブルースマンで一番好きなのはおそらくこのMuddy Watersですね。

彼のブルースは今のロックにも通じる力強さを秘めていると思います。

 


Muddy Waters - Hoochie Coochie Man (Live)

 

 

これが大好き。もともとリフモノのロックが好きなので、このギターリフは大好物です。

 


Muddy Waters - Rollin' Stone

 

ローリン・ストーン

ローリン・ストーン

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この曲名でお気づきでしょうか?The Rolling Stonesの名前の元ネタです。彼がいかに偉大かをものがたってますね……

 

 

 

John Mayall (And The Bluesbreakers With Eric Clapton)

名前というかアルバム名ですが…

 

https://rpmlifeinanalog.files.wordpress.com/2015/07/bluesbreakers.jpg

 

その名の通り、みんな大好きEric Claptonが参加している名盤!

この人のアルバムはこの一枚しか聴いていませんが、これはブルース史があるとすれば確実に名を刻んでいる一枚だと信じています。

一枚でいろんなブルースが聴ける、一度に何度もうまい一枚!


All Your Love --- John Mayall's Bluesbreakers


John Mayall & Blues Breakers / Double Crossing Time


Another Man - John Mayall & the Blues Breakers

 

All Your Love

All Your Love

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Double Crossing Time

Double Crossing Time

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Another Man

Another Man

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Cream

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/5/58/Cream_Clapton_Bruce_Baker_1960s.jpg

ロックンロール元年っちゅうもんが1954年だとか。60年以上続くロックの歴史の中でも、ブルースの歴史の中でもこのトリオはやはり最強のバンドの一つだということは変わりないと思います。

ちなみにナイジェルゴッドリッチはCream好きじゃないらしいですwでしょうねw

 


Cream - Sunshine of Your Love

 

Sunshine of Your Love

Sunshine of Your Love

  • クリーム
  • ロック
  • ¥250
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いつ聴いてもこの曲は色あせないですね。最高のアンサンブル。最高のブルース。

 


Cream - 09.Rollin' And Tumblin'

 

Rollin' and Tumblin'

Rollin' and Tumblin'

  • クリーム
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

ブルースのスタンダード。先ほど紹介した、Muddy Watersのバージョンでも知られる一曲。ハーモニカとギターのリフがたまんねぇ!

 


Cream - Crossroads (Live)

 

Crossroads

Crossroads

  • クリーム
  • ロック
  • ¥250
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冒頭で紹介したRobert Johnsonのカバー。大大大名曲。思えば、ブルース聴くようになったきっかけってCreamだったような気がします。

ちなみに、Eric ClaptonはRobert Johnsonを大変敬愛していることでも知られてます。

 

 

プレビュー表示したら、表示しきれないくらい長くなってしまったので、後半へ続きます…

次は80年代に活躍したあの人も出てきます!

 

 

(文:tora)

 

30周年を超えた更なる高みへ~BUCK-TICK「No.0」(2018)~

 

はじめに

どうもアキオです。

書き始めてはや2ヶ月、書けたぜ。やったぜ。

そんなハッピーな気持ちなので彼女の持ってた「ソドムの市」を鑑賞してみたら、なんか落ち込みました。

人間の気分なんてちょろいもんです。

そんなこんなですが楽しいです。

そういうゆるゆるな気持ちのまま長々書いたレビュー、僕の敬愛するバンドの新作レビューをどうぞ。

 

 

BUCK-TICK「No.0」(2018)


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曲目

  1. 零式13型「愛」 
  2. 美醜LOVE
  3. GUSTAVE
  4. Moon さよならを教えて
  5. 薔薇色十字団 -Rosen Kreuzer-
  6. サロメ -femme fatale-
  7. Ophelia
  8. 光の帝国
  9. ノスタルジア -ヰタ メカニカリス-
  10. IGNITER
  11. BABEL
  12. ゲルニカの夜
  13. 胎内回帰

 

1.2.3.4.11.12.13は作詞:櫻井敦司、作曲:今井寿(ギター、ノイズ)

5.6.7は作詞:櫻井敦司(ボーカル)、作曲星野英彦(ギター)

8.9.10は作詞、作曲共に今井寿である。

前作の傑作「アトム 未来派 No.9」から約1年半ぶりに出された彼らのニューアルバム。

 

アトム未来派No.9

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前作の傑作アルバム

delivery-sushi-records.amebaownd.com

(昔、僕が書いたレビューです)

 

まず聞いて驚いた。その過去最高にエネルギッシュな姿に。

このバンド、何しろデビューから30年経ってるのに、

まさか最新アルバムがここまでパワーに満ちてるとは想像もつかない。

「零式13型「愛」」、「美醜LOVE」は前作に比べると重々しい上に更に打ち込みの比重が増してるように思える。

なんとなくSF映画の始まりを想起させる。

ミドルテンポな曲でリフが鳴り響く中、今作はまあまあ重い雰囲気になるのかと思いきや、

そんな予想なんか通用するはずがなかった

「GUSTAVE」でいきなり弾けまくる。

バッキバキのアップテンポなEDMトラックに

Cat Cat CatCat Cat Cat CatCat Cat

とかいう完全に猫のことしか言ってない歌詞が乗ってる。

まあモデルがヒグチユウコさんの「ギュスターヴくん」らしいので当然か。

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大人が読んでも面白い絵本です

猫好きだもんね、櫻井さん。 

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猫に相談する魔王

相変わらずなんなんだこのバンド、デビュー30年超えてるんだろ、クオリティになんの申し分もないけども(笑)

