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ロックンロール至上の贅沢はレコードで味わうべし! GUNS N' ROSES「GN'R LlES」

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GUNS N' ROSES「GN'R LlES」


音楽産業におけるストリーミング媒体の登場と発展は「音楽を所有する」という感覚からの解放をもたらし、より自由な音楽元来のフォームへの帰化を促すものとなった。もしかすると公共のジュークボックスにコインを入れてヒットソングを聴きながら踊った時代からレコードへと発展した時代とは別の「If」がこのストリーミングという媒体なのかもしれない。最近話題の「Spotify」などは「ネットという公共のジュークボックス」といった趣を感じる。


しかし、今回ここで俺が語るのはレコードについてだ。それもロックンロール・レコードだ。まず先に言っておきたいのはレコードとCDの存在意義は重なる部分もあるが個々の媒体の性質上の関係で違う部分もある。レコードにはそれぞれA面とB面があり、それぞれの面を聴くにはひっくり返さなくてはいけない。


そう、今回ここで紹介するレコード・アルバムであるGUNS N' ROSESの「GN'R LlES」を語る上で重要なポイントはこの「A面とB面」という分離したレコードの特色にある。


GUNS N' ROSESが86年にゲフィンレコードと契約したバンドの"疑似"ライヴEP「Live ?!*@ Like a Suicide」にアコースティック曲を4曲追加して88年にリリースされたのがか本作「GN'R LlES」だ。その前年の87年に発表されたバンドの代表作となる「Appetite for Destruction」のヒットによる追い風を受けて本編集盤もヒットした。


「GN'R LlES」にはGUNS N' ROSESのロックンロールバンドとしての「本質」が詰まっている。そしてその「本質」を最も美味しく味わうにはレコードという媒体でなくてはならないのだ。レコードの特徴にある「A面とB面」それぞれに分かれていることに「旨味」があるのだ。


まずこのレコードの「A面」となるのが86年にリリースされた"疑似"ライヴ音源の「Live ?!*@ Like a Suicide」である。「オレはむこうみず、痛みなんか感じない、抑制するつもりもない」と冒頭一曲目から暴れ馬の如く凄まじいロックンロールが聴き手をノックアウトする「RECKLESS LIFE」でこの虚飾のロックンロール・ショーは幕を開ける。続くきわどいドライヴ感がほとばしるオーストラリアのハードロックバンドRose Tattooのカヴァー「NICE BOYS」、そこからルーズでソリッドなノリになだれ込む快感がたまらない「MOVE TO THE CITY」、そしてきわめつけはAerosmithのこれもカヴァーの「MAMA KIN」が痛快なまでにこの偽りのショーにトドメを刺してくれる。


「Live ?!*@ Like a Suicide」が収録された「A面」は偽りのライヴ・アルバム・サイドの虚像がロックンロールの普遍的な妖しい魅力を増幅させてその存在をより猥褻に際立たせているストーンズピストルズらの持ち合わせていたロックの胡散臭さをより実像的に楽しむ事ができるサイドだ。


そして、このレコードアルバムの続きである「B面」を聴くために聴き手はレコードをひっくり返さなくてはいけない。この間はものの数秒、しかし、この数秒のインターバルが重要なのである。


アコースティック・サイドである「B面」の一曲目である「PATIENCE」の「ワン・ツー・スリー・フォー」のカウントから始まる口笛と仄かに煌めくアコースティック・ギターのメロディー、この立ち上がりを堪能するには「A面」の激烈なロックンロール・サイドとの間に数秒のインターバルが必須となるのだ。サウンドスタイルの違いによる分別や編集盤としての形式的合致もあるかもしれない、しかし、一枚のアルバム作品としてこの「GN'R LlES」を聴いた時にこの数秒のインターバルを置くことでよりコンセプチュアルな味わいをより深く楽しむことができるのだ。


マーダー・ブルーズの影響下にあるような世界観を持つ「USED TO LOVE HER」、「Appetite for Destruction」にも収録されていた「YOU'RE CREAZY」は本作品のバージョンの方がよりシンプルながら曲の核を突く仕上がりになっている。そしてラストを飾るのはその詞の内容から賛否両論もあった「ONE IN A MILLION」は緩和の中を明確な緊張感が通る演奏で流れ者の一人としての孤独さを歌った曲なのではないかと俺は考えている。


GUNS N' ROSESが音楽的な本質がアコースティックサウンドによるアプローチで浮き彫りになる体質のバンドであることの証明として機能しているのがこのアルバムの価値や意義としてある。そこを楽しむにしてもやはりレコードでなくてはならないアルバム作品である。


"Guns N' Roses - Reckless Life"


"I used to Love Her - Guns N' Roses"


ダウンロードやストリーミングと音楽媒体の変化によって音楽との距離はより身近なものとなっていく。それらは実に素晴らしくスリリングな音楽生活を与えてくれるのも確かだ。しかし、レコードの「ひっくり返すことでおきる数秒のインターバル」という「距離」は音楽との関係を「長く続けて行く上で」必要なものではなかろうか。


GUNS N' ROSESの「GN'R LlES」はそんな「距離」の意味や意義を的確に与えてくれる一枚だ。是非レコードで堪能して頂きたい。その数秒は実に贅沢で代え難き至福の数秒でもあるのだから……


(文 : Dammit)