Tranquility Base Hotel & Casino レビュー
レビューすぐ書くすぐ書くと言っておきながら色々忙しくて結局今になってしまった。Arctic Monkeys の5年ぶりのアルバム「Tranquility Base Hotel & Casino」。
僕はこれを忙しい間を見つけてはリピートした。レビューの為に。そして思った。
これは赤点ギリギリ。
リリース前からのウワサ通りにピアノをかなり前に押し出して、全体的な雰囲気がアダルトでエロい。バーでウイスキーを片手にかけて流したい、そんなアルバムではある。
とりあえず今作中でも「これはキラーチューンになるな」と初聴きで思ったトラック#6「Four Out of Five」を聞いてみてほしい。(やはり彼らも自信があったのか、PVを作っていた)
Arctic Monkeys - Four Out Of Five (Official Video)
「Four Out Of Five」 の TVライブ版
そしてもう一つ。今作トラック#9「She Looks Like Fun」 TVでの演奏
ライブ版ではそれほど悪くないように聴こえるが、通常の音源で聴くと、このアルバムには太さがない。それが悪いとは言わないが、「UK代表のロックバンドの一つへと成長した彼らが『AM』をどう超えていくのか」と期待していた僕は心底肩透かしを食らってしまった。しかも、今作中の曲がそれほどバラエティに富んでいるわけでもないことも残念だ。キラーチューンになるだろうと思った「Four Out Of Five」も、なぜそう思ったかというと、初聴きで「Four Out Of Five」しか記憶に残らなかったからだ。
(Four Out Of Five 以降、つまりこの作品の後半は結構曲と曲の切れ目がしっかりしていてロックなテイストもすこしあってメリハリがあったが、序盤がゆったりずっとつながっているようでぼんやりしている)
はっきり言って、僕にはその程度のアルバムだった。
成熟した重厚なロックを鳴らしていた前作「AM」にも今回のアルバムにあるような曲はあった。「No.1 party anthem」、「Snap out of it」、「I wanna be yours」。それらには柔らかさだけではなく、太い一本の幹があるように聞こえ、押しも押されもせぬロックバンドとしての強さがあった。
このアルバムは「俺はストロークスの一人になりたかったけど、今じゃこのザマだ」と言って始まる。ー トラック#1「Star Treatment」の一節だ。
このザマ。あまりにも今作によく似合っている。彼らの強さはどこにいってしまったのか。
アークティック・モンキーズが大好きでたまらない人は別に今作が悪いとは微塵も感じている様子はなさそうだ。
だが、全くこれと同じ音楽を別のバンドが作ったとしたら、評価されるだろうか。僕はそう考えたとき、このアルバムはひどく叩かれることも絶賛されることもなく、多くの人に何度も聞かれるようなアルバムにはならないんじゃないかと思った。だから、このアルバムはそれほどいい出来だと思えない。(実際、聞いてる途中でAMが恋しくなってしまうことが何度もあった)
かなり口悪く書いたが、どうも評判が良すぎると感じたので。
僕くらいはそれにあらがっていいと思ったのだ。
トラックリスト (赤字は良いと思った曲)
#1 Star Treatment
#2 One Point Perspective
#3 American Sports
#4 Tranquility Base Hotel & Casino
#5 Golden Trunks
#6 Four Out Of Five
#7 The World's First Ever Monster Truck Front Flip
#8 Science Fiction
#9 She Looks Like Fun
#10 Batphone
#11 The Ultracheese
採点
2.5/5.0
せめてものフォローだが、夏の夜のBGMにはかなり良いと思う。これを理解するために僕はこの夏、ベランダで夏風に吹かれながら時にこれを聞いて、理解できればいいなと思う。(もし理解が今と変わったら、弁明する記事を改めて書きたい)。
(文:ジュン)