代官山とアオハルユース (8/20 羊文学 "わたしたち"へ)
2018年8月20日。代官山UNIT。羊文学にとって通算2回目となるワンマンライブ「"わたしたち"へ」が行われた。
先日リリースされたフルアルバム『若者たちへ』のレコ発でもある今回のワンマンは、これまでの羊文学を総括しつつ、新たな飛躍を見せてくれた素晴らしい一夜だった。
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ライブは予定の19:00を少し過ぎてスタート。
おなじみのSEであるThe xxの「VCR」と共に塩塚モエカ(Vo. G.)、ゆりか(Ba.)、フクダヒロア(Dr.)の3人が登場し、会場が歓声に包まれる。
まずはアルバムの冒頭も飾る「エンディング」。塩塚の伸びやかなボーカルとオルタナティブなギターが心地良い。フクダのドラムは相変わらず鋭くかつ暴力的だ。ゆりかのベースはいつもの縁の下の力持ちで2人を支える。
そして、アウトロからそのまま「RED」へ。その堂々とした佇まいは貫禄たっぷりだった。
次はEP『オレンジチョコレートハウスまでの道のり』から「ブレーメン」と「ハイウェイ」。音楽を鳴らしながら駆け抜けていく羊文学のこれからを改めて決定づけるような流れに思わず息を呑んだ。
塩塚の弾き語りから始まった「夏のよう」で夏の終わりを感じたあとは、EP『トンネルを抜けたら』から「雨」を披露。イントロからアウトロまでかっこよくない瞬間が微塵も存在しない。
さらに今回のアルバムから「天国」「絵日記」「ドラマ」と続いた。「ドラマ」では背景がMVのタイムラプスの映像に変わり、一気にバンドの世界観に引き込む。
続いて『トンネルを抜けたら』から「うねり」と「踊らない」を披露。「うねり」はあまりライブでは披露されないレア曲。鬼気迫るような塩塚のボーカルに否応なしに引き込まれていく。
「涙の行方」は『オレンジ〜』から今回の『若者たちへ』にも収録された曲。「色々あるけど最後は良かったなと思える曲(塩塚)」という言葉通り、バンドにとって重要な位置にある曲であることが分かる。終盤の手拍子と共に訪れる多幸感は本当に素晴らしい。
続けて『オレンジ〜』から「マフラー」が披露され、ラスト2曲は今回のアルバムから「若者たち」と「天気予報」。
「若者たち」のイントロからなだれ込む様はいつ観ても鳥肌が立つ。8分超えの大曲で羊文学のポテンシャルをまざまざと見せつけられる。
ラストの「天気予報」で会場を懐かしくも優しいようなほのかな幸せで包んで本編は終了。大きな拍手と共に3人はステージを後にした。
なお、途中のMCでは「今回のワンマンのテーマは "手紙" です(塩塚)」と説明。「私が手紙を書く人(塩塚)」「私は郵便屋さん(ゆりか)」「フクダは手紙(塩塚)」と3人の役割を明かし、会場をわかせた。
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アンコールでは、和やかなグッズ紹介を経て、まず今回のアルバムから「コーリング」を披露。演奏後「この曲楽しいね(塩塚)」と、本編よりかなりリラックスした様子。
続けて「カバーをやってみようかな(塩塚)」と言って披露されたのは、なんとスーパーカーの「AOHARU YOUTH」だった。原曲は打ち込みのエレクトロニカだが、羊文学の手にかかれば肉体性を帯びたオルタナ曲に様変わり。バンドの新たな一面を垣間見れた貴重な瞬間だった。
ラストは大名曲「Step」。『トンネル〜』から『若者たちへ』にも収録された、羊文学を代表する曲だ。イントロですべてを持っていってしまう力がこの曲にはある。
こうして羊文学の2回目のワンマンライブは、大盛況の内に幕を閉じた。
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羊文学のライブはいつも着地点が高い。上昇していく気持ちがそのまま高水準を保ち続け、こちらに帰ってこない。歌の強さとスリーピースという強靭なトライアングルが生み出す魔法のようなライブを羊文学はいつも繰り出してくる。今回は特に、その最高レベルを飄々と叩き出してしまったような気がした。
今年の4月1日に初のワンマンライブを下北沢で行なった時よりひと回りもふた回りも大きくなった羊文学がそこにはいた。
羊文学のアオハルは、まだまだこれからだ。
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2018年8月20日
羊文学『若者たちへ』リリース記念ワンマンライブ「"わたしたち"へ」
1. エンディング
2. RED
3. ブレーメン
4. ハイウェイ
5. 夏のよう
6. 雨
7. 天国
8. 絵日記
9. ドラマ
10. うねり
11. 踊らない
12. 涙の行方
13. マフラー
14. 若者たちへ
15. 天気予報
en1. コーリング
en2. AOHARU YOUTH (スーパーカー)
en3. Step
↑さこれたによる『若者たちへ』のレビュー記事も合わせてどうぞ。
(文:おすしたべいこ)