とか、言ってると次の「Moon さよならを教えて

でめちゃくちゃしっとりしたドリームポップみのあるミディアムナンバーが。

今井さんがここまで優しい曲書いたのは珍しさがある。

おやすみのキスをして 

夢の始まりね 目を閉じて そして
Good Night 願い事を叶えて 

流れては消える さよならの前に Good Night

月の満ち欠けのように静かに染み入る歌詞もまた非常に良い。

作詞櫻井敦司、作曲今井寿の黄金コンビが終わったあとはもう1つの黄金コンビが、つまり櫻井敦司と星野英彦のそれが始まる。

「薔薇色十字団 -Rosen Kreuzer-」、「サロメ -femme fatale-」、「Ophelia」が星野英彦のトリッキーさ、激しさ、切なさなど彼の様々な顔を見ることが出来るのが実に楽しい。

星野英彦は元々「JUPITER」、「ドレス」、「ミウなど、

しっとりとしたメロディの綺麗なナンバーを書く印象が強かったのだが、30年を超える活動でおそらく1番大きな変化をした人だと思う。

「Ophelia」で一旦落ち着いたあと、このアルバムは作詞も作曲も今井寿の摩訶不思議な世界に誘われる。

今井寿の不協和音を多用したトリッキーなギターフレーズが光る「光の帝国」

ポエトリーリーディングBUCK-TICK流のダークで摩訶不思議な世界に落とし込んだ不穏なナンバーノスタルジア -ヰタ メカニカリス-」

天上太陽

中空我雷電

地上火天怒焔(原文ママ)

など、今井寿の奇怪な言語感覚が爆発するメインボーカルナンバー「IGNATER」

これでもかとBUCK-TICKのぶっ飛んだ一面を見せてくる。

その後、シングルにもなっている「BABEL」は、ゴシックで荘厳なパブリックイメージとしてのBUCK-TICKを強く感じさせる。

ギターフレーズにどこかシンセのような物を感じるが特徴的なナンバーだ。

そして、このアルバムは終盤へと流れ込むのだが、この2曲が強烈なのだ。

まずワルツ調のゲルニカの夜」

戦争反対への希求を決して直接的ではなく、それこそピカソの「ゲルニカ」と同様に寓話的に描くその表現力や、

重いテーマですら娯楽として成立させるようなある種のさじ加減は、このバンドの真価を如実に表してる。

そして最後の「胎内回帰」では

Melody あなたの鼓動
Harmony 胎内の爆音
Melody わたしの鼓動
Harmony 胎内の爆音

という強烈な歌詞をギターのディストーションに載せて櫻井敦司が描き、また1曲目にループしていく…

 

 

あとがき

曲間の長さに至るまで完璧に計算されていて、

それでいてここまであらゆる面を持ちながら、リズム隊も上物もフロントマンもBUCK-TICKであり続けられる。

長年の経験と挑戦が培う阿吽の呼吸だろう。

さらに留まる事を知らないBUCK-TICKというバンドの意欲。

 

…ファンで居続けて思うことだが、

最新作において、常に若手以上にエネルギッシュな作品を作り上げるそのポテンシャルには脱帽するばかりである。

ただ良いものを、という思いでできた「No.0」は30周年を超えた新たな扉がまだまだあることを示してくれたように思う。

改めて、本当ファン冥利に尽きるなと思います。

 

参考資料


BUCK-TICK ニューアルバム『No.0』全曲試聴トレーラー


BUCK-TICK / ニューアルバム『No.0』試聴トレーラー

mikiki.tokyo.jp

okmusic.jp

 

音楽と人 2018年 03 月号 [雑誌]

音楽と人 2018年 03 月号 [雑誌]

 
PHY【ファイ】VOL.12 音楽と人増刊 特集:BUCK-TICK
 

 

delivery-sushi-records.amebaownd.com

(ちなみに、こちらも自分の記事です)

 

 

(文:アキオシロートマグル)

 

 

ロックンロール至上の贅沢はレコードで味わうべし! GUNS N' ROSES「GN'R LlES」

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GUNS N' ROSES「GN'R LlES」


音楽産業におけるストリーミング媒体の登場と発展は「音楽を所有する」という感覚からの解放をもたらし、より自由な音楽元来のフォームへの帰化を促すものとなった。もしかすると公共のジュークボックスにコインを入れてヒットソングを聴きながら踊った時代からレコードへと発展した時代とは別の「If」がこのストリーミングという媒体なのかもしれない。最近話題の「Spotify」などは「ネットという公共のジュークボックス」といった趣を感じる。


しかし、今回ここで俺が語るのはレコードについてだ。それもロックンロール・レコードだ。まず先に言っておきたいのはレコードとCDの存在意義は重なる部分もあるが個々の媒体の性質上の関係で違う部分もある。レコードにはそれぞれA面とB面があり、それぞれの面を聴くにはひっくり返さなくてはいけない。


そう、今回ここで紹介するレコード・アルバムであるGUNS N' ROSESの「GN'R LlES」を語る上で重要なポイントはこの「A面とB面」という分離したレコードの特色にある。


GUNS N' ROSESが86年にゲフィンレコードと契約したバンドの"疑似"ライヴEP「Live ?!*@ Like a Suicide」にアコースティック曲を4曲追加して88年にリリースされたのがか本作「GN'R LlES」だ。その前年の87年に発表されたバンドの代表作となる「Appetite for Destruction」のヒットによる追い風を受けて本編集盤もヒットした。


「GN'R LlES」にはGUNS N' ROSESのロックンロールバンドとしての「本質」が詰まっている。そしてその「本質」を最も美味しく味わうにはレコードという媒体でなくてはならないのだ。レコードの特徴にある「A面とB面」それぞれに分かれていることに「旨味」があるのだ。


