30周年を超えた更なる高みへ~BUCK-TICK「No.0」(2018)~
はじめに
どうもアキオです。
書き始めてはや2ヶ月、書けたぜ。やったぜ。
そんなハッピーな気持ちなので彼女の持ってた「ソドムの市」を鑑賞してみたら、なんか落ち込みました。
人間の気分なんてちょろいもんです。
そんなこんなですが楽しいです。
そういうゆるゆるな気持ちのまま長々書いたレビュー、僕の敬愛するバンドの新作レビューをどうぞ。
BUCK-TICK「No.0」(2018)
曲目
- 零式13型「愛」
- 美醜LOVE
- GUSTAVE
- Moon さよならを教えて
- 薔薇色十字団 -Rosen Kreuzer-
- サロメ -femme fatale-
- Ophelia
- 光の帝国
- ノスタルジア -ヰタ メカニカリス-
- IGNITER
- BABEL
- ゲルニカの夜
- 胎内回帰
1.2.3.4.11.12.13は作詞:櫻井敦司、作曲:今井寿(ギター、ノイズ)
5.6.7は作詞:櫻井敦司(ボーカル)、作曲星野英彦(ギター)
8.9.10は作詞、作曲共に今井寿である。
前作の傑作「アトム 未来派 No.9」から約1年半ぶりに出された彼らのニューアルバム。
アトム未来派No.9
delivery-sushi-records.amebaownd.com
(昔、僕が書いたレビューです)
まず聞いて驚いた。その過去最高にエネルギッシュな姿に。
このバンド、何しろデビューから30年経ってるのに、
まさか最新アルバムがここまでパワーに満ちてるとは想像もつかない。
「零式13型「愛」」、「美醜LOVE」は前作に比べると重々しい上に更に打ち込みの比重が増してるように思える。
なんとなくSF映画の始まりを想起させる。
ミドルテンポな曲でリフが鳴り響く中、今作はまあまあ重い雰囲気になるのかと思いきや、
そんな予想なんか通用するはずがなかった
「GUSTAVE」でいきなり弾けまくる。
バッキバキのアップテンポなEDMトラックに
Cat Cat CatCat Cat Cat CatCat Cat
とかいう完全に猫のことしか言ってない歌詞が乗ってる。
まあモデルがヒグチユウコさんの「ギュスターヴくん」らしいので当然か。
猫好きだもんね、櫻井さん。
…相変わらずなんなんだこのバンド、デビュー30年超えてるんだろ、クオリティになんの申し分もないけども(笑)
とか、言ってると次の「Moon さよならを教えて」
でめちゃくちゃしっとりしたドリームポップみのあるミディアムナンバーが。
今井さんがここまで優しい曲書いたのは珍しさがある。
おやすみのキスをして
夢の始まりね 目を閉じて そして
Good Night 願い事を叶えて
流れては消える さよならの前に Good Night
月の満ち欠けのように静かに染み入る歌詞もまた非常に良い。
作詞櫻井敦司、作曲今井寿の黄金コンビが終わったあとはもう1つの黄金コンビが、つまり櫻井敦司と星野英彦のそれが始まる。
「薔薇色十字団 -Rosen Kreuzer-」、「サロメ -femme fatale-」、「Ophelia」が星野英彦のトリッキーさ、激しさ、切なさなど彼の様々な顔を見ることが出来るのが実に楽しい。
星野英彦は元々「JUPITER」、「ドレス」、「ミウ」など、
しっとりとしたメロディの綺麗なナンバーを書く印象が強かったのだが、30年を超える活動でおそらく1番大きな変化をした人だと思う。
「Ophelia」で一旦落ち着いたあと、このアルバムは作詞も作曲も今井寿の摩訶不思議な世界に誘われる。
今井寿の不協和音を多用したトリッキーなギターフレーズが光る「光の帝国」、
ポエトリーリーディングをBUCK-TICK流のダークで摩訶不思議な世界に落とし込んだ不穏なナンバー「ノスタルジア -ヰタ メカニカリス-」、
天上太陽
中空我雷電
地上火天怒焔(原文ママ)
など、今井寿の奇怪な言語感覚が爆発するメインボーカルナンバー「IGNATER」…
これでもかとBUCK-TICKのぶっ飛んだ一面を見せてくる。
その後、シングルにもなっている「BABEL」は、ゴシックで荘厳なパブリックイメージとしてのBUCK-TICKを強く感じさせる。
ギターフレーズにどこかシンセのような物を感じるが特徴的なナンバーだ。
そして、このアルバムは終盤へと流れ込むのだが、この2曲が強烈なのだ。
まずワルツ調の「ゲルニカの夜」。
戦争反対への希求を決して直接的ではなく、それこそピカソの「ゲルニカ」と同様に寓話的に描くその表現力や、
重いテーマですら娯楽として成立させるようなある種のさじ加減は、このバンドの真価を如実に表してる。
そして最後の「胎内回帰」では
Melody あなたの鼓動
Harmony 胎内の爆音
Melody わたしの鼓動
Harmony 胎内の爆音
という強烈な歌詞をギターのディストーションに載せて櫻井敦司が描き、また1曲目にループしていく…
あとがき
曲間の長さに至るまで完璧に計算されていて、
それでいてここまであらゆる面を持ちながら、リズム隊も上物もフロントマンもBUCK-TICKであり続けられる。
長年の経験と挑戦が培う阿吽の呼吸だろう。
さらに留まる事を知らないBUCK-TICKというバンドの意欲。
…ファンで居続けて思うことだが、
最新作において、常に若手以上にエネルギッシュな作品を作り上げるそのポテンシャルには脱帽するばかりである。
ただ良いものを、という思いでできた「No.0」は30周年を超えた新たな扉がまだまだあることを示してくれたように思う。
改めて、本当ファン冥利に尽きるなと思います。
参考資料
BUCK-TICK ニューアルバム『No.0』全曲試聴トレーラー
BUCK-TICK / ニューアルバム『No.0』試聴トレーラー
delivery-sushi-records.amebaownd.com
(ちなみに、こちらも自分の記事です)
(文:アキオシロートマグル)