Solitude HOTEL 6F yoru
あまり記憶がない。
もしかしたらずっと眠っていたかもしれないし、ちゃんと起きていたかもしれない。ひょっとしたら死んでいたかもしれないし、浅い呼吸で息をしていたかもしれない。
ステージにはアルバムのジャケットにも登場する赤いベッドが左右に2つ置かれていた。hiruの最後にスクリーンに映し出された映像がそのまま実体化されていた。
hiruの"SIX"でSolitude HOTELの6階から降り、yoruの"SIX"でまた6階に戻る。昼間見ていた夢は次第に遠くへと霞んで行き、やがて完全にかき消された。
視覚を覆い尽くすVJの数々。"狭い物語"の赤で塗られた風景、"townscape"の首の無い鳥の写真、"int"の心電図のような波形、"ボーイミーツガール"の画像処理のバグのような映像、"夢"の正体不明の物体の数々。全てがサクライケンタの脳内イメージを無理矢理アウトプットし可視化したような歪さが不安を煽った。
"rooms"では無音の部分だけ照明がつき、あとはほとんどずっと真っ暗という、通常とは逆の演出がなされた。曲と曲を繋ぐインターリュードでは、ステージに置かれたベッドにメンバーが潜り込むような演出もあった。
MCは一切なく、メンバーの4人はただひたすらSolitude HOTEL 6Fの世界観を構築することに徹していた。レーザーで過度に装飾された"karma"を披露した後、4人は長いお辞儀をして本編は終了。
アンコールの"MORE PAST"(実質"my cut")を観る頃には本編の記憶さえも遠のき、通常の思考が出来なくなっていた。他にも色々と書くべきことはあるはずなのに、この場に書いてあることくらいしか思い出せていない。そう言えばペストマスクを被った4人が出てきたがそれはメンバーではなかった。あれは誰だ。
"不思議な風船"が終わるとメンバーの4人はベッドに横たわり、ペストマスクの人たちがそのベッドをステージの外に運び出してライブは終了。自分が何を観たのか理解できないまま会場を後にした。
あなたはアイドルのライブを観て「死にたい」と思ったことがあるだろうか。
あれは何か人知を超えたものだったような気さえもする。そもそも「夢」というものはそういうものだ、と思えばそれなりに合点がいくかもしれないが、視覚情報と曲の持つ力によって明らかに触れてはいけない領域に足を踏み入れていた。
全て終わった後は本当に具合が悪く、なぜかすごく死にたくなったし、一人で帰っていたら駅のホームに飛び込んでいたかもしれない。
6Fはこれで終わりではない。この物語はyumeへと続いていく。
(文:おすしたべいこ)