まずこのレコードの「A面」となるのが86年にリリースされた"疑似"ライヴ音源の「Live ?!*@ Like a Suicide」である。「オレはむこうみず、痛みなんか感じない、抑制するつもりもない」と冒頭一曲目から暴れ馬の如く凄まじいロックンロールが聴き手をノックアウトする「RECKLESS LIFE」でこの虚飾のロックンロール・ショーは幕を開ける。続くきわどいドライヴ感がほとばしるオーストラリアのハードロックバンドRose Tattooのカヴァー「NICE BOYS」、そこからルーズでソリッドなノリになだれ込む快感がたまらない「MOVE TO THE CITY」、そしてきわめつけはAerosmithのこれもカヴァーの「MAMA KIN」が痛快なまでにこの偽りのショーにトドメを刺してくれる。


「Live ?!*@ Like a Suicide」が収録された「A面」は偽りのライヴ・アルバム・サイドの虚像がロックンロールの普遍的な妖しい魅力を増幅させてその存在をより猥褻に際立たせているストーンズピストルズらの持ち合わせていたロックの胡散臭さをより実像的に楽しむ事ができるサイドだ。


そして、このレコードアルバムの続きである「B面」を聴くために聴き手はレコードをひっくり返さなくてはいけない。この間はものの数秒、しかし、この数秒のインターバルが重要なのである。


アコースティック・サイドである「B面」の一曲目である「PATIENCE」の「ワン・ツー・スリー・フォー」のカウントから始まる口笛と仄かに煌めくアコースティック・ギターのメロディー、この立ち上がりを堪能するには「A面」の激烈なロックンロール・サイドとの間に数秒のインターバルが必須となるのだ。サウンドスタイルの違いによる分別や編集盤としての形式的合致もあるかもしれない、しかし、一枚のアルバム作品としてこの「GN'R LlES」を聴いた時にこの数秒のインターバルを置くことでよりコンセプチュアルな味わいをより深く楽しむことができるのだ。


マーダー・ブルーズの影響下にあるような世界観を持つ「USED TO LOVE HER」、「Appetite for Destruction」にも収録されていた「YOU'RE CREAZY」は本作品のバージョンの方がよりシンプルながら曲の核を突く仕上がりになっている。そしてラストを飾るのはその詞の内容から賛否両論もあった「ONE IN A MILLION」は緩和の中を明確な緊張感が通る演奏で流れ者の一人としての孤独さを歌った曲なのではないかと俺は考えている。


GUNS N' ROSESが音楽的な本質がアコースティックサウンドによるアプローチで浮き彫りになる体質のバンドであることの証明として機能しているのがこのアルバムの価値や意義としてある。そこを楽しむにしてもやはりレコードでなくてはならないアルバム作品である。


https://youtu.be/Skq1llOdeQs

"Guns N' Roses - Reckless Life"


https://youtu.be/OOdTzw2grnw

"I used to Love Her - Guns N' Roses"


ダウンロードやストリーミングと音楽媒体の変化によって音楽との距離はより身近なものとなっていく。それらは実に素晴らしくスリリングな音楽生活を与えてくれるのも確かだ。しかし、レコードの「ひっくり返すことでおきる数秒のインターバル」という「距離」は音楽との関係を「長く続けて行く上で」必要なものではなかろうか。


GUNS N' ROSESの「GN'R LlES」はそんな「距離」の意味や意義を的確に与えてくれる一枚だ。是非レコードで堪能して頂きたい。その数秒は実に贅沢で代え難き至福の数秒でもあるのだから……


(文 : Dammit)

熱すぎたtoe (stiffslack 15周年記念ライブ)

 7/8(日)、名古屋。toeワンマンライブ

 

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 僕がよく行く名古屋のレコード・CDショップ、stiffslack が今年15周年を迎えたということで開催されたこのライブに行ってきた。

(本当におめでとうございます。いつも大変お世話になってます。)

 

 会場は名古屋のライブハウス、HUCK FINN。超満員で250人くらい入ってたように感じた。toeのライブも初めてだし、そのライブハウスも初めてだったが、climb the mindLostage、Killieといったバンドもここでライブをしたようで、場所も最高だと感じた。選ばれた、そして本当にtoeが好きな250人の為に単独でやってくれるライブなんて、贅沢の極みだった。(さらにありがたいことに、僕は前から3列目くらいのすごく近いところから見れた。チケットが発売されてからすぐに買いにいってよかった。)

 

 

 肝心のライブの感想を一言で表そう。

 

 『エモいってのはこういうことだ』

 

 そう思わずにはいれなかった。「叫ぶ」という行動を声を使わずに表現している、そんなライブだったように思う。激しく体を揺らして演奏し、冷めるときには一気に落ちる。一つ一つの音はとてつもなく優しくて綺麗なのに。前の音が次の音の感情を増幅させて、その音がさらにその次の音の音の感情を増幅させて、という連鎖がずっと続いているように感じた。モグワイさえ凌駕するような美しいメリハリがあった。

 

 

 そんなライブを大まかに振り返っていこうと思う。

 

 1. 1/21

 はじめはアコースティックな曲から。これは正直あまり聞いてなかった曲で、びっくりしてしまった。何よりいきなりドラムの柏倉さんがこれが最後の曲なんじゃないかくらいの表情と熱量できたことがすごかった。

 

 2. after image

 「やってくれたら面白いけどなあ」と思ってた曲がまさかの2曲目に登場。テンションが超上がったのは曲はもちろん、2曲目の時点からもうドラムだけではなくtoeの全員が超ノリノリにアツく演奏してくれたからだ。曲の後半のブレイクでアコースティックギターを高く掲げてかき鳴らす姿がかっこよすぎた。この曲ってこんな激しかったっけ。

 

 3. two moons

 after image と比べるとしっとりめに演奏してくれたように感じた。ドラムは変わらず凄まじいものがあったけれど。この曲までの入りの3曲はアコースティックで爽やかに聞かせてくれた。

 

 4. Run for Word

 美濃さんと山嵜さんがエレキギターに持ち替えて一発目。やってほしかった曲。イントロで叫んでしまった。ずっと首を振って、体全体を揺らして聞いた。

 この曲についてはその時の映像があるから見てほしい。4曲目でこのテンション。熱すぎ。

 


toe - "run for word" stiff slack shop 15th anniversary

 

