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This Will Destroy You「New Others Part One」レビュー

 

 新譜レビューというにはずいぶんと日が経ってしまった。(リリースは9月の末だった)

 轟音系ポストロックバンド、This Will Destroy You の新譜、「New Others Part One」について今回は記事を書いていこうと思う。

 

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 あらかじめに断っておくと、僕はこのバンドのことは全然知らない。1stアルバム「Young Mountain」が今年で10周年を迎えたということ、そして新譜がでるということで聴いてみたバンドだ。Explosions in the sky が好きなら、という謳い文句に期待して聞いてみたとおり、1stアルバムを聞いて魅了されてしまった。それがこのアルバムのリリースの前日だった。

 そういうわけで、この新譜は僕にとって2枚目の彼らのアルバムだ。浅いけれど、聞いてみた感想を率直に書いていきたい。

 

 

#1「Melted Jubilee」

 シンセサイザーの音と無機質で打ち込みのようなドラムにつつまれた落ち着いたインスト。キラキラした音もあり、優しい感じがする。SEなどいろいろな音が詰まっているなかで、高揚させるギターのアルペジオが淡々と紡がれていく。美しい。

 

 

#2「To Win, Somebody's Got To Lose」


This Will Destroy You - To Win, Somebody's Got to Lose

 これも鍵盤の音と無機質なドラムをバックにギターが紡がれる曲。ほとんど同じテンポで続いていくが、中盤の静けさがまるでシガーロスの「Voka」のように美しい。眠くなる。そこからまた単音を紡ぐ音楽にもどっていく。#1と似たような曲といえばそうかもしれないが、これは夕暮れ時に聞きたくなるような感傷的な音が全体的に聞こえている。

 

 

#3「Syncage」


This Will Destroy You — Syncage

 これも鍵盤で始まるが、最初からかなり不穏な空気を醸し出してくる。そしてドラムのブレイクと共にスピード感のある轟音に包まれる。ドラムがかなりスピーディで、ハードコアとかのパンクロックのようだ。だが、轟音自体は暴力的なものよりは、やはりExplosions in the skyのような優しい感じがする。「すごくいい」と思っていたらあっという間に終わってしまう。4分半の曲で、それほど短いわけではないけれど、体感は3分ないくらいだ。さわやかな轟音に飲み込まれる気持ちがいい曲。

 

 

#4「Allegiance」

 ダンスミュージックやエレクトロニカのような曲。Radioheadの「treefingers」のように、ギターはほとんど飾り。今作中で一番落ち着いた雰囲気をもつメロウナンバー。

 

 

#5「Weeping Window」


This Will Destroy You - Weeping Window

 前の曲のアウトロから流れるように始まる。実質、前の曲と合わせて一つの曲。ゆっくりと音を引き継いで紡がれていく。打ち込み(ドラム?)の音が入ってくる。ベースが入ってくる。ギターの音がどんどん大きくなる。だが、轟音はこない。静けさに戻っていく。ギターがまるでストリングのような音を奏でる。

 ここで轟音。重い。モグワイやほかの轟音系バンドには感じたことがなかった感想だ。音が重いのだ。ドラムがダイナミックだからだろうか。テンポ自体がスローだからだろうか。ゆっくりと頭をゆらして聞ける。ストリングのようなギターの音もずっと響いている。残響が吸い込まれながら終わるラストも美しい。

 

 

#6「Like This」

 クラウトロックみたいな不穏なビートをぼんやりとした音で包んだ曲。これもかなりエレクトロニカみたい。

 

 

#7「Go Away Closer」

 あっという間にきてしまったラストナンバー。今作で唯一、バンドサウンドを主軸とした曲。冒頭から聞きやすいギターポップみたいなメロとテンポ。インストだけど。高音をかき鳴らすということもない。さわやかなラスト。

 と思ってたらドラムのブレイクから一気にメロウになって轟音が炸裂する。ピアノの音をバックにひたすら美しくかき鳴らされるギターの高音。恍惚としてくる。ドラムのビートだけが最後に残って、フェードアウトして終わる。これぞ轟音系ポストロックバンドだ、という曲を最後にやる粋な演出がニクい。

 

 

 

 以上が全曲のレビューだ。たった7曲。たった38分のアルバム。轟音系のポストロックアルバムの中では今までの中でもトップクラスの聴きやすさだった。アルバム・曲のメリハリも◎。

 調べてみると、彼らは他のアルバムでもクラウトロックに接近したりだとかの作品を作っているらしい。10周年を迎えた1stアルバム、そしてこの新譜から、彼らをもっと知っていきたいと思う。

 

 

 最後にアルバムの採点

 

 3.5/5.0

 

 いいアルバムではあるが、まだまだ聞き込みや彼らを知っていくことで後から評価が上がっていくと思うので、伸びしろを込めてこの点数で。

 

 

(文:ジュン)