【ディスクレビュー】1stアルバム 羊文学-若者たちへ
羊文学-若者たちへ
2018.07.25
羊文学 1stアルバム「若者たちへ」がリリースされました。
これまでの楽曲から初収録のものまで詰まった半ベストアルバムのような作品。
全11曲をかんたんにレビューしていきたいと思います。と言っても、そんないいこと書けないので長らく見てきた1人の人間の感想です。
(タイトルにApple Musicのリンク埋め込んであるので気になったらポチッとしてください)
01.エンディング
だいたい1stアルバムの1曲目に「エンディング」というタイトルの曲を持ってくるマインドが好き。
1曲目にふさわしすぎるシューゲイザー的な作品。美しすぎる。アルペジオも、ギラついた轟音も、何より歌詞が美しすぎる。歌詞彫りたい。人生には終わらせたいことが山程ある。
人生のエンドロール、その頃はテレビなんてオワコンかもしれないけど、どうか全てが終わった時にテレビの砂嵐をこの轟音に変えてくれ。
(初収録)
02.天国
明るいメロとノリやすいリズムに引っ張られてうきうき聴いてしまうけど、冷静に歌詞を読んでほしい。
"クーラーガンガンで布団にくるまってアイス食べる感じ?"
"最愛の猫とお酒のんで昼寝でもする感じ?"
まあ天国=楽みたいなイメージはみんなそうですよね。行ったことないし。崇拝対象ですよね。
"それじゃ大差ないね!"
いやこんな救われる1文ないだろ。
(P.S.昔、塩塚さんが(Vo.Gt.)カルピスのCMにしてほしいみたいなこと言ってましたので、どなたかお願いします。)
(BiRTH.ep 収録)
03.絵日記
羊文学のなかでも珍しい、わりとアップテンポな曲。『雨』もそうだね。
消えて欲しいことに限って消えないし、尊いものほど消えてしまうみたいなことよくありますよね。この怒りとか虚しさみたいなものが漂う初期作品の歌詞とシンプルなロックバンド的な構成を今あらためて聴けるのはとても嬉しい。
(BiRTH.ep 収録)
04. 夏のよう
タイトルが秀逸すぎる。最近のむしむしした身体にまとわりつくような暑さに似ている音楽。最高じゃないですか。
個人的に羊文学は蜃気楼的な情景をみせてくれるバンドで、陰となるのは『Blue.2』陽?となるのが『夏のよう』です。
全秒いいな。
(初収録)
05.ドラマ
今作の表題曲。「探していたのはアメリカ」とあるように、自由や夢をつかめると信じて探していた青春時代が終わってしまう。ベースが絶望を感じさせていてとても好き。 あと途中のシャウト。絶対気持ちいじゃん。
本当に若者たちへという作品にぴったりな曲。「作品」ってこういうものだなと思いました。
(初収録)
06.RED
イントロがたまらない。羊文学はこういう攻め殺してくるようなイントロを平気で作る。やめて。
"愛はいつだって複雑だ"
という歌い出しが本当に全てで、嫌なことも怖いし、いいことだってそれはそれで怖いっすよね~。この共感のバランスが本当に絶妙。すごく生命的な曲です。心拍を感じるぞ。
(初収録)
07.Step
イントロ殺しが続くじゃん。重々しいのが続いたあとのStepはずるいな~。
この絶妙な軽さと歌い方と生活感。羊文学っぽくないのに羊文学っぽいよね。てかプールサイドって言葉好きだね。
『ドラマ』→『Step』だなあと思いました。まあここで「次のステップにいこうね」みたいな事を言われると捻くれた人間はムカつくんですけどね。そうじゃない優しさが詰まった曲ですね。
そんな簡単に大人になんかなれね~~~よ。仕方ないこと、仕方なくないよ本当は~~~。
(トンネルを抜けたら 収録)
08.コーリング
ここまでくるとイントロが全て最高に聴こえてきてしまった。
正直すごく好きなんだけどイマイチどこが好きなのかわかならない曲。
一つ言えることはこの勢いで
"君の明日は死なない"
とか言ってくれる救いが存在することだ。絶対にライブの最後に観たいでしょ。
(初収録)
09.涙の行方
本当に気持ち悪い曲。(褒めてます)
"そういえば"、"いつまでの"
の下降するところとか本当に気持ち悪い。構成が最高に好きだ。ラスサビのクラップも本当に自然と拍手したくなる。
『絵日記』の「わたし今もベットの上で泣いたりしなくてもすんだこと沢山あったよなあ」に頷いた人間をしっかり救う曲。全部意味があるらしいよ。よかった。
(オレンジチョコレートハウスまでの道のり 収録)
10.若者たち
"僕らはいつでも難しいことばかり考えてはダメになる たまにはお酒やふざけた歌で笑うくらいは余裕があったらなあ"
何百回も感じたこの感覚も大人になると簡単に余裕...というか諦めて、なんてことなくダメにならずに進めちゃうんですかね。みんなの心の中の若者にグサグサ刺さる8分間。是非向き合ってください。
(初収録)
11.天気予報
羊文学の中では1番ポップな曲。本当に心を蝕む曲。
"雨降りのマークを集めて"
"笑いあったあの日のこと"
"快晴のマークを集めて"
"嘘つき" "未来" "ワクワク"
ところどころ抜き出しても無邪気な言葉が多く、気がついたら口ずさんでしまう。
実際こんな無邪気な生活をしたわけでもないのに「そう言えば小さい頃そうだったかも」と思わせ...洗脳かよ。。なんて半分笑顔で聴いているところに
"嬉しいときも、悲しいときも 全部受け入れるかい? 君たちもやがて忘れてしまうよ 覚悟はできているかい?"
なんて言ってくるバンドいる?いる。
最初の「僕らが憧れた~」だけまだ現実的じゃない夢物語感を出しているの まじでドラムいい仕事しすぎでしょ。この曲眩しすぎる。
(初収録)
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長くなりましたが、以上です。
改めて、羊文学のこれまでが詰まったベストアルバムと言っても過言ではなさそうです。
「BiRTH.ep」~「オレンジチョコレートハウスまでの道のり」 そして、現在とこれからの羊文学を感じられる作品だと思います。
「若者→大人」になるのには明確な時期は決まっていません。(成人式とかはただの形式なので。)その曖昧な節目を迎えた人も、これから迎える人も、若者にも大人にもなれていない人にも届く作品だと思います。自分の中にある「若者」を亡くしてしまいたくない人・亡くしてしまった人 全員に等しくこの作品が届きますように。
身体にはどうぞ、気をつけてくださいね。
(文:さこれた)