 ここから畳みかけるように

 5. I Dance Alone

 6. My Little Wish

 7. Because I hear You

 初期の曲と最近の曲を演奏。My Little Wish が際立って良かったが、8・9曲目がすべてをさらっていったように思った。

 

 8. エソテリック

 この曲がライブで一番盛り上がった瞬間だったんじゃないかと。イントロで僕は絶叫してしまった。僕が大好きな曲だからなのか、toeのメンバー全員の熱量もここまでの曲で一番あったように見えた。

 

 9. past and language

 これも是非聞きたかった曲。エソテリックで最高潮にまで達した感情はそのままに演奏してるのに、熱気を癒すように音が切なかった。そのギャップが最高に良かった。エソテリックとpast and language を続けて生で聴くことができたことがこのライブのハイライトだと思ってる。

 

 10. The Future Is Now

 11. Because I hear You

 past and language からこの2曲により緩やかに、静かに吸い込まれるように収束していく。そしてあの曲。

 

 12. グッドバイ

 これを聞くためにtoeのライブに来たといっても過言じゃない。すべての音が美しかった。それまでにゆっくり穏やかになったところに最後の激しい演奏が染みた。

 

 13. Song Silly

 最後の曲。グッドバイと合わせて聞くことができてよかった。コース料理の最後の冷たいデザートみたい。刺激もあるけど、聞いてるうちに綺麗に吸い込まれて消えるみたいな。

 

 14. Path(アンコール)

 アンコールは1曲だけ、この曲を披露。途中の「1,2!」では口をそろえて叫ぶ人も多かった。山嵜さんはスピーカー(?)によじ登ってギターを弾くし、全員がすべてを出し切るように演奏してくれた。

 

 

 

 以上。

 

 語彙力が足りず、十分なライブレポートになってないと思うけど、世界的な日本のバンドを聞くことができた感動が少しでも伝わればいいな。

 

 そして、開催してくれたstiffslacksさん(人じゃなくて店だけど)には感謝しかない。これからも続いてほしいし、いい音楽をこれからも僕は買っていきたい。

 

 とりあえず8月にまた面白そうなライブをstiffslackさんが企画してくれてるから、それに行きたい。

 

 

 

(追記)

 夏にまたtoeが新譜をリリースということで

 山嵜さん「stiffslackに行って買ってください。特典は一枚買うとさらに3枚同じCDがついてきて一気に4枚買えます」

 美濃さん(お客さんを見ながら)「・・・嘘ですよ(笑)」

 

 

 僕(それはそれでアリかも。)

 

 

(文:ジュン)

 

 

梅雨空とeludeとSolitude HOTEL 5F

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—気づいたら 俺は なんとなく ドルオタだった

 

そう。本当に気づいたら、いつの間にか頭のてっぺんまでMaison book girlの沼に浸かっていました。どうも。よろしくお願いします。ありがとうございます。ありがとうございます?

 

事の発端は、渋谷のヴィレッジヴァンガードで行われた『elude』のリリースイベントでした。この時私は初めて生でブクガを目撃することになります。

 

△ 6月20日発売のシングル『elude』収録のリード曲「レインコートと首の無い鳥」のMV。めちゃくちゃかっこいいからとりあえず観てほしい…。

 

ブクガの4人を目の前にして感動し、矢川葵とツーショットのチェキまで撮って帰宅、その勢いで金銭的に購入を渋っていたワンマンライブのチケットをクレジットカードであっさり手に入れる、というスピード感のあるオタクを体現。ここで自分が完全なるブクガ沼にズブズブに溺れていることを悟りました。カーチャン、ぼかァ自分で自分が怖いよ…。

 

そんな訳で、ノリと勢いと推しの尊さに背中を押されて観に行ったMaison book girlのツアーファイナル公演「Solitude HOTEL 5F」の様子を振り返って行こうと思います。自分の感情の記録としてここに残す意味で。よろしければお付き合いください。

 

✱  ✱  ✱

 

2018年6月23日。まだ梅雨の時期だったこともあり、あいにくの雨。でもこの雨もどこかブクガのライブの一部のような気がして許せてしまう。足元を濡らしながら気持ちは静かに高ぶっていた。

 

会場は日本青年館。とても立派な建物だ…。ここでブクガを観れることが贅沢だというのはすぐに悟る。

 

とりあえず物販へ。お金ないしな〜とか言いつつ、一緒に行ったフォロワーと1枚1,000円のランダムチェキを5枚引くという暴挙に出た。 

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△ 散財の図。後悔はしてない。

 

結果として2人でメンバー全員を集めることに成功したので課金した甲斐があったというもの。和田輪のサイン入りは私が引きましたがフォロワーが和田推しだったので代わりに矢川ソロをもらった。需要と供給が一致した平和な世界…。

 

さて、いよいよ開場の時間。座席は指定席で、2階の最前列だった。中は想像以上に広くて立派で思わず胸が高鳴る。そして空腹でお腹も鳴る。「roomsの無音部分でお腹鳴ったらごめん」と謝っておいた。


少し押して18:00すぎに会場が暗闇に包まれ、SEが流れる。白の新衣装を着た4人が登場した。いよいよ始まる…。


〇 レインコートと首の無い鳥

リリースされたばかりのシングル『elude』のリード曲からライブはスタート。
大きなステージを存分に使ったパフォーマンスでいきなり鳥肌が立った。

曲中盤では、ステージ前方に設置されたブラックライトに照らされて衣装と靴が怪しく光る演出も。MVそのままや…。

ちなみにこの曲の一番好きなところは和田輪が歌う2番の「鏡の裏、冷たい朝。」の「あさ〜〜〜」と伸ばす部分です、伝われ。


〇 bath room (intro) ~ bath room

最初の音が鳴った瞬間にウワーーーーーとなり一気にテンションが上がる。会場中がイントロに合わせて手拍子をしていたけど自分はすでに半ば放心状態になりしばらく何も出来ずひたすらただステージを見つめていた。

ああ、4人が横一列に並んで踊ってる、あのMVと同じだ…と思っているうちに曲終了。


〇 faithlessness

もう駄目だった。駄目だった。イントロを聴いた途端約束されていたかのように目頭が熱くなり頭も痺れだした。あの時絶対良く分からない分泌物が脳から出ていた気がする。

何しろブクガを本格的に好きになったきっかけはこの曲のMVだった。4人のビジュアル、退廃的な映像観、独特な振り付け、そして「性的過去」というフレーズをアイドルが歌っているという衝撃。全部が型破りで新鮮だった。以来この曲がブクガで一番好きだった。

その曲を、生で観ている。井上唯決まってるな…。視覚情報に感情が追いつく前に曲終了。

 

〇 townscape

ステージ後ろのスクリーンに、様々な風景写真のスライドが手で差し込まれる映像が写されていた。スクリーンも観つつメンバーも観つつで目が忙しい。冒頭3曲で頭が訳分かんなくなっていたところに少し落ち着いた曲が来てくれて良かった。

 

〇 end of Summer dream

初夏なのに一気に夏の終わりへ。townscapeに続いてチルアウトタイム。いい曲だな〜。

 

MC

もう何話してたか全然覚えてないです。お直ししたのか和田輪が小走りでステージから捌けて小走りで戻って来たのがかわいすぎて全部吹っ飛んだ。

 

〇 sin morning

流れが完璧すぎる。あの名盤『image』からの4連発はここで終了。

 

〇 rooms

そしてここでroomsと来た。MCと少し落ち着きのある曲の流れからまた一気に血が騒ぎ出した。サビの無音部分で会場の照明が全て落ちて一瞬静寂が訪れる度に本当に息を呑んだし、その時だけ自分がどこか別の場所に飲み込まれたような感覚に陥った。

 

〇 言選り

心が全く休まる暇がない。このシングル続きはずるい。光の演出がとにかくすごい。

最後の鍵の落ちる音の部分で、矢川葵の手にレーザー光線が当たり音と共に光も消えるという演出があまりにも良くてキレそうになった。

 

〇 十六歳

そんで続けて『cotoeri』のカップリングと来たもんだ。広いステージを駆け回りながら歌うパフォーマンスにひたすら心を打たれる。もっと上手いこと感想を述べたいけど語彙が追いつかない。ごめんなさい。

 

〇 lost AGE

今回のライブの個人的ベストアクトはこの曲でした。楽曲と振り付けのかっこよさもさることながら、赤と青の照明に交互に照らされる演出にとにかく引き込まれた。(ライブ終了後の帰り道も無事lost AGEしか聴けなくなりました。)

 

〇 karma

からのkarma~~~~~?! 後方のスクリーンにはMV(と呼べるのか?)の映像が流れる。何かに急かされるような気持ちになり、その場から駆け出したくなるのを懸命に抑えていた。

 

〇 my cut

あーーーーー。そしてmy cutですよ。つくづく化け物みたいなセットリストだな。

コショが呼びかけてみんな立ち上がった。オールスタンディングの多幸感。誰の顔も見えなかったけどその場にいる人はみんな笑顔だったに違いない。文字通り会場が一つになる。

そして観客をアジテートする矢川葵、素敵すぎか? 

 

MC

この辺もライブが良すぎてあんまり記憶がありません。「次で最後です」「あっという間だね」みたいな話をしていたのは何となく覚えている。


〇 last scene

本編のラスト曲。メンバー4人の言うとおり本当にあっという間にここまで来てしまった。自分の感覚ではまだ30分くらいしか経っていないくらいだと思っていたのに、完全に時空が歪んでいる。

え? マジで終わるの? 待って待って待って待ってと懇願するも虚しく曲は終了。4人はステージを後にした。

 

〇 cloudy irony

まあとは言えそんなにすぐは終わるはずもなく。アンコールを求める大きな拍手が会場を包む中、4人は再び登場してくれた。今度はツアーグッズのTシャツを着ている。

ちなみに私はサビのキックするような振りの時に矢川葵のスカートから垣間見える「見せパン」をひたすら注視することに徹していました。邪念がすごい。許せ。

 

〇 snow irony

イントロが鳴った瞬間にウッソ~~~~~ンとなってしまった。だって「ironyシリーズ」2連発ですよ。ファンを殺すか。許さない許さない許さない許さない許さない。(許す)(落ち着け)(これが落ち着いてなんかいられるか)

 

MC

ここで印象的だったのはコショの言葉。要約すると「自分たちのやりたいことが出来るようにもっと上を目指したい」ということだった。やはり会場ごとに様々な制約があって思い通りの演出が出来ないこともあるらしい。

個人的には、今回の日本青年館公演の演出は、少しやり切れてない部分もあったのか…?と思ったりもしました。もっと大きな会場でブクガのライブを観たいですね。

 

〇 おかえりさよなら

サクライケンタがライブの最後をイメージしたという曲。ああ、これでもう終わりなんだな…と思うと、ものすごく寂しい気持ちに襲われた。アウトロの音は永遠に鳴り止んでほしくなかったけど、無常にも曲は終了。スタンディングオベーションの中、4人は捌けて行った。


〇 教室

2回目のアンコールを求める拍手の中、4人は例のレインコートを着て登場。手には本を持っている。『elude』収録のポエトリーリーディングの再現だ。

読み上げられる言葉に合わせて体育座りをしたり、ステージから順番に捌けて行ったり、とにかく完成度が高かった。

 

〇 レインコートと首の無い鳥

4人はレインコートに加えてペストマスクを装着して登場。まさかの2回目の披露だった。しかし最初に披露した時と振りも違うしひたすら怖い。海外のホラー映画を観ているような気分になる。そして誰もマイクは持たず歌っていない。

曲終盤、4人が横一列に並んでフラフラと観客側へ近づいて来る矢先、突然音がブッツリ切れてそのままライブは終了。静寂と暗闇の中、会場が呆気に取られていると、ステージ後方のスクリーンに「6F」の文字が浮かび上がり、次回のワンマンライブが2018年の冬に行なわれることが告げられ会場が沸いた。

そして会場が明るくなると、ステージには靴がぽつんと置かれているだけだった。

 

Solitude HOTEL 5F、完結。

 

✱  ✱  ✱

 

いいライブを観た後は感情がごちゃっとなりがちですが、今回は特にそれが酷く、今でもなかなかアウトプットが難しいです。

 

でもただ一つ言えるのは、Maison book girlはシンプルでもかっこいいということ。

 

シンプルというと少し語弊があるかも知れませんが、前回のワンマン「Solitude HOTEL 4F」はオーディエンスの理解の追いつかないパフォーマンスが話題になりました。それに比べると今回は光やスクリーンでの演出に留めており、それが結果的に4人のポテンシャルを最大限に引き出せていたのではないかと思いました。

  

ブクガはアイドルの化けの皮を被ったパフォーマンスユニットです。ポストPerfume的な立ち位置だと勝手に思ってます。これからもっと売れるはず。

 

ちなみに日本青年館公演後もリリースイベントは続き、私も2回参加しました。7月1日に渋谷のタワーレコードで行われた最終日はあまりにも混雑してほぼ何も見えませんでしたが、まさに大団円と言うに相応しい大盛況っぷりでした。

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△ 公式より。狭いスペースにわちゃわちゃいる。

 

総じて、ブクガはいいぞ!!!

 

最後にセットリストとそれを再現したプレイリストを貼ってお別れです。ありがとうございました。私はこれからもブクガオタクに精を出していく所存です。

 

✱  ✱  ✱


Maison book girl「Solitude HOTEL 5F」@日本青年館

SE

1. レインコートと首の無い鳥

2. bath room (intro) ~ bath room

3. faithlessness

4. townscape

5. end of Summer dream

MC

6. sin morning

7. rooms

8. 言選り

9. 十六歳

10. lost AGE

11. karma

12. my cut

MC

13. last scene

14. cloudy irony (en)

15. snow irony (en)

MC

16. おかえりさよなら (en)

SE

17. 教室 (double en)

18. レインコートと首の無い鳥 (double en) ※途中まで

 

△ セットリスト順のプレイリスト

 

 

(文:おすしたべいこ)

 

MASS OF THE FERMENTING DREGSの新たな季節

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2018年6月24日、私は下北沢SHELTERMASS OF THE FERMENTING DREGS (通称マスドレ)のライブを観ました。

 

結論から言って、最高のライブでした。

 

今年上京して、それなりに色々なライブを観てきましたが、個人的には間違いなく2018年上半期のベストライブだったと思います。

 

今回は、そのライブレポに加え、8年ぶり(!)の新作アルバムの最速(?)レビューをお届けしようと思います。

 

✱  ✱  ✱

 

▷そもそもマスドレとは?

 

2008年の1stMASS OF THE FERMENTING DREGSでデビューした日本のオルタナティヴロックバンド。

メンバーチェンジや脱退を経ながら2009年『ワールドイズユアーズ』、2010年『ゼロコンマ、色とりどりの世界』とアルバムをリリースし活動するも2012年に活動停止。一度はボーカルの宮本さんのソロ活動のみになりましたが、2015年に再始動。

そして2018年、ギターに小倉直也、ドラムに吉野功を迎えた新体制で満を持して8年ぶりの4th『No New World』を7月4日にリリース、といった具合です。

 

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△ 現メンバー (左から g.vo.小倉直也、vo.g.宮本菜津子、dr.吉野功)

 

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△『No New World』ジャケット

 

サウンドオルタナど真ん中のギターと躍動感のあるリズム隊、そして宮本さんの伸びやかなボーカルが特徴。ものすごくかっこいいんですけど、音源の少なさや活動休止期間もあってかイマイチ知名度が低く、過小評価されているような気がしてなりません。

 

✱  ✱  ✱

 

そんなマスドレを私が知ったのは、高校生当時(2010年頃)に中古の『ワールドイズユアーズ』をジャケ買いしたのがきっかけでした。

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このジャケットに惹かれて「おそらくバンドだろうな」ぐらいに思って買って聴いてみると、これがめちゃくちゃかっこいい。破壊衝動を秘めたサウンドがたまらず、好きにならない訳がなかった。それからはひたすら『ワールドイズユアーズ』を聴き狂う毎日でした。

 

そんなマスドレのライブを、生で観るということ。彼らのアルバムが8年ぶりであるように、私もおよそ8年越しに夢が叶うような気持ちで、観る前から期待値はMAXでした。そして、それは全く裏切られることはなかったのです。

 

…さて、前置きと自分語りはこれくらいにして、まずはライブレポと行きましょう。かなり個人的な主観も入ってますが、自分の感情を除くことはもはや不可能なので許してください。

 

✱  ✱  ✱

 

ライブはほぼ時間通りにスタート。激しいセッションのようなSEの中、3人が登場。私はやや下手側の最前列にいました。ついに本物が目の前に現れた…。会場が拍手に包まれる。

 

まず披露されたのは「まで。」。目と鼻の先にマスドレがいて、ライブをしている…。現実なのかよく分からない、あまりにも実感がなかった。

 

続いて「かくいうもの」。かっこよすぎる。3人の演奏はとてもパワフルで、ものすごくタフで、こちらに迫ってくる。

 

次がやばかった。「She is inside, He is Outside」のイントロが鳴った瞬間に歓声が上がり、フロアが暴れだす。

私はステージ前の柵に圧迫されながら汗でずり落ちる眼鏡をかけ直しながらステージにひたすら釘付けになっていました。半端じゃない…。

 

それから新作アルバムに収録されている新曲「だったらいいのにな」「YAH YAH YAH」「Sugar」を立て続けに披露。どの曲もこれまでのマスドレとはまた違った良さがあった。

それから「青い、濃い、橙色の日」「さんざめく」「エンドロール」と畳み掛け、会場は熱気に包まれるばかりでした。

 

ここからはドラマーの吉野さんの"サービスタイム"に突入(=連続で演奏すると体力的にキツいセットリスト)。「渾身のエイトビートをお聴きください(宮本さん)」という言葉から始まった「delusionalism」を皮切りに「ひきずるビート」「ゼロコンマ、色とりどりの世界」と鉄板曲が並び、私は最前列でもみくちゃにされながら目頭が熱くなるのを感じていました。

 

それから「ONEDAY」「skabetty」と続き、その後は新曲New Order」「Hu Hu Hu」を披露。今までの曲も新曲も、本当にかっこいい。アルバムが出なかった8年間を埋めるように熱のこもったパフォーマンスが続く。

 

そして去年発表された「スローモーションリプレイ」、続いてこちらも新曲であるあさひなぐを披露。最後は「ワールド イズ ユアーズ」からの「ベアーズ」でフロアが熱狂の渦と化した。

 

「ベアーズ」序盤ではライブ前に観客経由で用意したカスタネットを放り投げるパフォーマンスもあったりしました。

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△ 3コマ漫画

 

あっという間にライブは終了。私は去り際に吉野さんが放り投げたドラムスティックをまさかの運よくゲット。しばらく腑抜け状態になってました。 

 

アンコールを求める熱い拍手の中再び現れた3人。「じゃあ1曲だけ(宮本さん)」と披露されたのは「ハイライト」。もう本当に最高でした。

 

✱  ✱  ✱

 

終演後、ステージ上でメンバーの手渡しによる新作アルバムの先行発売が行なわれました。

その準備をする際、吉野さんがステージに置かれたセットリストのメモを拾い上げ、偶然目が合った私に「あげる~」と言って渡してくれました。あの瞬間、あまりにも突然で全く言葉が出ず、めちゃくちゃ強張った笑顔で会釈することしか出来ませんでした。ドラムスティックに加えてセットリストまで手に入れてしまい、本当に自分でいいのかと思いつつも、圧倒的な多幸感が自分を包んでいくのが分かりました。

 

高校生の自分を夢中にさせたバンドが目の前でライブをしていた。その時やっとその実感が追いついて、最高の気分になりました。

 

ありがとうマスドレ。その一言に尽きます。

 

✱  ✱  ✱

 

さてさて。そんな訳で、私は先行発売の最新アルバム『No New World』を手に入れてしまいました。既に何周も聴いてますが、文句なしにかっこいいです。最速かどうかはさておき、1曲ずつレビューをしたためていきます。


1. New Order

グッドメロディと今まで以上にさわやかなサウンドでいきなりマスドレの新次元を感じさせるような曲。今までの音源と比べると宮本さんの歌声が明らかに進化してます。「New Order」というタイトルもいいですね。

 

2. あさひなぐ

実はアルバムジャケットは漫画家のこざき亜衣の書き下ろしだったりする訳で。疾走感があって夏にぴったりなロックナンバー。イントロがクソかっこいい。ギターのオルタナ感はまさにマスドレ

 

3. だったらいいのにな

へヴィーなイントロからワウの効いたギターへとなだれ込む、これまた新機軸な1曲。ギターの小倉さんとのツインボーカルも新鮮。

 

4. YAH YAH YAH

50秒で終了。衝動を詰め込んだ感じが爽快。

 

5. No New World

ドリーミーなギターサウンドが印象的。宮本さんのボーカルワークにより重心が置かれたような1曲。マスドレのレパートリーの中でもかなり内省的な気がする。

 

6. Hu Hu Hu

ギターの小倉さんがリードボーカルを務めるのがこれまた新鮮。サウンドはバリバリのオルタナです。個人的にかなり好き。

 

7. Sugar

こちらもより歌にフォーカスが当てられている印象。スリーピースの確かなアンサンブルに宮本さんの伸びやかなボーカルが合わさる素敵な曲です。

 

8. スローモーションリプレイ

昨年7インチでリリースされたいわば復活作。ポップさが前面に出つつもオルタナバンドとしてのかっこよさが同居した名曲。アウトロのギターが最高です。

 

△ MV

 

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△ ジャケット

 

アルバム全体の印象として、これまでの雄々しさを残しつつもかなりポップな方向に振り切って、かつ今まで以上に宮本さんの歌に重心がある曲が多いような気がしました。それはやはり活動休止中の宮本さんのソロ活動が影響しているように思います。しっかりと歌に音を乗せているという感じがしますね。あと単純に歌が上手くなってる気も。

 

マスドレの曲はギターのリフとかフレーズが天才的だなって思うんですけど、今作もそれは健在でした。特別派手という訳ではないんですけど、シンプルでかっこいい音やコードをちゃんと選んでくるんですよね。

 

MCで宮本さんは「8年で8曲かよ!」と自虐的な発言をしていましたが、何も文句はありません。そもそも音源を出してくれるだけでもこちらとしては嬉しいですからね。もちろん内容的にも濃い8曲です。

 

マスドレが帰ってきた。おかえりなさい!という気持ち。

 

✱  ✱  ✱

 

いかがでしたでしょうか。ライブの熱気と私のマスドレへの気持ちが少しでも伝わっていれば幸いです。アルバムの一般販売は7月4日ですので、みなさん期待していいと思います。

 

最後に改めてライブのセットリストを置いておきます。それでは!

 

MASS OF THE FERMENTING DREGS

"No New World" Release Tour 2018 @下北沢SHELTER

1. まで。
2. かくいうもの
3. She is inside, He is outside
4. だったらいいのにな(新曲)
5. YAH YAH YAH(新曲)
6. Sugar(新曲)
7. 青い、濃い、橙色の日
8. さんざめく
9. エンドロール
10. delusionalism
11. ひきずるビート
12. ゼロコンマ、色とりどりの世界
13. ONEDAY
14. skabetty
15. New Order(新曲)
16. Hu Hu Hu(新曲)
17. スローモーションリプレイ
18. あさひなぐ(新曲)
19. ワールド イズ ユアーズ
20. ベアーズ
21. ハイライト(en)

 

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△ 吉野さんからいただいたセットリストのメモ

 

 

ストリーミング配信もよろしければ ▽

 

 

(文:おすしたべいこ)

 

おすしたべいこのMBV散歩 vol.4

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突然ですが私は病気でして。

 

別に深刻な話じゃないです。というのも、既に持ってるアルバムだとしてもブックオフとかで中古で叩き売られているのを見つけると気づいたら買っちゃってるんですよね。私はこの病気に「救済」という名前をつけました。ごめんなさい深刻な話でした。

 

具体的に言うと、

スーパーカー「スリーアウトチェンジ」

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ファンクラブ」「ワールドワールドワールド」

銀杏BOYZ「光のなかに立っていてね」

Base Ball Bear「C」「(WHAT IS THE) LOVE & POP?」

フリッパーズ・ギター「ヘッド博士の世界塔」

XTC「Skylarking」

といったアルバムはそれぞれ2枚ずつ持ってます。

 

自分の好きなアルバムが数百円とかで売られてたら悲しくないですか? 私は精一杯の慈悲の心でアルバムたちを救い出します。ひもじい懐から惜しげも無く蜘蛛の糸を垂らすんです。

 

ただの馬鹿ですね。

 

…ということで、大方予想はついたかと思いますが、マイブラLovelessにも「救済」の手を差し伸べている訳で。まあそもそも記事のサムネイルで3枚持ってますからね。既に2枚じゃないっていうね。現在CDで6枚所持してます。ハハハ。

 

ハァ。

 

でもでも、正直6枚なんてぬるい方ですよね? 全国のLoveless芸人のみなさんからは「たかが6枚くらいでイきんなやw」と罵声を浴びせられるかも知れません。まだまだです。

 

しかしここはLoveless芸人の端くれとして、今自分が所有しているものをいくつかピックアップして紹介させてください。よろしくお願いします。

 

(Loveless芸人って何ですか?)

 

 

✱  ✱  ✱

 

 

 1枚目:

 国内盤 / 1991年国内初盤

 

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まずはこちら。中野のディスクユニオンで購入したライナーノーツ付きの国内初盤です!!!

 

時期にこだわらなければLovelessなんていくらでも手に入りますが、国内の、それも初盤となると、自分にとってはかなり価値のあるものだと言えます。

 

これに対するツッコミとしては、

 

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①和訳のカタカナがクソだせえ

 

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②メンバーの名前がなんかちげえ

 

の2点となっております。

 

 

✱  ✱  ✱

 

 

2枚目:

輸入盤 / 1991年アメリカ製

 

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(盤面に手とか部屋が写りこんでるけど気にしない)

おそらく中古などで最も出回ってるのはこの91年の米国盤のような気がします。事実私もすでに2枚持ってます。

 

こちらに関しては特に説明もツッコミもありません。みなさんが一番見かけやすく手に入れやすいLovelessということで。買ってください。(?)

 

 

✱  ✱  ✱

 

 

3枚目:

輸入盤 / 1996年オーストリア

 

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最後に変わり種が来ました。なぜか急にヨーロッパ、しかもオーストリア

 

判断材料は、

 

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①盤面にMade in Austriaの記載

 

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②裏ジャケットに1996年の記載

 

です。正直中古なので外側と中身が違うものである可能性は否定出来ませんが、少なくとも中のCDはオーストリアなのかなと。

 

もうどこで買ったか忘れてしまいましたが、確か都内のブックオフだったような気がします…。侮れないよブックオフ

 

 

✱  ✱  ✱

 

 

さて、改めて3枚を比較するためにこちらの写真をご覧下さい。目に見えて違うのはやはりジャケットの濃淡と盤面のデザインです。

 

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(まずはジャケット。左から国内初盤、91年米国、96年オーストリア。)

 

一番濃淡はっきりしてるのは真ん中の米国製ですね。対してオーストリア製は日光で色褪せてるような印象さえ受けます。

 

そして極めつけはバンドのロゴ。

 

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ロゴの印字された位置と色が違うのがお分かりいただけるでしょうか。

オーストリアのやつ、海賊盤か???

詳細が不明すぎます。知ってる方がいたらご一報くださいといった感じだな…。

 

さらに、盤面も一瞬で違いが分かります。

 

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(同じく、左から国内初盤、91年米国、96年オーストリア。)

 

真ん中は盤面の印刷が薄く反射しますが、両サイドの2枚はがっつりつや消しです。で、色も全部違うという。

 

 

✱  ✱  ✱

 

 

…はい、特にこれといったオチはありませんが、一つのアルバムでも製造年や国によって違いが出るものだというのが伝わったかと思います。こういうのを集めて比較するのって面白いですよね。ただのコレクター欲かもしれませんが。お金が足りねえ。

 

みなさんも、他のバンドのアルバムなどでも色々比較してみると意外な発見があるかもしれません。同じアルバムを複数枚持ってるような同志がいたら是非やってみてください。

 

今回はこの辺で。次回もシューゲイズシューゲイズゥ!

 

 

(文:おすしたべいこ)